不要なモノが必要な人のもとへ――。
ICTを活用した新トランクサービス

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 佐々木 正孝  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

フリマアプリ全盛の現代に即した、
クラウド収納サービスを提案

展開している事業の内容・特徴

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「断捨離」や「ミニマリスト」など、モノに囲まれた暮らしからの脱却を目指す動きが注目を集めている。ネットオークションやフリマアプリも若年層を中心に浸透し、個人間でのモノのやり取りが活発になってきた。

トランク株式会社が始動させた「trunk」は、そんな現代に即したクラウド活用の収納サービスだ。カジュアルに使えるよう、アプリという形態を採用。タップ操作を進めるだけで段ボール1箱あたり月額500円という低価格で「使っていないが大切なモノ」を集荷依頼できる。

集荷されたモノは1点ごとに撮影され、アプリ上から閲覧可能。温度・湿度が管理された倉庫で適切に管理され、手数料を払えばモノは1点単位でいつでも取り寄せられる。しかし、「trunk」は単なる集荷・保管にとどまらない。同社の松崎早人代表は「保管の次に提供するのは預けたモノの運用。具体的には売買のサービスです」と説明する。

アプリに実装されているのは「売る/あげる」「買う/もらう」という機能だ。預けたモノは簡単に出品でき、他のユーザーが出品したモノを買うこともできる。モノの画像は「trunk」登録時に撮影してあるので、出品登録もノンストレスだ。

「別途送料は必要ですが、こちらで梱包して指定先に送付しますから、面倒な発送手続きも不要です。住所や電話番号のやり取りが必要ないので、ユーザーの個人情報が守られるというメリットもあります。モノの個人間取引をより手軽にすることで休眠アイテムの活性化を図り、リユースへ円滑な導線を提供できればと考えています」

「使っていないモノ」が「必要とされるモノ」に変わる。ICTを活用し、スマホというデバイスに進出した「trunk」は収納サービスのネクストステージに到達した。

必要なモノが、必要な時に、必要な人へ。
ICTが創り出す新しいモノの流れ

ビジネスアイディア発想のきっかけ

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同社は2014年の創業以来、トランクルーム情報の比較検索サイト「@trunk」、トランクルームへの運搬に特化したサービス「楽トラ便」などを開発、提供。トランクルーム関連事業のノウハウ、知見をストックしてきた。

「自宅の外にモノを預ける外部収納サービスの市場は現在600億円規模ですが、2009年から毎年10%以上の伸び率を示してきました。需要と供給が共に右肩上がりの成長市場です。シェアリングエコノミーの広がり、そして、先行する欧米市場を見てもさらなる伸びしろが期待できるでしょう。ビジネスを始めるのは今しかない、という思いで『trunk』を始動させたのです」

休眠物のリユースをミッションにしたのは、松崎代表の強烈な体験があったからだ。松崎氏は2011年の東日本大震災を見てやむにやまれぬ思いで東北へ向かい、その直前には親族の死を経験した。極限体験を経たことで「モノの流れ」に思いを馳せたという。

「被災地は甚大な被害に見舞われ、家や家族を失って身一つになった方が震災で打ちひしがれた姿を見て、何か人のためになることをしたいという思いが腹の底から湧いてきたのです。そして、震災の前年に経験したのが父の急死です。一人の人間が亡くなるだけで使っていない遺品が山のように出てきた。家族としては困惑して、『面倒だから全部処分してしまおうか』という話にもなった。モノを失くして途方に暮れている人があり、一方でモノの処理に困るシチュエーションもある。持たざる人・持てる人のマッチングで何かができれば、と考え起業しました」

必要なモノが、必要な時に、必要な人へ届けられるサービスを目指して。流通やシェアの仕組みを考え、倉庫、運送業界の研究を重ねた。物流業界のビジネス経験は皆無だが、それが強みにもなっている。

「倉庫会社から遊休スペースを借り、集荷と配送は運送業者に委託しています。ICTを活用することでシェアリングエコノミーのビジネスモデルを作ることができました。ただ、大事にしてきたのは人の思いに寄り添うこと。モノの休眠状態を解消することをミッションとして、提供していきたいサービスがまだまだあるんです」

当面の目標は保管数100万箱。
物量がサービスの質を向上させる

将来の展望

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アプリ「trunk」は2017年2月にリリース。ユーザー数は非公開ながら、順調に増えているという。同年9月にはNTTドコモとの業務提携を発表。ドコモ「dリビング」の会員はtrunkのサービスを無料で利用(月1箱)できるようになった。認知度をアップさせ、同社が掲げる数値目標「保管数100万箱」の早期達成をねらっている。

「量は質に転化する」という言葉とおり、アイテム数を集めることで個人間売買にもさらなるメリットが期待できる、と松崎氏。

「ECサイト、ネットオークション、フリマアプリも企業とユーザー、あるいはユーザー同士の1対1の関係で取引しています。しかし、私たちの『trunk』はそれらをシャッフルしてマッチングできるんです。例えば、書籍類。数十巻単位の長編作品は買取サービスには不向き。歯抜けがあったり、単巻だったりしたら意味をなさなくなるからです。しかし、私たちはいろんな人が出品したマンガを集め、全巻セットとして販売できます。モノ一つひとつをデータ化して保管・管理するクラウドサービスならではの長所でしょう」

今後は、個人の休眠物だけではなく「何らかの意味を持ってモノが集積しているスペース」にコミットし、新事業を提案していく構えだ。「不要になったモノ」の流通先は国内に限定せず、途上国などにルートを伸ばしていく構想もあるという。

「鉄道会社と連携して、一定期間を過ぎた忘れ物・落とし物を市場に流通させたり、家電修理工場やクリーニング会社と提携して、預けたもののメンテナンスをワンストップでできるようにしたり。休眠物をより回転しやすくするためのマッチングに注力しています。重視しているのは、参加したユーザー、事業者のすべてに収益が分配される仕組みを作ること。余裕があれば、その先には困っている国に届けるという考えもあるでしょう。一時の儲けを考えるのではなく、休眠物のサイクルを持続的なものとして回していきたい、という思いがあります」

モノ・リソースの空きを可視化し、メリットとして幅広く社会に還元していくために――「trunk」が創出するサイクルは着実に回転を始めている。

株式会社トランク
代表者:松崎 早人 氏 設立:2015年
URL:http://www.trunk-inc.com/ スタッフ数:9名
事業内容:
事業内容:物品収納サービス「trunk」の運営

当記事の内容は 2017/11/21 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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