開催日:2006年3月11日 会場:東京・プリズムホール
株式会社エ・ム・ズ 代表取締役社長 秋田 稲美氏
有限会社Criar(クリアール) 代表取締役 藤代 聡氏
コーディネーター 株式会社タンク 代表取締役社長 増田 紀彦氏
2日目Aステージ、パネルディスカッションのテーマは「会社員が起業に成功するコツ。私はこうやって起業した」。
3人のパネラーの起業に到るまでの経緯は様々だ。株式会社エ・ム・ズ代表取締役社長 秋田稲美氏の場合は、PCのインストラクターをしながら、同時平行で現在の会社を立ち上げ、やがて新会社に一本化した。さらに設立の2年後、業務内容を思い切って人材のコーチングに転換。
有限会社Criar代表取締役 藤代聡氏は、大手情報出版社に15年勤務した後に退社。遊具+カフェ+図書館+コミュニティをコンセプトとするキッズアミューズメントカフェ「SKIP KIDS」をオープンさせた。連日入場制限をするほどの盛況ぶりだ。
コーディネーターの株式会社タンク取締役社長 増田紀彦氏は、地方新聞社、広告会社を経て、株式会社タンクを設立。始めは主に広告事業を行っていたが、起
業家向け雑誌「アントレ」の立ち上げをきっかけに、独立・起業支援に事業内容を絞り、編集・執筆業のほか、講演会やセミナーを数多く行っている。
一見バラバラの道のりに見えるが、この3人には共通点がある。「会社員経験」があることだ。
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秋田氏の場合は「思いがけない起業」だった。PCのインストラクター時代にアルバイトで請け負ったオープンカレッジの運営事業が成功し、大きくなっ
たことが起業のきっかけだという。会社員経験の延長線上にある起業である。
逆に藤代氏の場合は「満を持しての起業」だった。大手情報出版会社に入社したのも、将来起業するという前提での情報収集や人脈作りのため。事業プランは自
らの父親としての経験から生まれた。親が楽しむ要素と子供が楽しむ要素の両方を兼ね備え、さらに気軽に訪れやすい施設という、ありそうでなかった今のアイ
デアを練り出したのだ。藤代さんは徹底的に市場調査を行い、確かなニーズと成功の見込みが数値レベルで確認できたところで、「SKIP
KIDS」をオリジナルの新ビジネスモデルとして具現化した。会社員経験を糧とした起業である。
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起業までの道筋は違っても、会社員時代と起業後の違いについては2人の意見が一致した。藤代氏いわく、
「会社員時代は、大きな決定は会社が行い、失敗の責任も会社に問われました。事務手続きなども一切自分でやることはなかったですしね。それが起業後はあら
ゆる決定、責任、手続きまで全て自分に委ねられる。これはマイナスに思われるかもしれませんが、「真剣勝負」という緊張感や、一つ一つのハードルを越える
ことによって得られる達成感は心地よく、自分が成長していくのを実感できるんです。これが会社員時代と大きく違うことであり、会社員時代を経験したからこ
そプラスに考えられるんでしょうね」
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もう1点、増田氏が2人の共通点を指摘した。それは、起業時に確認すべき基本事項である「誰に何をどう売るか」が明確な点である。
「人は職業を尋ねられると「魚屋」とか、売る物の名前で答えるでしょう。起業時にもよくあるのですが、この「何を」売るかばかりにこだわりすぎて、肝心の
「誰に」を突きつめない傾向があるんです。だから、ターゲットを明確にしないまま、流行に乗って一時的な商売をし、後で身動きがとれなくなる。
お二人は「大学」「親子」とそれぞれのターゲットが起業前にきちんと具体化されていました。それはこれまでの社会経験を踏まえたからこそ、自然に成し得たことなのかもしれません」
欲
しがる顧客がいなければ商売はできない。当たり前に思える事柄だが、社会の仕組みをよく理解していなければ、重視しない者もいるというのも事実だ。他にも
経験しなければわからない社会の仕組みは山のように存在する。起業家における会社員の経験は「回り道」ではなく「修業の場」と考えるのが正しいかもしれな
い。
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