エイジテックとは-2025年には300億円市場予測・ベンチャーは参入チャンス

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 阿部 エリナ

国内の女性ヘルスケア市場は、現在フェムテックに関心が集中していますが、世界ではエイジテック(Age Tech)が黎明期を迎え、盛り上がり始めています。今後半世紀で急速に進展する世界的な高齢化を背景に需要は一気に拡大する見込みで、間もなく国内でもエイジテックが活発化していく気配です。また、エイジテックの盛り上がりにより、高齢女性の健康問題に特化した“エイジ・フェムテック”の登場も期待されます。

女性ヘルスケア市場専門の調査研究・情報分析を行う会社(ウーマンズ)を運営する筆者より、エイジテック市場への参入チャンスについて解説します。

エイジテックとは

エイジテックとは、「高齢者×テクノロジー」のことで、高齢者の生活や健康をサポートするテクノロジーや、高齢化社会・高齢社会・超高齢社会における課題を解決するテクノロジーを指します。前述のフェムテックは「女性×テクノロジー」のことで、前回のコラム「フェムテック一大ブーム 女性ニーズから起業の可能性を探る」で詳細を解説していますので、エイジテックとあわせてご覧ください。

エイジテックの市場規模

現在、高齢化の波は日本だけでなく世界中で進んでいます。その背景には人口増加、合計特殊出生率の低下、平均寿命の延伸があります。

(参考:内閣府「令和元年版 高齢社会白書」)

上記の表は世界全体の数字ですので、次に国別の高齢化率の推移を見てみましょう。現在、日本の高齢化率が世界1位ですが、他にもスウェーデン、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、中国、シンガポールなども今後急速に高齢化率が上昇していくと予測されています。


(出典:内閣府「令和元年版 高齢社会白書」)

このように、世界的な高齢化と寿命延伸により、高齢者を支える医療・介護・商品・サービスの需要は近年急速に高まっています。加えて高齢者のネット利用率が年々上昇していることもエイジテックの急成長を支えており、2025年にはエイジテックは世界で2.7兆米ドルの市場へ成長するとの試算(※)があります。(※)Forbes「’Age-Tech’: The Next Frontier Market For Technology Disruption」

エイジテック4つのカテゴリー

エイジテックといってもその領域は多様です。イメージが少々沸きづらいかもしれませんので、4カテゴリーに分類して記載しました。エイジテックの具体的なイメージとしてご参照ください。

高齢者自身が購入する商品・サービス

  • 【ターゲット】
    自分自身で購入・利用する高齢者
  • 【商品・サービス例】
    スマホ、タブレット、歩数計測などの運動アプリ、食事管理アプリ、血圧測定ができるスマートウォッチなどのウェアラブル、ビデオチャット、オンライン診療、家電製品の遠隔操作、ホームアシスタント、ホームセキュリティ、AI健康住宅、など

高齢者のために社会や企業が購入する商品・サービス

  • 【ターゲット】
    医療機関、介護施設、自治体など
  • 【商品・サービス例】
    介護ロボット、AIによる認知サポート、遠隔見守り機器、治療データ、オンライン診療、など

高齢者と若年層の間で利用される商品・サービス

  • 【ターゲット】
    高齢者と、子・孫世代などの若年層
  • 【商品・サービス例】
    ソーシャルギフト、ビデオチャット、ホームアシスタント、など

将来の高齢者(現時点での若年層)が購入する商品・サービス

  • 【ターゲット】
    若年層
  • 【商品・サービス例】
    将来の健康リスクに備えた健康管理デバイス、遺伝子検査、など

引用:ウーマンズラボ「Age Techのビッグウェーブがやってくる! 世界が注目する急成長市場

エイジテックの事例

カテゴリー4分類が分かったところで、具体的なプロダクト事例を見てみましょう。

国内ではフェムテックやビューティテックほど、エイジテックはまだ盛り上がりを見せていませんが、今後の成長需要をつかむ、または取り残されたままの高齢者の健康問題を解決しようと、様々なベンチャーが画期的なプロダクトを開発しています。

例えば、米国の高齢者団体AARPが開発したVRアプリ「Alcove(アルコーヴ)」。若者を対象としたVRが主流の中、高齢者を対象にしたVRアプリということで、話題を集めています。

ヘッドセットを装着すると、自宅や屋外で人と交流したりバーチャル旅行を楽しめる。運動プログラムも充実していて、ガイド付きのヨガ、筋トレ、瞑想、呼吸法の練習など様々だ。バーチャルペットと遊んだり、クラシック音楽を聞くこともできる。圧倒的な没入感で高齢者もすっかりハマるようだ。ユーザーレビューの評価は高く、子どもが「高齢の母に使わせたい」という声も。(引用:ウーマンズラボ「Age Techのビッグウェーブがやってくる! 世界が注目する急成長市場

テクノロジーの進化は多くの人たちに恩恵をもたらしていますが、その多くは若年~中年世代を対象としていて、高齢世代を対象にしたものになると、途端に数が激減します。しかし当事例からも分かるように、テクノロジーの進化は、解決が難しくさらには多くの課題が山積している高齢世代にこそ、大きな恩恵をもたらすものであることが分かります。

エイジテック市場に乗り込まない企業 ベンチャーは参入チャンス

以上、ざっくりとではありますがエイジテックの可能性についてみてきました。が、しかし国内ではこの市場への新規参入を見送る企業が多いのも実際です(医療・介護業界は除く)。

なぜか?一番の理由は「高齢女性が謎めいた存在」だからです。詳細は筆者の会社ウーマンズが運営するメディア「2025年の高齢者市場は101兆円、それでも乗り込まない企業の理由」に記載していますのでご覧頂きたいのですが、医療・介護領域を除いた高齢者市場は実はいまだにブルーオーシャンであること。

それゆえ、高齢女性のニーズ・不便は取り残されたままであることを踏まえると、これから起業や新規事業立ち上げを検討されている企業の方は、ぜひ高齢者市場への参入/エイジテック開発の検討をおすすめします。

 

<筆者からのお知らせ>ヘルスケア事業者・医療従事者が、女性ヘルスケア/フェムテックをテーマに交流・ディスカッション・学べる場を開設しました。イベント情報を受取りたい方は、ぜひFollow us

 

エイジテック領域の起業・事業開発で注意したいこと

高齢者市場への参入/エイジテック領域の開発を検討する際、気を付けたいことは2点あります。

高齢者=有病・元気がないと決めつけない

ひとつは「高齢女性=有病者」と決めつけないこと。今の高齢女性は心も体も元気で、“60代以上はおばぁちゃん”という考えは、もう昭和の話。今は、60代・70代も「女子会」と称し友人と集い、メイクやファッションを楽しんでいます。80~90代でインスタや英会話の勉強、ゲームアプリを楽しむ女性たちもいます。

“高齢者の若返り”は実際の調査結果からも確認できます。令和2年厚生労働白によると、男女ともに65歳以上の全年齢階級において、身体機能がこの20年間で飛躍的に向上していることが明らかになっています。1998年~2018年の新体力テストの推移を見ると、「65〜69歳」「70〜74歳」「75〜79歳」の全年齢階級で男女ともに点数が向上しており、特に女性の方が大きく点数を伸ばしています。


(出典:厚生労働省「令和2年厚生労働白書」)

また歩行速度に関しても若返りの傾向が見られます。以下図は1997年と2006年の歩行速度を比較したもの。約10年間で、「65〜69歳」「70〜74歳」「75〜79歳」の全年齢階級で歩行速度が上がっています。

何か持病や不調は抱えていたとしても介護を受けたり入院するほどではなく自立した生活を送っている、あるいはもともと持病も不調もなく心も体も元気、といった高齢女性は以前と比べるとずいぶんと増えています。

「高齢女性=(重度な)有病者」という前提をなくした上で、商品・サービス設計を行うと良いと思います。


(出典:厚生労働省「令和2年厚生労働白書」)

デジタルデバイド問題を考慮する

2つ目は「デジタルデバイド問題(ネットやパソコン等を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差のこと)」。「高齢者のネット利用率が年々上昇していることもエイジテックの急成長を支えており~~」と前述しましたが、とはいえ、やはり私たち現役世代のように大多数がデジタルを不便なく使いこなせる、というわけではありません。

既述の「①高齢者自身が購入する商品・サービス」領域のエイジテックを検討している場合は、特にデジタルデバイド問題は念頭に置いておく必要があります。

今後、フェムテック同様にエイジテックも市場全体で盛り上がっていくことを期待しています。

女性ヘルスケアのマーケット情報

筆者が運営する会社では週1回、フェムテックや女性ヘルスケアのマーケット情報、消費者分析情報をメルマガでお届けしていますので、ぜひ日々の情報収集のお供にお役立てください。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 阿部 エリナ【女性マーケティング支援のウーマンズ】
女性ヘルスケア市場を専門に「リサーチ&コンサルティング事業」と「法人用ニュースサイト運営」を行う会社を経営。大手企業を中心に支援実績多数。女性マーケティング戦略を強化したい方におすすめ。
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ドリームゲートアドバイザー 阿部 エリナ

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