開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
明るい兆しが見え始めてきたと言われる不動産市場。業界を牽引するリーダー5人が集ったこのカンファレンスでは、 不動産ベンチャーが生み出す新たなバリューから、アントレプランナーが描く未来都市像まで自由に語り合った。
テーマは「アントレプレナーが未来都市を創る」。不動産の新たな可能性が見えてくるセッションとなった。
活況を呈してきた不動産市場とそれぞれのビジネスモデル
永井:最近、東京だけでなく全国的にも景気が良くなってきたと言われる不動産業界ですが、これは、私自身も日々実感しているところです。今ここに、 新進気鋭の杉本社長から大ベテランの方までいらっしゃいますので、その方々が見る、現在の不動産市況、今後の見通しなどをお聞きしたいと思います。 杉本:私どもが見ている不動産市場に関してですが、リート、特にJリートに関しては、海外からの資金もたくさん入って来て運用資産も増え、時価総額もどんどん増加している。そんな中で、日本の不動産市場は活況と言われています。まさしくその通りだと思います。 サルキン:まだまだ地価は上がっていくと思います。特に収益物件、都市資金がかなり余っている状況ですので、収益物件の価格はどんどん上がっていま す。金利が上がっても、資金が余っている状況がしばらく続きそうですので、投資家は、今は我慢するしかないと思っています。世界の中では、金利と利回りの 差があるのはほぼ日本だけですので、国内外の投資家から見ると、まだまだ日本は魅力的だと思っています。しかし、われわれのように、実際日本を中心にやっ ている会社の中では、こういう状況はかなり苦しい。物件がない中で、どんどん競争が激しくなっています。 平松:特に郵政の土地に全国で取り組んでいますと、都心から始まって、不動産は全国的に市況が良くなってきている、という実感はあります。ただそれ は、地方の主要都市くらいまで。それと、最近投資家の方々を相手にしていて思うことは、日本の不動産もボーダレス化している、要は国内のものだけじゃない という感じを、非常に強く感じています。たとえば、オーストラリアでは日本のアセットだけを買って、それを自国のリート市場で上場させるとか、最近ヨー ロッパのお金もたくさん来ているとか、そういう意味では、日本のものであってもそれを持っているのは世界中の人、という感じは実感しています。そういう意 味で、この業界のビジネスチャンスはまだまだあると感じています。
杉本:今は、デザインだけでのバリューアップは難しくなってきましたが、われわれはそこに少し付加価値を付けていこうと考えています。たとえば、 ペット企業と提携してペットホテルとペットショップ、ペットシッターサービスを付けたマンションの企画、地下にスタジオを造ったミュージックマンションの プロデュースなど、そういうコンテンツプラスデザインがバリューアップを生み出す、と考えています。われわれがこれから総合不動産企業というのを目指す上 で、こうしたことが、これからのキーワードになってくると、私は思っています。 平松:私の場合はモノづくりをやっていきたいと思っていましたので、とにかくアセットを買えるような会社を目指しました。ですから、キーワードは事 業用の土地を何とかうまく、安い案件で取得するということ。この仕事の成否は、仕入れのときに9割方決まってしまうのですから。 サルキン:今後ともアメリカ型のショッピングセンターを目指していきたいですね。しかし、大型商業施設の魅力がどんどん薄くなっていることと、もう 良い立地が基本的にないということで、郊外型のショッピングセンターではなく、都心で、既存のものをよりバリューアップできるような物件を、積極的に再開 発していきたいと思っています。それから、これは海外の投資家との絡みですが、最近利回りが低下してきて、アメリカの投資家はなかなか納得できなくなって います。ですから弊社では、最近はイギリス、スイスなどヨーロッパの投資家と組むことが多いですね。今でも、キャップレートと金利の差が少なくても2ポイ ント以上ありますので、ヨーロッパの投資家にとっては、非常に魅力的なマーケットだと思っています。 永井:宮本社長は、この中でいちばん正しい相場の認識をお持ちだと思いますので、今の足元の相場観と、今後どのようになっていくのかという予想も含めて、お話しいただけるとうれしいんですけれど。 宮本:難しいですね。日本にリートが起きて、相場観というものがまだ見えないと思うんですよ。それから金融庁の緩和とか、最近は姉歯さんを絡めた日 本の建築物自体の話題。それに、人口の問題やオフィスビルやレジデンス、ショッピングモール、都市開発についての勝ち組み負け組みの問題。家賃でいうと、 一時オフィスビルが下落しましたが、東京では今バブル期に近い勢いで伸びています。ですから、相場観ってどこを見て言うのかだと思うんですよね。そこは知 恵の出しようだと思います。上げ止まったときにどう付加価値を付けていくか。家賃だけじゃなく、看板だろうがサービスだろうが、何か収益につながる知恵を 出せば、違ったカタチの市場というのが出てくるだろうと思っています。 永井:最近、不動産に金融的な側面が融合されてきて、それによって、リートというマーケットもできて、収益還元法っていう考え方も定着して、不動産 業界もだんだん整備されつつあると思います。ただ、一方で金融が入ってくることによって、いろんな意味で規正が厳しくなってきて、ビジネス上問題点も多々 出てきていると思うのですけれど。 杉本:本質的な問題は、Jリートが海外の不動産を買えないことだと思います。これによって国内需要をものすごく牽引してしまった。これから海外不動 産を買える、開発できるというような、欧米と同じカタチになってくると、比較的不動産価格もスタンダードに落ち着いてくるんじゃないかなと思っています。
サルキン:リートが買うべき物件の数が日本は不足しています。最初に上場した物件の質と最近上場するリートの質を比較してみますと、最近のリートは 質が悪い。だから今、物件がないわけですよ、それと、いい利回りと悪い利回りの差がどんどん大きくなっている。いいリートは3%くらい。悪いリートは5% 以上ありますので、これでは、勝ち組みと負け組みに分かれてしまいます。この現象はこれからどんどん明確になってくるでしょう。 永井:リートを上場する際に信託化する物件がなくて、リートに入れる物件がどんどんなくなっていると、たぶんそういう状況だと思います。一方で、信 託化できないけれど、見るといい物件というのもあって、構造的に金融が入ったことで、歪んできている面があると、個人的には思っております。
平松:気になっているのは、やはり不動産に対するファイナンス。金融庁が各大手銀行にはすべて調査に入っていますし、不動産融資に対する規正みたい な感じに近いですよね。個人の投資家保護や地価の上昇を抑えるのが理由でしょうが、今後、物件調達は苦労するなあと思っています。 聴講者からは市場とテナント、お客様とのギャップを指摘する声も。お客様意識、テナント意識がまだそこまでいってないにも係わらず、家賃設定だけが 走ってしまっている、というのが問題のようだ。今後、テナント意識が市場の動きとマッチングすることが、業界を活況にしていくポイントになってきそうだ。 活況を呈してき不動産市場とそれぞれのビジネスモデル永井:皆さん、当然街をよくしたいと、自分たちで街を造ってみたい、都市を造ってみたいと思われているんじゃないかなと思います。それをやるための構想とか、取り組みについてお伺いしたいと思います。 平松:今は、お金はまったくボーダレスですから、いろんなポートフォリオが考えられると思います。投資していく先っていうのは、国内だけでなく海外 のものでもいい。使うお金も日本のお金でなく海外のお金でもいい。ちょっと自由な発想で、ビジネスがやっていけたらと思っています。
宮本:私は、基本的には消費者、生活者の行動を絶対にぶらさないで見ていれば、事業として成り立つと思っています。地方と東京の格差で言えば、地方 の高齢者とか、コミュニティとか、地域の商店街とかにコンテンツ向けてやるとか、金融業界に負けているなら信用金庫と組んでみるとかね。そうすることで、 比較的魅力的な都市ができたり、衰退しそうな町の高齢者の預貯金が流動化したりですね、ビジネスチャンスっていうのはあると思いますよ。 サルキン:もう一つ、この業界の深刻な問題として、人材不足があると思います。欧米と違って日本の場合は、不動産コンサルティングビジネスの分野は レベルが低い。たとえば変な物件を買った場合、その委託先さえない。だから、われわれは少人数で、優秀な人材だけで今後とも商業施設に特化したい、専門性 を深めたいと思っています。 最後に、それぞれの具体的な都市づくり像を披露していただいた。コーディネーターの永井氏は「できるだけ視野を世界に向けて、負けないエリアでビジ ネスをやっていきたい。そして、人が集まる必然がある街を自らの手で造っていけたらいい」と。若手の杉本氏は「100億円レベルのプロジェクトを、一つ一 つ実現して行きたい」と語ってくれた。さらに「人の流れがあるところで、魅力ある再開発をやっていきたい」とサルキン氏。「正解の街づくりなんてない。不 動産は同じものがないから面白い」と平松氏。宮本氏は「地域の活性化につながるようなサービスを考えればいい。それはここにいるような頭の柔らかい人たち の方がアイデアを出せる。国の政治はビジネスがドヘタなので、逆にプレナーとしてはチャンスがあると思います」と強調してくれた。 |
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株式会社エスグラントコーポレーション |
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株式会社企画ビルディング |
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株式会社リーテック |
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株式会社パシフィカ・モールズ |
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コーディネーター |
ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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