テック系に関する注目すべき裁判例紹介

テック系に関する注目すべき裁判例紹介

関連分野リーガルテック,AI

裁判例の内容(東京地裁平成28年7月25日判決)

事案概要

事案は,ある法人が,自らのサービスを導入しようとする顧客に対し,当該顧客と従前の担当者との間の委託契約の解除手続きを代行していたところ(なお代行の方法としては,解約通知書の雛型(受託者欄,解除年月日,解除対象契約の締結日,対象事業場の所在地及び名称のみ空欄)を提供し,顧客が空欄を補充し,補充した契約通知書を郵送したという事案です。

注意すべき点

ここで注意すべきは,穴埋め補充式の通知書の雛型を顧客に提供し,顧客に代わって取引先に郵送するサービスを「法律事件」に関する「法律事務」を取り扱ったと認めている点です。

 

裁判所は以下のように判示しております。

 

「被告は,〇〇システムサービスを導入しようとする客に対するサービスとして,当該客と従前の・・・との間の委託契約の解除手続きを集約して代行していること,本件契約通知書には,従前の受託者との間の委託契約を解除する旨があらかじめ印字されており,必要事項を書き込めば解約通知書として完成する書式であることに照らせば,第三者間の契約解除という法律効果が発生する本件契約通知書の書式については,被告が作成したものと認められる。

その上で,被告は,空欄部分や記名押印部分を記入することによって完成した,第三者・・・が作成名義人となる本件解約通知書を・・・に代わって原告に郵送し,その結果,・・・と原告との間の原告契約が解除されるという法律効果が発生したものである。かかる事情に照らせば,本件行為は,単に本件解約通知書を郵送したという事実行為ではなく,法律上の効果を発生,変更する事項を保全,明確化する行為といえる。したがって,被告は,「法律事件」に関する「法律事務」を取り扱ったと認めるのが相当である。」

(判タ1435号215頁)

 

そもそも弁護士法72条は,以下のように規定しております。

 

「(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は,報酬を得る目的で訴訟事件,非訟事件及び審査請求,再調査の請求,再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定,代理,仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い,又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし,この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は,この限りでない。」

つまり,弁護士または弁護士法人以外の者が,

報酬を得る目的で,法律事件に関して,法律事務を取り扱うことを業とすることを禁止していますが,
本件では,リーガルテックの領域で活用が十分予想されるような通知書の雛形の提供行為及び付随サービスについて弁護士法に違反すると指摘されており,今後のリーガルテック領域において,極めて注意すべき裁判例と言えます。

 

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