
創業企業のうちどれくらいの企業が廃業したのか? 大きな成長を遂げた企業にはどのような特徴があるのか?etc…これまでの日本では欧米に比べ、中小企業研究が遅れていることもあり、感覚的に語られることが多かった “創業者のその後”。
本書では国民生活金融公庫総合研究所の融資先企業2181社を、2001年から2005年という長期にわたって5回のアンケート調査を行うことによってパネルデータを作成、その精緻なデータ分析によって“創業者のその後”を追っています。
従来は企業誕生時とその後、特定の時点のみの比較分析であったのに対し、日本で初めて本格的に長期にわたり広範な事例調査に基づいて新規開業企業のその後を明らかにした点で画期的で興味深い書物であり、私のように創業のお手伝いをさせていただいている人間の「バイブル」とも言うべき一冊です。
例えば、創業計画書で練りに練って立てたはずの売上予測。創業2年目までに達成できた企業の割合は、一般消費者を対象とする事業の場合約56%、事業所を対象とする事業でも約65%に止まっています。当然のことながら、達成企業と未達成企業とでは、その後の業績にも大きな格差が生じており、さらに未達成企業の多くは不振からなかなか脱却できない実態も浮き彫りになっています。
では、予測した売上を達成できなかったら、成長の可能性は潰えてしまうのか? そんな質問が聞こえてきそうですが、決してそうではありません。不振から脱却できた企業は存在します。では、何がブレークスルーの源となったのか?・・・
本書の特徴は単なるデータ分析にとどまらず調査対象企業の中から55社に聞き取り調査を行い、個々の事例を紹介しています。
第6章「計画と現実のギャップへの対応」の多くの事例と分析結果からは、開業直後の売上が創業計画書とおりにいかないという経営者なら必ず通る問題を乗り越え、成功への足がかりを見いだすヒントを見つけることができるでしょう。
新規事業創出ばかりに目を向けるのではなく、今後さらに必要となる新規開業企業を育てるために求められる支援策の提案は説得力のある内容になっています。
気になる方はぜひ本書を手にとってみてください。
新規開業企業の借り入れ状況など、事例を踏まえた分析を初め、創業を予定されているみなさんが融資と自己資金のバランスを考える上で具体的なビジネスプランを立てたり、創業後の対応を考えたりする際に大いに参考になるはずです。ぜひ一読をお勧めいたします。