書評でもサマリーでもなく、ダイジェストを配信するのが受けた!? 法人向け契約で急成長の書籍紹介サービス「セレンディップ」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

ビジネスパーソン向け書籍紹介サービスが人気。ポイントは要約ではなくダイジェスト配信
展開している事業内容・特徴

20140624_3良書との出会いを求め、空いた時間や休日に書店を回るビジネスパーソンは多いだろう。陳列された膨数々の本はいわば、ひらめきの宝庫だ。

しかし、求めているテーマや内容が明確であれば、然るべき本を見つけるのは容易い。それこそ、ざわざ書店でなくてもAmazonで指名買いをすれば済む。

何かと忙しい現代。スマフォでも効率良く情報収集できるようになってからは、余計に本を探すこと自体を煩雑に感じてしまう。また、よく訪れる自分の“テリトリー”以外のコーナーに、刺激となる本が隠れていたとしても、足を運ぼうという気はなかなか起こらないものである。

今回紹介するのは、本にひらめきや想像力の糧を求めるビジネスパーソンやビジネスリーダーから、多大な反響を得ているサービス『SERENDIP(セレンディップ)』だ。株式会社情報工場(以下:情報工場)が2005年より提供している同サービスは、ビジネスパーソンと書籍との距離を身近にし、フレキシブルな発想や想像力を支援する書籍紹介サービスだ。

その概要はいたってシンプル。ベストセラーやロングセラー、隠れた名著など、厳選した良書を、10分程度で読めるA4で3枚(およそ3,000字)の資料にまとめ、週に2冊ほどユーザーに向けてメール配信している。今までは法人向けに営業を注力し伸びているが、個人購読も可だ。

配信内容はビジネス関連書が中心となるが、テーマは幅広い。配信の一例を挙げてみると、世界のトップエリートが心がける基本や仕事の流儀を紹介する『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(戸塚 隆将著 朝日新聞出版)、かのスティーブ・ジョブスを超えると称される人物を紹介する『未来を変える天才経営者 イーロン・マスクの野望』(竹内 一正著  朝日新聞出版)、ITベンチャーの楽園と言われる徳島県神山町とそこに移住してきたクリエイターたちの物語を綴る『神山プロジェクト 〜未来の働き方を実験する』(篠原 匡著 日経BP社)等々、どのビジネス分野に身を置くビジネスパーソンでも、興味を引かれる書籍が紹介されている。紹介書籍の中には、歴史や文化、ときには動物の書籍などもあるので、知を深めスキルアップを図るためのツールとしてはもちろん、ブレイクタイムの読書としてもうってつけだ。

2013年11月からは新しいラインアップとして、米ビジネス誌『Dialogue(ダイアローグ)』も加わった。

同誌はイギリスの新聞Financial Timesが選ぶ世界の「エグゼクティブ向け教育機関ランキング」で2003年以降、第1位を獲得し続けているアメリカのDuke CEが刊行している季刊誌であり、世界のビジネスリーダーがメイン読者となっている。著名な評論家や経営者、教授などが、ビジネスリーダーが直面する問題を題材に執筆した記事を掲載。その内容は欧米のみではなくアジアを重視したものとなっている。このDialogueから選りすぐりの記事を翻訳し、週に1本ほど配信しており、グローバル化が著しい国内市場で活路を見出す日本のビジネスリーダーへ気づきとなる情報を提供している。

当サービスで特筆すべき点は、書籍紹介のまとめ方だ。

レビューや書評ではなく、「ダイジェスト」なのである。約300字〜400字程度の要旨とコメント以外は、書籍の原文を使用していて、中でも特に目を引く箇所や、テーマの根幹をなす箇所を抽出し掲載している。映画に例えれば、番宣やトレーラーのようなものといっても良いだろう。本を探すとき、書評を参考にする人は多いと思われるが、良くも悪くも書評は他者の見解が入るので、ミスリードが発生することがある。また、サマリについては、噛み砕いて説明してくれ大体のあらすじを知ることができるが、本のライブ感を感じることはできない。内容を濃縮して紹介する当サービスは、本1冊すべてを把握することはできないが、本のハイライトはもちろん著者の言葉選び、表現、行間から漂う著者の姿勢にまで触れられる。つまり、良書の魅力をその内容だけではなく著者の感性までも含めて感じられる書籍紹介サービスなのである。

当サービスは、幅広い視野や知の価値の重要性を知る有識者や企業の経営陣の心を揺さぶり、ニーズは軒並み右肩上がりだ。現在、100アカウント以上の法人顧客を獲得しており、中には富士フイルムやNTTなど、誰もが知る大手上場企業が多数社名を連ねている。

院生時代の教授の一言から起業を決意。以後、堅実な事業展開で着実に歩を進めてきた。
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20140624_4株式会社情報工場を起業した同社代表取締役の藤井 徳久氏がセレンディップの着想を得たのは、学生時代のインターン経験から。

藤井氏は学生時代に米系投資顧問会社でインターンとして日本株アナリストの業務を体験した。あらゆる産業界で活躍するさまざまな企業のエグゼクティブを訪ね、事業や業界についてヒアリングすることは、新たな発見が多く藤井氏の好奇心を満足させる楽しい仕事だった。

ITにも興味のあった藤井氏は、新卒の就職先に国内大手のシステム開発会社であるソラン株式会社(現TIS株式会社)を選びプログラマーとしてキャリアをスタートさせた。望んでいた職業ではあったものの、生活のほとんどが仕事に優先される日々の中で、もう一度新たなことを学びたいという意欲が芽生えていった。

そうして入社3年目、会社を辞し東京工科大学大学院で学ぶことにした。

新設されたばかりのバイオ・情報メディア研究科に籍を置いた藤井氏。同大学院の第一期生として新しいスタートを切ったが、ここで転機が訪れた。

それは講師を務めていた教授から、気に入った書籍を短くまとめていると聞かされたことだ。ちょうどその頃、大学院と並行し、独立系リサーチハウスの日本株アナリストとしてビジネスエグゼクティブにヒアリングする中で、本が売れないといわれる現実がある一方、本を読みたいが良書になかなか出会う機会がないという声も多数聞いていた。このことから、『SERENDIP(セレンディップ)』のビジネスアイデアをひらめいた。このビジネスは、必ずニーズがあり、出版業界と良書に出会いたい人のギャップを埋められると確信できるものであり、早々に起業の準備を進めた。2005年11月に資本金1000万円で株式会社情報工場を創業し、自社の事業として書籍紹介サービスをスタートさせた。だが、安定したサービスになるまでには試行錯誤の連続であったと言う。

「事業内容自体はそれほど当初から変化はありませんが、2点ほど難航したことがあって、ひとつめはダイジェストサービスであることの認知、ふたつめは出版社の許諾です。選定に関しては、当初、例えば数十冊の本のレビューを紹介するといった広告モデルの事業も検討したことがありました。しかし、フラットな立場で書籍の価値を発信していきたいと考え、原文を掲載させるダイジェストの方向に定めました。ところが、世に出してみると、どうしても書評やサマリだと思われてしまう。イメージの差別化には、苦労しました。許諾に関しては、ダイジェストサービスが認知されておらず、さらに実績が乏しい状態で出版社に話をもちかけても、良い返事は得られないこともありました。当社を設立して数年間は、とにかく事業を継続していくために必死で、できることはすべてやりました。」と、当時の苦労を藤井氏は振り返る。

しかし、この歩みがSERENDIP(セレンディップ)の知名度を広めて、徐々に連携するする出版社、同時に購読する会社が増えていった。2014年6月時点で、購読法人顧客は100社以上となっている。

「紹介書籍の選定には、3つの基準があります。1つは、元出版社編集長を含む当社の編集部員がそれぞれに面白いと感じた書籍を持ち寄り会議で検討する。そして、残りの2つは出版社の献本と、法人顧客の声です。書籍の出版数は、週に1,200冊程度だそうです。私たちだけでその数の内容を選定するのは至難の技。また、当社には現在、20代からシニア、かつさまざまなキャリアを持ったスタッフが在籍して幅広い選定体制を整えていますが、当社基準のみでは、内容が偏ってしまうこともあると考えています。そこにきて、本のプロフェッショナルである出版社の方や、広い見識を持つ有識者や豊富なビジネス経験のある現役の経営者の方に、おススメを紹介していただけるようになったことで、紹介書籍の幅がさらに広がりました。」

つまり、展開させるほど、コンテンツクオリティが自然に磨かれる希有なサービスであり、同社や提携出版社、そして顧客のすべてがwin-win-winとなる事業なのだ。

2015年に10期目を迎える情報工場。これまでの着実で堅実な事業展開が功を奏し、今では同社の収益のほぼすべてをセレンディップで稼ぎだせるまで成長した。

事業を大きく羽ばたかせ、「気づき」の一大情報プラットフォームをめざす!
将来への展望

同社にとって2014年は「実りの年」となりそうだ。

2013年にはNTTドコモとタッグを組み、約1200文字で書籍を紹介するアプリ「読学のススメ」の配信をスタートさせた。
ドコモゼミという、大人から子どもまで、スキマ時間に楽しく学習できるスマートフォン・タブレット向けの学習サービスで、数ヶ月間の配信だったが、月間累計ダウンロード数1位を獲得した人気アプリとなった。

2014年3月にドコモ スゴ得コンテンツ®として復活。そして、6月には株式会社データホテルと共同で、SERENDIP(セレンディップ)のエントリー版となるiOS&Android対応アプリ「Quickreads」(クイックリーズ)もリリース。

また、老舗の大手書店である紀伊国屋書店や、次世代図書館であるアカデミーヒルズ・六本木ライブラリーとのコラボレーションも実現。さらにオーディオブック配信サービスのパイオニア、株式会社オトバンクと事業提携し、セレンディップの可能性を広げる音声・電子版の書籍ダイジェスト配信サービス「リーダーズセレクション」を2014年3月から配信している。

まさに、大きく羽ばたこうとしている同社。今後も社の足回りを強化させながら、SERENDIP(セレンディップ)のコンテンツの拡充と提供方法の拡大に注力し、サービスの一層の普及を図っていく構えだ。

取材の最後に、藤井氏は今までと今後の展望を交えてこう語ってくれた。

「つい最近までの弊社は、いわば個人商店でした。ただ目の前のことをがむしゃらに行ってきました。しかし今は正規の役員・スタッフが9名と組織として動けるようになりました。素晴らしい人材に恵まれ、企業として盤石な体制を整えることができました。近い将来には、あらゆる人が『気づき』を得られ幅広い視野を培える、情報のプラットフォームを海外でも展開していきたいと思っています。例えば、海外のお客様にとっては日本の価値観やビジネススタイルを、その逆に日本のお客様に対しては、日本以外の国の文化や価値観、トレンドなど普段の生活ではなかなか出会うことができない情報や知識を提供していきたいと思っています。広大無辺なマーケットですが、弊社の役員は皆、グローバルで活躍したバックグラウンドを持っていますから、そこでこそ能力が最大限に発揮されると思っています。」

株式会社情報工場
代表者:藤井 徳久氏 設立:2005年11月
URL:
http://www.joho-kojo.com/top
スタッフ数:9人
事業内容:
・コンテンツ企画制作事業
・教育ソリューション事業
・メディア開発事業
・市場リサーチ事業

当記事の内容は 2014/6/24 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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