こんにちは。女性ヘルスケア市場を専門に「リサーチ&コンサルティング事業」と「法人用 女性マーケティングメディアの運営」を行う、阿部です。筆者が運営する会社“ ウーマンズ ”は、ヘルスケア女性マーケティングの会社として、これまでに様々なヘルスケア企業の支援を行っており、「“女性学”と“性差ヘルスケア”に基づいた女性マーケティング分析」と「ナショナルブランドを中心とした豊富な支援実績」を強みとしています。本稿が起業家の皆さんのお役に立てれば幸いです。
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美容領域の起業は、ハードルが跳ね上がっている
ヘルステック、介護テック、医療テック、スポーツテックと各領域で最先端のテクノロジーを駆使したヘルスケアベンチャーが登場していますが、ここ1~2年、特に女性起業家たちの間で大人気なのは「フェムテック」と「ビューティテック」の領域でしょう。
2020年も多くのビューティテック/フェムテックベンチャーに注目が集まりました(当稿は「美容マーケティング」をテーマにしていますので、このうち、ビューティテックについて話を進めます)。
以前から美容領域は女性市場の中でもレッドオーシャンの一つではあり、特に女性起業家にとっても人気の起業領域でしたが、潤沢な資金を調達して新たなテクノロジーで勝負を仕掛ける美容系ベンチャーの参入が相次ぐ昨今は、美容領域における起業・成功のハードルが一気に跳ね上がったと言えます。
【詳細記事】急加速するビューティテック 美容業界を牽引するハイテク商品&サービス事例
脅威となるのは潤沢な資金を持つベンチャーだけではありません。もともと潤沢な資金、豊富なリソース(人材、長年培ってきた知見、研究所や工場など自社で所有する施設など)を持ち、そして全国的・世界的に知名度が高い各ナショナルブランドも、テクノロジーを駆使してこれまでにない顧客体験を次々に提供し、これまで以上に顧客の囲い込みを強化しています。
例えば資生堂。同社は2020年7月に「SHISEIDO」初のブランド旗艦店を銀座にオープン。五感に働きかけるヒューマンタッチとテクノロジーの融合で、顧客にこれまでにない新しい体験・感動を提供しています。以下の動画をご覧ください。
テクノロジーを駆使した顧客体験がどんなものか、体感できるかと思います。すごいですよね、時代は随分と進化しているんだなと感じます。
参考までに国内のナショナルブランド売上高ランキングを以下に記載しておきます。資生堂の他にも各社最先端の商品を開発し、最先端のマーケティング戦略を展開していますので、各社の事例を研究すると色々勉強になると思います。
≪国内化粧品売上高TOP20/単位10億円≫
1位:資生堂(433)
2位:花王(212)
3位:コーセー(155)
4位:カネボウ(141)
5位:P&G(113)
6位:ポーラ(84)
7位:アルビオン(69)
8位:ユニリーバ(67)
9位:日本ロレアル(64)
10位:ファンケル(57)
(出典:化粧品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本 第5版,2018年売上高)
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時代の波に乗れば、急成長・EXITも可能
過激なレッドオーシャンともいえる美容領域での起業はハードルが高いのは事実ですが、うまく時代の波に乗ることができれば、急成長/EXITの未来も当然あります。
例えば、尾川ひふみさんが2007年に立ち上げたミネラルコスメブランド「エトヴォス(ETVOS)」は、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン系投資ファンドのLキャタルトン・アジアに買収され、2020年の美容系ベンチャー界隈で話題となりました。
彼女は2004年に個人事業主としてECサイトを開始し、2007年に法人化して化粧品ブランド「エトヴォス」をスタートさせたわけですが、これは美容領域の起業家にとってはまさにサクセスストーリーなのではないでしょうか。
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起業で成功を掴もうと思ったら、資金調達力や、実行力、(CFOレベルまでは必要ないとしても最低限の)財務分析力など、身に着ける要素は多様にありますが、商品を上市してからは、マーケティング力が大きなカギとなります。
ヘルスケア女性マーケティングを専門とする筆者からは「美容マーケティング」の視点から、皆さんの起業・成長を応援できればと思います。2021年の美容マーケティングで最低限押さえておきたい事項をまとめました。
美容マーケティング5大トレンド 2021年版
美容マーケティングの実践には、「ライフコース視点によるクラスター分析」「生活者調査に基づいたインサイト発見」といった様々な検証・分析の上、戦略立案を行う必要がありますが、ここでは2021年の美容マーケティングキーワードとして、以下5つに絞ってご紹介します。
- パーソナライズは必須要項
- SRHRの潮流を取り入れる
- 感性価値で最高の顧客体験を
- クリーンビューティとサスティナビリティは消費基準に
- ニッチ市場への参入はベンチャーにとって商機
パーソナライズは必須要項
美容領域では、個々の髪質に合わせたパーソナライズシャンプーや、個々の肌質に合わせたフェイスマスクなど「パーソナライズ化」が急速に進んでいます。女性消費者の価値観や好みの多様化が進む中、購買基準の一つは「自分の好みにあわせた商品・サービスか?」という点に。
デジタルマーケティングや広告分野におけるパーソナライズ化とは異なり、商品・サービスそのものをパーソナライズ化することは、コストや労力がかかるため、収益面での課題は大きいのが事実ですが、AIの加速度的な進歩が「商品・サービス領域におけるパーソナライズ化」を急速に推し進めています。
あと2~3年もすると、今よりずっと「パーソナライズが当たり前」の時代になっていると予測できますので、これから起業するなら、パーソナライズ化は視野に入れることをおすすめします。
SRHRの潮流を取り入れる
人気漫画「生理ちゃん」の映画化、性教育本のベストセラーランクイン、緊急避妊薬のアクセシビリティ改善を求める抗議。世界まで見渡せば、#me too運動にフェムテックブーム。こういったヘルスケアトレンドの流れに、「女性性に関する話が最近は随分とオープンになったな〜」と感じる人は多いと思います。
これらはいずれも、いわゆる“SRHR”が包含するトピックであり、女性のセクシャルヘルスを語る上で欠かせないキーワードです。この潮流は日本女性のヘルスケア意識・行動・消費・生き方、あらゆる場面で変化を起こすと考えられますので、メインターゲットが女性となる美容領域での起業をするなら「SRHR」の概念をマーケテイングに取り入れることはマストです。SRHRの解説は長くなってしまいますので、筆者の会社が運営するメディアでご確認いただければと思います。
【詳細記事】待ちわびたSRHR元年、セクシャルヘルスの潮流を女性のヘルスケアマーケへ
感性価値を打ち出す
機能・価格といった商品価値とは別に、五感や情緒といった感性に働きかけ、感動や共感を得ることで顕在化する価値のことを指します。
経産省が、2008年度から3ヶ年を「感性価値創造イヤー」と位置付けていた時期は一次的に注目されていました。その後、「ブランディング」や「デザイン経営」といった言葉は国内市場でも広まってきましたが、それらが実行されているケースは、デンマーク、フィンランド、スウェーデンといったデザイン先進国と比較するとまだ少ないように感じます。
美容市場の中でも特にコモディティ化の代表でもある化粧品業界では、テクスチャー、香り、デザインなどに関する研究が新たな研究領域として注目されていて「機能的価値+感性価値」を組み合わせた製品開発・マーケティングが進んでいます。ちなみに、2020上半期の各女性誌が発表したベストコスメの受賞商品は感性価値にこだわったコスメが数多く評価されました。
【詳細記事】2020上半期ベスコス受賞商品の分析でわかった、最新美容トレンド5つの波
「いまさら感性価値?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外にも、感性価値が置き去りにされている商品や店舗、プロモーションはいまだ多く見かけます。例えば、以下の図のうち、左と右の店舗、皆さん、どちらで買い物したいと思われますか?
特に女性は、感覚的な事を大事にしたり、感情が購買行動に影響を与えやすいので、女性マーケティングでは特に感性価値は重点項目です。
クリーンビューティ
クリーンビューティの概念が女性たちの化粧品選定の基準として広まり出していることもあり、クリーンビューティ(以下の引用文で詳細解説)を反映した商品・サービス開発は必須です(もちろん、今後の地球環境のためにも)。
特に昨今の支持されやすい起業家の気質として「ソーシャルビジネスに真剣に取り組んでいる」「社会課題に果敢に挑戦する」といったこともありますので、そういった意味でもこれから起業するならなおさら、ここは押さえておきたい項目です。
「SDGs」や「エシカル消費」が浸透しつつある中、美容業界では「クリーン・ビューティ」トレンドがこの一年で世界的に加速した。クリーン・ビューティには、今のところは明確な定義はないがおよそ次のような概念。
- 体、環境に対して有害な物質を含んでいないこと
- 天然成分であっても合成成分であっても、自分自身に対して刺激がゼロであること
- 製造に透明性があること
など
最近の消費者は知識や情報が豊富。コスメ・スキンケア選びでは単純に「自分に合う」「効果効能がある」「コスパが良い」などの理由だけでなく、前述の項目も積極的にチェックをする。
そんな消費者たちのマインド変化を受け、美容業界では「クリーン・ビューティ」を消費者への新たな訴求コンセプトに掲げる流れが起きている。例えば資生堂は今年10月、クリーンスキンケアブランドとして知られる米国の「Drunk Elephant(ドランクエレファント)」を買収している。
花王は、クリーン・ビューティの考えをもとにした新スキンケアブランド「athletia(アスレティア)」を来年2月から発売する。
クリーン・ビューティは幅広い年代で広がり始めている美容トレンドだが、「サステイナビリティ」や「ナチュラルビューティ」に対する興味関心が高い、特にミレニアル世代やジェネレーションZ世代に支持されている傾向がある。(引用:ウーマンズラボ「グローバルで加速する「クリーン・ビューティ」2019.12.24)
サプリ市場でも植物由来のカプセル需要が伸びてきています。いわゆる“意識高い系”の女性の場合、サプリを選定する際の基準として「カプセルも植物由来か?」という部分までチェックしています。今から新規開発に着手するなら、クリーンビューティは取り入れたいところです。
同時に、上記にも記載がある通り、クリーンビューティと近い概念ではありますが「サスティナビリティ」を意識した商品開発も重要です。他業界でも広まっている取り組みですが、美容業界では特に進んでおり、多くのナショナルブランドは、サスティナビリティを前提とした開発・販促に着手しています。これから起業するベンチャーもサスティナビリティは押さえておくべきキーワードでしょう。
ニッチ市場への参入
例えば、「70~90代女性向けコスメ」、「介護美容の現場でリピート利用されているヘアケア商品」、「腎機能が低下している女性が重宝する白髪染め」など。市場は小さいかもしれませんが、商機は十分にあります。その理由は以下2つ。
- マスを中心に展開する大手企業はニッチ市場にはなかなか参入しない。ブルーオーシャンの領域のため、ベンチャーや資金力が弱い小規模企業にとってはチャンス
- 既述の項目は、一定数の女性消費者のニーズはあるが、主に上記(1)を理由に、彼女たちの困りごとを解決する商品・サービスがなかなか登場しない。女性消費者のニーズは放置されたままのため、上市した際の顧客獲得の可能性は十分に高い
ぜひチャレンジしてみてください。
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美容マーケティングのコツは常にトレンドを読むこと
本稿ではスペースの問題上、美容マーケテイングの2021年のトレンドのうち、5つのみの紹介にとどまりましたが、本来はターゲット女性や、商品・サービス内容によって取り入れるべきトレンド・戦略は異なります。
市場動向は常に変化していきますので、当内容が2年後3年後も同じかといえば決してそうではありません。業界動向やトレンドは、あくまで事業主軸の周りをサポートするものとして常に変化させて柔軟に対応していくべき要素ですのでまずは事業主軸をしっかり決めてから上記5点を参考になさってください。
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執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 阿部 エリナ【女性マーケティング支援のウーマンズ】女性ヘルスケア市場を専門に「リサーチ&コンサルティング事業」と「法人用ニュースサイト運営」を行う会社を経営。大手企業を中心に支援実績多数。女性マーケティング戦略を強化したい方におすすめ。
プロフィール | 無料オンライン相談受付中
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