開催日:2007年3月11日 会場:東京・赤坂プリンスホテル
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数年前、アルバイトで稼いだ資金で世界50カ国以上を旅行し、1973年から76年は西ドイツに留学をしていました。帰国後、友人と二人で旅行会社を創業
したわけです。当時はコンピュータもなく、旅行の予約受付は電話と手書きのメモで行っていました。中国に行ける人も一握り、マイクロソフトもまだ創業前と
いう時代です。わずか20年でこの変わりよう。事実上はこの10年で大変化が起きているのです。
日本の歴史上、これまでに大きな変化は3つありま
した。1つ目は、明治維新。これを期に、日本を代表する大企業が続々と誕生したのです。2つ目は、戦後。ホンダやソニーという新しい企業が続々と生まれま
した。そして、3つ目は現在です。まさに今、大変化の真っ只中。この変化は89年に「ベルリンの壁」が崩壊した時にスタートし、マイクロソフトやグーグル
といった世界的な企業が続々と誕生しています。世界的な情報革命のど真ん中にいるのです。起業家にとっては大チャンスの時。この流れをとらえて先を読め
ば、10年後には世界的企業にしていくチャンスにあふれている。こんな機会は滅多にありません。しかし、流れは激流であり、一歩間違うと倒産してしまいか
ねない。チャンスは危機と表裏。ハイリスク・ハイリターンの世界であることも確かです。
H.I.Sは、現在、世界に70拠点、国内230店以上を
展開しています。私は2カ月に1回は海外に行き、世界でいろいろな変化が起きていることを見聞きしています。マカオは世界一のカジノを目指して数兆円規模
の投資が行われている。ベトナムでは空前の株式ブームで、新しい企業がどんどん生まれて活気に満ちている。ドバイでは、砂漠の街だったところが一大避暑地
になっている。ホテルの稼働率は80%以上で、新しいホテルが続々とオープンしている。このように、世界は大変化、チャンスに満ちています。この現状をよ
く見て、ビジネスチャンスにするべきだと思います。
ビジネスで最も重要なのは、情報です。いかに早く情報を入手するか。情報を手に入れれば、何をすればいいか、どこに投資すればいいかがわかります。
私
が創業した76年当時、海外旅行は価格が高く、3、4%の人しか行けませんでした。いまでは50%以上の人が出かけていますね。ヨーロッパ旅行は70万
円、アメリカだと40万円もしていました。しかも、向こうから日本にくるのはその半分の金額で済む。これはおかしいと。半額にすれば、飛ぶように売れるだ
ろうと思ってビジネスを始めました。しかし、最初の1カ月間は来客ゼロ。3カ月経ってもお客さまが来ないのです。この国はおかしいんじゃないかと思いまし
た。半額にすれば、世の中のためになる。若い人が海外に行けて視野を広げることができる。絶対に喜ばれると思いました。半年経っても来ません。何回もやめ
ようと思いました。
なぜ来ないのか、よく考えてみたのです。信用がなければ無理もありません。小さい、汚い事務所で、若い人間がやっている。即金の先払いでチケットは空港渡
し。いい話には詐欺が多い。これでは誰も買わないだろう、自分だって買わないと思いました。
半
年経って、どんどんお金がなくなっていきました。このままでは倒産は免れないという状況です。その頃、ヒマでしたので、店で本を読んでいたのです。そこに
「継続は力なり」「石の上にも三年」と書かれていた。正しいことはいずれわかってもらえる。そう思って我慢をしたのです。そうしたら、お客さまがポツポツ
と来始め、2、3年もするとどんどん口コミで増えていきました。
事
業を続けるコツは、まず継続するだけの資金を用意することです。3年分は調達する。10社中8社は、3年以内に潰れます。資金が尽きてあきらめる。意志と
金がなくなると会社は潰れるのです。最初は信用されませんが、最低3年間やれば形になります。ビジネスの基本はお金。よくお金は二の次といわれますが、利
益を出して食べていけないと続きません。まずは利益を出すことが大切なのです。
次に、人。自分一人でやれると思うのは間違いです。僕は子どもの頃、体が弱くてよく学校を休んでいました。気も弱い。勉強もそこそこ。違うのは、チャレン
ジ精神があったことくらいです。そんな自分でもこれだけのことができたのは、人がいたから。もし自分が経理をやっていたら、会社はとっくに潰れている。
いっしょに創業したパートナーがきっちりカバーしてくれたから、ここまで来れたのです。企業経営は、自分ができないことがあっても、できる人を探せばでき
る。1つの力が2つになるのです。ただし、いっしょにやっていくうちにお互い相手の嫌なところも見えてくる。それでうまくいかなくなることが多いのです
が、片目をつむることが大切。相手のいいところだけを見るようにするのです。企業のいいところは、人といっしょに事業を行うことができることなのです。
そ
して、モノ。マーケティングをきちんと行って情報収集し、これから伸びる事業を探すことです。これから落ち込んでいく事業はダメ。努力しても成果は上がら
ないでしょう。私は、いずれ日本人はもっと海外に行くようになる、これから海外旅行の時代が来るということが見えたのでこの事業を始めたのです。
事業を成功させるポイントを8つほどお話します。
1. 夢や目標を持つ
ゴールがなければ人は走れません。当社は3年後から倍々ゲームで成長し、みるみる発展していきました。そこで壁にぶつかったのです。お客さまはどんどん来
るのですが、スタッフはどんどんやる気を失っていく。すると成長が止まり始めます。ただ働いているだけでは続かないんですね。そこで、海外に進出する、株
式上場する、JTBを抜くという目標を掲げたのです。すると、雰囲気が変わりました。「世の中に貢献する」といった、何のためにこの事業をやっているのか
という理念をつくることで、わかりやすい会社になると思います。H.I.Sは現在、東証一部に上場し、売上高3300億円で、2006年度には海外旅行の
送客数でJTBを抜きました。
2. 会社を変化させる
今は変化の時代。会社を変化させていかないと、今日勝っていても1年後には負け
ることもあります。そうでないと、時代に取り残されるか、マンネリになって仕事が面白くなくなる。どんな小さなことでも構わないので、経営者は去年より何
がよくなっているかを見て、そしてどんないいサービスでももっと良くしていくことに取り組んでいくべきです。
3. バランスを取る
当社は、社員数が800人になった時に組合ができました。全員が見られなくなって
いたのです。つらく苦しい思いでした。うまく成長しているのに、なんでぐらつくんだろうと。バランスを崩して、何かがおかしくなっていたんですね。急に成
長して人が増えると、人のケアが甘くなってコンプライアンスもゆるくなる。すると、顧客サービスの質が落ちてしまう。伸ばすには伸ばすが、伸ばし過ぎない
ということも大切なことです。いい成長を続けるためには、常にどこに問題があるかを把握し、弱いところを強化することです。
4. 適正な組織づくり
マネジメントのやり方は規模ごとに違います。小さいうちに、営業、総務、管理、
人事などに1人ずつ置いていたら潰れるでしょう。30人くらいまでのうちは、社長ができるだけカバーして利益を出すことに注力する。しかし、100人を超
えたらやり方を変えないとだめです。その時点で総務や人事、営業などきちんと組織化する。1000人を超えたら、事業部制や別会社化などとまた変える。そ
して1万人を超えたら、また変える必要があるでしょう。当社はこれからのチャレンジとなりますが。組織を大きくすることは必ずしもいいことではありません
が、会社を良くするなら必要なことです。
5. 失意泰然
会社経営は失敗、問題の連続です。問題のない会社、失敗しない人なんていません。それを
一つひとつクリアし、経験値をアップさせていくことで、どんどんいい会社になる。問題にめげていると元気がなくなります。問題は次の発展の糧、と思い、明
るく元気にしていることが大切です。
6. 運を大切に
運がいい時・悪い時は必ずあります。自分の実力を過信して驕りが出ると、運も離れてい
く。運のいい人とは、人間性がいい人です。また、運のいい会社と付き合うこと。成長している会社は運がいいと言えるでしょう。運が悪い時は、嵐が去るまで
焦らずに待つ。運がいい時はチャンスだと思って果敢に攻めることです。
7. 戦略・戦術
「オンリーワン」「差別化」といった戦略や、「スピード重視」「他社よりも早い情報収集」といった戦術を考えて実行すること。これを世界一にする、これを地域のために良くする、といったように、小さな会社はあれもこれもやらずリソースは集中させるべきです。
8. マインド
こういう会社にしたい、という思い入れ、気持ちがなければ事業はできません。会社はその形を描けなければつくれません。鮮明に思い描ければ、あとは行動あるのみ。やりたいことを思い描き、原理原則を踏まえて行動すれば、普通の人でもほとんどが成功できると思います。
株式会社エイチ・アイ・エス 取締役会長
高校卒業後、旧西ドイツ マインツ大学留学。その間に、50カ
国以上の国々を旅する。その経験を生かし、帰国後の1980年、エイチ・アイ・エスの前身である「株式会社インターナショナルツアーズ」を設立、代表取締
役社長に就任。1996年ゴールドコーストに「ホテルウォーターマーク」をオープン、また、国内4番目の航空会社「スカイマークエアラインズ株式会社」を
設立。1999年協立証券株式会社(現「エイチ・エス証券」)の株式取得により証券業へ参入、代表取締役に就任。2003年、モンゴルAG銀行会長就任。
2004年6月より株式会社エイチ・アイ・エス取締役会長就任。
ゲスト審査員
Wikipedia創始者/Wikia.Inc. Chair ジミー・ウェールズ氏
グローバル カタリスト パートナーズ工学博士
マネージング・プリンシパル 兼 共同創設者 大澤弘治氏
(株)サキコーポレーション 代表取締役社長 秋山咲恵氏
(株)サンブリッジ 代表取締役会長兼 グループCEO アレン マイナー氏
GMOインターネット(株) 代表取締役会長兼社長 熊谷正寿氏
タリーズコーヒージャパン(株) 代表取締役社長兼 チーフバリスタ 松田公太氏
(株)ホリプロ 代表取締役副会長 堀 一貴氏
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