日本で眠っている8億枚の着物を海外で生き返らせるKimono Project FURICLE(フリクル)

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

<日本で眠っている8億枚の着物を海外で生き返らせる>
展開している事業内容・特徴

furicle1「あなたは一年に何回着物を着ますか?」着物は言わずもがな日本の文化と伝統の詰まった民族衣装だが、日本人が着物を着る機会はこの数十年で大きく減った。おそらく一年に一度も着物を着ないという人も多いのではないだろうか。その結果、日本のタンスには実に約8億枚という途方もない数の着物が眠っていると言われている。

一方、海外では和食やアニメなどの日本文化へ熱い視線が注がれ、”kimono”の熱いファンも多い。しかし、海外では着物を手に入れることが難しく、なかなか本物の着物を楽しめないのが現状だ。

そんな両者の架け橋となるサービスが2013年9月に始まったFURICLE(フリクル)だ。フリクルでは、個人や遺品整理業者などから原則無料で不要になった着物を回収し、数千円というリーズナブルな価格で海外の着物ファンへ販売する。現在はネット上でのB to C販売が中心だが、ヨーロッパ・アメリカ・東南アジアなど、熱いファンのいる地域をターゲットにB to B展開も準備中だ。

ここまでは従来の中古着物販売と大きく変わらないのだが、フリクルの特徴はこれにソーシャルメディアによるコミュニケーション、文化交流という付加価値を加えていること。

これまで海外から見ると日本の着物業界は閉ざされた世界という印象が強く、一歩進んだ着物の知識や着付け方法を聞きたいと思っても、言葉の壁もあり、着物の販売元と外国人がコミュニケーションをとることが難しい状況だった。フリクルではSkypeを通して質問に応じたり、テレビ電話画面上で商品説明をするなどして、外国人が気軽に着物にアクセスできる環境を提供している。

また、外国人にまずは着物の素晴らしさを体感してもらうべく、定期的に抽選で着物を無料プレゼントする企画も開催。ホームページには、プレゼントされた着物を着用した写真や感激のコメントなどのフィードバックが続々と寄せられている。プレゼントを受け取った人が自分のブログやFacebookなどでも情報発信し、そこからまた新たなユーザーが流入する、というサイクルもでき始めている。
http://www.furicle.jp/prize-of-the-week

日本から着物を提供する側にとっても、祖母が着ていた、母が大切にしていた、など着物にはさまざまな思いが詰まっていることが多い。その着物が海外の着物ファンの手に渡り、大切にされている、その姿を目の当たりにできることで、さらに多くの着物がタンスの奥から引き出され、海外で有効活用されるという好循環を生み出しているのだ。

<着物を世界へ、という漠然とした思いが一人の大学生との出会いで現実へ>
ビジネスアイデア発想のきっかけ

furicle2フリクル代表の八木創平氏は実家が京都西陣織の帯工房だ。幼い頃から着物業界の仕事を傍で見て、漠然と「着物に携わるビジネスをしたい」と思ってはいたものの、なかなか具現化できないまま、会社員生活を経て独立。株式会社ソウを立ち上げ、Webマーケティング支援、Webサービス運営などを手がけてきた。

しかし、Web事業と着物という一見接点のなさそうな2者にも、思わぬ繋がりが生まれた。2011年頃から八木氏はWebマーケティング支援の一策として、クライアント企業にFacebookの活用を勧めていた。その一環として、海外でのFacebook広告の効果をチェックする目的で“Japanese Kimono” というFacebookコミュニティを立ち上げた。するとあっという間に1000人以上の海外の着物ファンが集まり、着物の写真を投稿する度に色々な国の言葉で「素晴らしい!」というコメントや、「私も着物が着たい!」「この着物が欲しい!」どのリアクションが帰ってくるようになった。八木氏は意外な形で海外の着物ファンの熱い想いに触れることとなり、ここで「日本の着物をもっと海外へ」「ソーシャルメディアの活用」というフリクルの軸が出来上がることとなる。

そして最終的なアクセルとなったのは一人の大学生の熱い思いだった。八木氏は7年前にフランス、イタリアへ旅行し、着物ビジネスに興味を持ってもらえそうな日本人を訪ね歩いている。その時は結局ビジネスには結びつかなかったのだが、その様子を綴ったブログを見た一人の大学生が2013年3月に「一緒に働かせてください」と連絡してきた。「着物ビジネスなんて何も動いていなかったので、やんわり断ったつもりだったのですが、『とにかく何かやらせてくれ』と九州から会いにきてくれてしまって(笑) じゃあとりあえずスタートアップウィークエンド*1に出してみようか、と。これで端にも棒にも引っかからなければ、彼女にも諦めてもらえるかな、という思いもありまして」と八木氏は振り返るが、着物の再生と海外との文化交流を掛け合わせたフリクルのアイディアは見事優勝。その時たまたま同じチームでプレゼンをした6人のうち、八木氏を含めた3人が中心となり、フリクルを事業化することになった。現在フリクルは株式会社ソウ内のプロジェクトという形式を取っているが、将来的には法人として独立させることも視野に入れている。

*1 スタートアップウィークエンドとは、世界150カ国以上で開催されている週末起業体験のイベント。金曜の夜に参加者が一人1分で自分のアイディアをプレゼンし、投票でいくつかのアイディアを選び、チームを組む。それから日曜の昼までの時間でリサーチ、検証などのブラッシュアップを行い、日曜夜の最終プレゼンで優勝チームを決める。海外ではこのイベントから実際にベンチャーとして成功する事例も出ている。

<さらに気軽に日本から海外へ着物を流通させられるように>
将来への展望

海外には現在推定10万人の着物愛好家がいて、その市場規模は3億円以上と言われている。フリクルの目標は、まずその10万人に着物を届けること。海外で着物を手にする機会が増えれば、市場全体も広がっていくはずだ。

現在のB to C、そして次のステップのB to B展開に続き、将来的にはC to C、つまり個人から個人へ気軽に着物を流通させることのできるプラットフォームを作ることも検討中。自分の家に眠っている着物の写真をデジカメで撮って、フリクルのプラットフォームに乗せるだけで、海外の着物ファンに喜んでもらえて、お金もいくらか入る、というシステムだ。

「日本で誰にも使われなくなってしまったものでも、海外に持って行けば大喜びしてもらえる。だったらこの両者を僕たちはもれなく繋いでいってあげたい」という思いで、フリクルが手がける着物サービス。日本のタンスで眠っていた着物が、世界の街角で見られる日も近いかもしれない。

株式会社ソウ
代表者:八木創平  
設立:2010年1月5日  
事業内容:
Webマーケティング支援、Webサービス運営、フリクル着物プロジェクト
Kimono Project FURICLE
http://www.furicle.jp/
フリクル日本語PRサイト
http://release.furicle.jp/
株式会社ソウ
http://sou-co.jp/

当記事の内容は 2013/12/5 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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