オフィスのルーティン作業を代行するロボット「RoboStaff」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

PCで行うさまざまな作業を簡単に自動化できる画期的なサービス。各種マクロやプログラムも不要
展開している事業の内容・特徴

160112-2今回紹介するのは、PCでスタッフが日々行っているルーティン業務の負担を軽減してくれるサービス「Robo Staff(ロボ・スタッフ)」だ。

同サービスの提供元は株式会社Sprout upで、ベースとなるロボットを動かすシステムは株式会社ビズロボジャパン社のもの。両社の協業プロジェクトとして2015年12月14日にリリースされた。

同サービス内容を一言で説明すると、PCのブラウザやExcel、データベース操作などを自動化してくれるというもの。使い方は簡単で、記録ツールを立ち上げ、そこで自動化したい作業を登録する。作業は逐次ツールに記録され、フロー図が表示される。完了後、出来上がった記録を微調整していけば、オリジナルのロボットが完成する。同じ作業をしたい場合はロボットにお任せ。もちろん、実行日時を事前に予約しておき、その時間に実行させるといった使い方も可能だ。

Robo Staffを動かすソフト(実行サーバ)は普通のパソコンにインストールして動かすため、社内LANでしかアクセスできない場所にあるファイルやデータベースへの接続なども特別な設定は不要。

初期費用はなく、月額最低利用料金が7万5000円。25時間分の利用権がついており、25時間を超えた分は時給3000円という従量課金制。「時給」だけで考えると派遣社員を雇う程度のコスト感だが、例えば人間が行うと10時間かかるような作業を、Robo Staffなら2時間で終えてしまうといったケースも。そうなるとコストメリットは非常に大きくなる。当然だが、ロボットゆえに人を雇う際にかならず必要となる、机・椅子、パソコンの準備や入館証の発行なども不要。早朝だろうが深夜だろうが、文句を言わずひたすら作業してくれる。

導入の手軽さも見逃せない。派遣スタッフを使う場合、多くの企業では人事部門を通して手続きをする。業務効率化のシステム開発を依頼する場合は、IT部門に要望して、まず要件定義を行い、続いて開発会社を探して見積をとるなど、とにかく時間がかかる。そもそも人材採用やITシステム投資などは当然だが社内稟議も必要だ。しかし、月額7万円程度のロボットであれば、現場の決済権で通せるのではないだろうか。

ちなみに、月額固定のプランも用意されている。24時間365日フル稼働させたい場合などは、月額契約に切り替えればよりコストを抑えることが可能。月額固定契約は応相談だが、目安として派遣社員を1カ月間フルタイムで雇用する程度とのこと。もちろん、人間と違って24時間働けるため、ロボットの組み方しだいでは、何倍もの業務が処理できる。

RoboStaffは、ブラウザ上で動く複数のシステムやアプリを横断して作業してくれる。例えば、ECサイトを運営している場合、メールマガジン配信システムから配信結果を取得し、同時にアクセスログ情報やSEM、DSPといった広告システムからのデータや販売情報や顧客からの声などともつなぎ合わせて、さらに各データにどのような相関性があり因果関係を分析して、Excelやパワーポイントにレポートとしてまとめて……といった集計作業などはかなりの部分が自動化できるというわけだ。

特に、取得するデータが多岐にわたるレポーティング作業などは、それを集めてくるだけで一苦労。それも週次で報告するとなると、毎週のように同じ作業をコツコツやり続けなければならない。作成したレポートからどのような仮説が導けるかが本来の仕事のはずだが、往々にして作成作業だけで疲弊して、肝心の仮説検証にまで頭が十分回らない。いざ会議の場で上長から「分析結果はわかったが、そこから見えた仮説はなんだ!」と突っ込まれ、しどろもどろとなるケースも多いだろう。作業部分をロボットに任せれば、人間は本来必要な仮説を考えることに集中できる。

そして、担当者が自分で試行錯誤しながら、自動化システムを組み上げられるというのも、Robo Staffの大きなメリットだろう。ただし、高性能なロボットをつくるのは、それなりの訓練が必要となる。そのため同社では最初に技術者がサポートに入り、ロボットのつくり方をレクチャーしてくれる。利用開始にあたっては2週間の無料トライアル期間も設けているため、その期間内で使えるかどうかを判断できる。

導入先企業での利用者の習熟期間は、だいたい1~2カ月程度。各ツールのマクロやプログラミングの習得に比べれば、かなり簡単に使いこなせていることがわかる。

取材をした2016年1月時点で、すでに多数の引き合いがきており、毎日のように説明・商談に出向いているという。正式リリース前の2015年9月頃からトライアルで数社に導入しており、とあるECサイトでは、業務工程全体をRobo Staffが運営しているという。

経営コンサルタントとして気づいたルーティンワークの無駄。ホワイトカラーの生産性を改善する事業を構想
ビジネスアイディア発想のきっかけ

160112-1Sprout upの創業者である東窪 幸博氏(代表取締役社長)と、板場 雅裕氏(代表取締役副社長)は、ともにリクルート出身。東窪氏は約13年リクルートに在籍。その後、いくつかの会社で事業立上げを行い、経営コンサルタントとして独立。新規事業開発を支援するビジネスを行っていた。

また、共同創業者である板場氏は、同社に12年在籍した後、楽天で6年間のキャリアを積み、経営コンサルタントとして独立した。

板場氏がコンサル先の業務内容に疑問を感じたことが、Robo Staff誕生のきっかけだ。板場氏がクライアント先の経営改善のため、さまざまなデータの提出を要望したところ、意外にも現場スタッフの抵抗が強かった。というのも、現場スタッフにはすでに膨大なレポーティング業務が課せられていたため、新たに分析のためのデータを集める時間がなかったのだ。しかし、そのレポーティング業務は本当に有用かというと、第三者として冷静に見た板場氏にとっては疑問に感じる点が多かったという。

にもかかわらず、現場スタッフが無駄とも思える作業に追われ、本質的な課題解決のための時間が割けない状況では、経営を改善しようにも実行できない。しかも、レポーティング作業自体が属人化していて、その担当者でなければ集計もままならない。これでは、仮にその担当者に別の重要な仕事をさせようにも、業務を他者に引き継ぐ、アウトソーシングさせるとしても一苦労となる。

そうした課題を抜本的に解決できないか――? オフィスワーカーのルーティンワークを担当者自身が簡単に自動化できれば生産性を劇的に改善でき、経営改善も容易になるのではないかと、板場氏は考えた。

もちろん、オフィスワークの自動化というと、その気になれば専用の業務システムを開発するという解決策もある。しかし、そのためのシステム投資は高額になる。

あるいはExcel上での作業などはマクロというプログラムを組めば、かなりの部分を自動化できるが、マクロを自由自在に組み上げられる人材を雇用すること自体難易度が高い。昨今のITエンジニア採用の困難さはいうまでもないだろう。

もっともマクロでできることは、各アプリケーション内での作業を自動化するだけ。別のシステムやアプリケーションからデータなどを自動取得する仕組みをつくり込むのは、意外と大変だ。例えば、特定のWebサイトの更新情報を取得して、それをExcelに集計していく作業を自動化するだけでも、専門のエンジニアに依頼すると数日はかかる。

そこで、板場氏はプログラミングの素人である現場担当者でも簡単に扱える、汎用的に使える仕組み・ツールがないかリサーチし、株式会社ビズロボジャパンとの協業を東窪氏とともに提案。IT系企業を中心に、PCワークの業務改善ニーズ向けのサービスとして、2014年3月に株式会社Sprout upを立ち上げて事業を開始した。

当初は、システムを丸ごとクライアント先に「常駐」させる方式と、自社サーバに置いたシステムをレンタルするBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)型の2つの手法を提供していた。

しかし、常駐型となると初期費用が嵩み、IT部門などをとおす必要が生じる。また、BPO型ではセキュリティー上、クライアント企業の社内LANからしかアクセスできない情報を扱うことができない。そうした課題をクリアしてリリースしたのが、初期費用ゼロで時給約3000円、しかも社内設置を可能にしたRobo Staffというわけだ。

オフィスワーカーの生産性向上が企業間競争力の源泉に。ロボットを使いこなすスキルが問われる時代へ
将来の展望

Sprout upの今後の展望について東窪氏、板場氏に伺ったところ、「オフィスワーカーの生産性の改善というテーマが軸になることは間違いない。サービスとしてはまだスタートしたばかりなので、当面はサービス品質の向上に注力していく。事業拡大の具体的な計画やそれに伴う資金調達などは、もう少し先になるだろう」という回答だった。

経営コンサルタントとして、企業の経営戦略や新規事業立上げにかかわってきた東窪氏、板場氏は、常にオフィスワーカーの生産性の低さを改善したいという思いを持っていた。

新規事業は「やってみなければわからない」という側面はあるが、とにかくいろいろな仮説をもって、PDCAを素早く回し続けることが必要。そして、それは新規事業にとどまらず、本業の改善でも同様だ。

そのため、経営企画やマーケティング担当者などは、どれだけの仮説を考えだせるかが常に求められる。それこそが付加価値であり、生産性そのものに直結し、結果として企業の競争力になる。つまり「考える時間」をいかにつくり出せるか、データの集計や分析といった作業を如何に減らせるか――これがビジネス成功の分岐点となる。

昨今、優秀な人材を採用するのがより困難になっている。優秀な人材の獲得自体が、グローバルでの競争になっているからだ。今後はますます、オフィスワーカーの生産性が強く問われることになるだろう。実際、企業のコア業務以外はできるだけアウトソースすることが自然で、近年急成長しているクラウドソーシングを活用する企業も増加している。さらに、さまざまな人工知能型サービスも急速に登場してきている。

インターネット上で取得できるデータも増え続けている。「IoT」が加速し、ネット以外のリアルからも膨大なデータが収集できるようになりつつある。それらをビジネスに活用することが、今後はより求められるだろう。近い将来、RoboStaffのような「ロボット」を使いこなせることが、オフィスワーカーに求められる重要なスキル・ITリテラシーになるのかもしれない。

株式会社Sprout up
代表者:東窪 幸博氏、板場 雅裕氏 設立:2014年3月
URL:http://www.sproutup.jp/ スタッフ数:7名
事業内容:
・ロボット派遣事業
  -ビジネスロボット派遣
  -ロボットSV派遣
・スマートデバイス活用支援
・新規テクノロジー事業化支援
・ビジネス・アプリケーション開発

当記事の内容は 2016/01/12 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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