開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
TVでおなじみの顔や、女性より美しいニューハーフのコーディネーターなど、業界のイメージ通り華やかな顔ぶれがそろったファッションカンファレンス。客席にも個性的なファッションをした若者の姿が多く見受けられたのも特徴のひとつ。
世界的に見ても非常にセンスが優れていると言われる日本のファッション業界だが、実は残されている問題点も多いという。
それを解決すべく、5名の経営者が意見を出し合った。
ファッション業界によるネットの位置づけと役割
如月:私の会社では、ネットでファッションをサポートする取り組みをしています。商品を売るだけではなく、システムを強化することでサポートするという感じですね。 矢野:ファッション業界にとって、ネットはまだまだ様子見の段階。実際に商品を売るよりも、店舗誘導を望まれることが多いんです。 千金楽:検索エンジンでは、検索キーワードの大半がブランド名やエリア名なんです。各アパレルのサイトを訪れるユーザーの8割は検索結果から入って くるんですね。最近の若者は、TVなどのメディアで見聞きして、興味を持ったワードをすぐにネット検索します。だから、アパレルでネット活用というと、 ショッピングばかりが取り沙汰されますが、実は店舗誘導の役割の方が有効なんです。 如月:日本では携帯でのショッピングがかなり普及してきているんですが、韓国ではなぜ利用が少ないんでしょう? 丁:若いクリエイターに財力がないからでしょう。だから彼らの商品を世に出すことができない。本当はもっとネットを活用して、物流の手間を省ければ、クリエイターは作品づくりに専念できるのにと思いますね。 植松:確かに、最近の日本の若者は、携帯でどんどん買い物しますよね。サイズなんかが特になくて、ネットでも買いやすいカバンや時計がおしゃれの象徴になっているのも要因でしょう。 如月:では、消費者のネットショッピングは増え、全業界を通してのネットの広告収益が紙媒体を越えつつあるという今、なぜアパレル業界はネット広告を打ちたがらないんでしょう。やっぱり効果云々より、ブランドイメージを損ねる媒体だと思われているのでしょうか?
植松:でもラグジュアリーブランドなんかでは、最近徐々にネット広告を利用する兆しが見えてきていますよ。その代わり、媒体の質は厳しく問われてきています。ブランドイメージを損ねないような質のいいサイトであることが必須ですね。 矢野:もしくは、ネットだけでは不安というブランドは、クロスメディアを利用して、ネット×雑誌×携帯など、媒体を広げられると広告を出しやすいようです。 如月:それがネットに一本化できると、ファッション業界がネットに投下する広告費も増えるのに……。これはどうしたら解決できるんでしょうか? 矢野:もっと競合が出てくることが大切ですね。仲間が増えないと市場が広がりませんから。市場が広がらないと、クライアントにもなかなか認知してもらえません。 ファッションとライフスタイルの関係性の変化とは如月:実際のところ、ファッションがライフスタイルを創造しているのか、ライフスタイルがファッションを創造しているのか、どっちでしょう? 矢野:これまではファッション業界がライフスタイルを牽引してきましたが、今は個人の方が立っている気がしますね。 植松:でも一方で、バブル期はジュリアナという一つのライフスタイルが、ボディコンシャスというファッションの流行を生みましたよね。ファッション業界から提案するものもあり、消費者側から生まれるものもありっていうところではないでしょうか。
矢野:今はジュリアナファッションみたいな強烈なトレンドがありませんよね。もっと「私の価値観」を皆が強く打ち出すようになりました。 植松:確かに、それぞれが自分のしたい格好をしている。 矢野:韓国ではブームってあるんですか? 丁:韓国では新しいライフスタイルを提案するのはデパートです。デパートが流行を引っ張ります。だから、他国の人気デザイナーがつくるトレンドに流 されやすいんですね。でも最近では自国からアジアのライフスタイルを、海外に向けて発信していこうという風潮が強くなってきました。 如月:アパレルウェブではたくさんの情報を発信することができるわけですが、自らファッションを仕掛けていくというアプローチは考えられていますか? 千金楽:私が若い頃なんかは、収入のほとんどをファッションにつぎ込んでいましたが、最近では、ライフスタイルが多様化し、旅行に行ったり、習い事 をしたり、時間を消費することにお金をかけるようになりました。今まで、ファッションといえば商品を売ることがトレンドでしたが、これからはそれを取り巻 くサービスの方が重要になると思うんです。なので、インテリアやカフェなど、近いカテゴリと連携して何かを仕掛けるというのが、ライフスタイルのビジネス を考える上では重要になっていくと考えています。 輸出力の弱さを改善し、日本のファッションを世界へ如月:日本からファッションを発信していけるところって少ないですよね。イタリアなんて、輸入より輸出の比率が圧倒的に多いのに、日本はその逆。日本のお金がどんどん海外に流れ出ちゃうというのは、国としても問題ではないでしょうか。何か解決策はありますか?
千金楽:アパレルウェブには海外からもたくさんのアクセスがあります。なぜなら、日本のアニメやゲームが海外では大ブームで、そこから日本のファッ ションに興味を持ったユーザーがたくさんやってくるからです。日本のファッションは、世界的に見てもかなりレベルが高い。それなのに、残念ながら日本には 輸出するためのシステムがきちんと確立されていません。輸出力がないんです。それには、アパレル業界の高齢化というのが、要因として挙げられますね。「自 国だけでやっていける」という考えとプライドがあるから、海外へ輸出するという発想が乏しい。 如月:韓国では輸出が文化として定着しているのですか? 丁:韓国は輸出がメインで、むしろ評価されます。輸出が活発化すると、製品クオリティに自信が持てるようになって、2000年以降はパリやニュー ヨークにも進出しています。日本はアジア一の先進国なんですから、他のアジア諸国をオーガナイジングして、それぞれの国の強みを持ち寄った、アジアの素晴 らしいファッションを世界に発進すべきです。 如月:確かに日本は思想的に遅れているところがあるから、本当は海外にアプローチできることがもっとたくさんありますよね。 植松:私はしょっちゅう海外へファッションの視察に行きますが、例えばあるブランド店に、1年目は日本人客が集中して、2年目には韓国人客が、3年 目には中国人客が集まるんです。これは、日本のファッション誌が韓国や中国に大きく影響していることの表れで、日本がアジアのトレンドウォッチャーである ということの裏づけだと思いますよ。そのセンスをもっと海外に発信していくべきです。 次世代のファッションのビジネスモデルとは如月:次世代のファッションビジネスモデルについては、皆さんにじっくり聞いてみたいですね。私の場合はネット上でのシステム構築という役割が強い わけで、最近では携帯やネットの進化に伴い、システムの作り手としての技術力がますます問われる傾向にあります。技術が向上すれば表現力やできるサービス も増えますから、やっぱり課題は技術力を磨くということでしょうか。 植松:ライフスタイルは個性重視になっているので、大勢が同じ方向を向くのではなく、たった1人の人がいいと言ったものが、ネットというツールを通して広がる可能性がある。そこにファッションのチャンスも増えると思いますね。 矢野:私はネットを使うことでもっと効率化できることがあるのに、と思います。たとえば店で買ったものをネット上のストレージにストックして、他の 店で別のアイテムを買う時に、携帯上で取り出し、うまくコーディネートできるものを選べたりすると、ネットならではの特性も活かせて便利じゃないかしら? 如月:今はアバターを使ってそれができるサービスができているんですよ。ただ、店同士の提携は図れていないですけど。 矢野:そうなのね。あとは、そのサービスを利用するために、今は手続きにワンアクションが生じると思うので、もっと当たり前にそれが利用できるようになるといいですね。 如月:確かに。それうちでやろうかな。 千金楽:食品業界は比較的受発注システムにネットを取り入れるのが早かったんです。それまでFAXや電話でやりとりしていた受発注がネットでできる ようになると、正確だし、受注する側の手間もだいぶ省ける。そこでうちでは「テキスタイルネット」というのをつくって、ネット上で生地の受発注ができるシ ステムを可能にしました。それと「アパレルネット」というのも4月にオープンするんですが、これはネット上でアパレルメーカーが展示会を行い、受注までで きるという仕組みです。地方の人は主に東京で行われる展示会に、なかなか来られないというのが現状。それを打破できるわけですね。 矢野:それはすごいサービス! ただ、アパレル業界はインターネットに疎いので、操作を簡単にしてあげることが大切ですね。
丁:私はアジア全体にはみ出して、多くのクリエイターたちをマーケティングした上で、コンサルティングをしてあげたいですね。 ファッション業界における今後の起業とは 植松:僕は、ファッションというのは人を楽しませる仕事だから、まずは業界の人間が楽しんでいることが大切だと思うんです。 矢野:確かに、やりたいという気持ちは大切。あとは、IT化も遅れていることですし、B to B事業にしても、B to C事業にしても、入り込む隙はたくさんあるんじゃないかな。 千金楽:IT化が遅れている分、ITの特質をうまく使えれば、ワンチャンスで莫大なマーケットを生む可能性だってある。起業家にはチャンスの多い業界ですね。 如月:本来ファッションとネットって相性がいいものなのかもしれませんね。 |
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株式会社アパレルウェブ |
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株式会社カフェグローブ・ドットコム |
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Codio Inc. Asia Fashion Association 韓国委員会創立メンバー Asia Indigo Culture Promote Federation 韓国委員会議長 Fashion Group International(FGI) 韓国広報委員 |
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株式会社ヘルメット |
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コーディネーター |
ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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