新事業創造カンファレンス
第三部レポート

第三部/大企業からイノベーションを興すには

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プレゼンテーション/イノベーション100委員会についてのご説明

プレゼンテーション/イノベーション100委員会についてのご説明

【概要】
イノベーション100委員会座長である安藤国威氏(JIN常務理事、元ソニー株式会社 代表取締役社長)より、イノベーション100委員会についての説明を行った。

スピーカー

【スピーカー】
イノベーション100委員会座長 安藤国威氏

第4次産業革命の中での日本と日本企業の存在感の変化
~世界で日本と日本企業の存在感が薄くなっている現状において、再び日本の存在感を示すためには大企業が果たすべき役割が大きい~

  • ドイツ主導のIndustrie4.0と、GEを主体とした米国のIndustrial Internet Consortium(IIC)の2つが、世界で圧倒的な影響力を示している。
  • 2016年9月にGoogleやIBM、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブックの5社が主体となり設立されたPartnership on AIは、米国がAIの分野で世界の主導権を握っていくことを加速するための取組みである。
  • グローバルレベルのコンソーシアムを主導する役割は、大企業が担う必要がある。
  • 日本企業の技術レベルの高さを考えると、優れたビジネスモデルの構築という面において、日本企業は米国企業に遅れを取っている。
  • 今こそ、ドイツのように日本の民間企業が頑張るべき時が来ているのではないか。

イノベーション100委員会の設立経緯と活動内容
~日本をInnovation Nationにするという志を掲げ、先駆的なイノベーション活動を実践する日本の大企業経営者からなる「イノベーション100委員会」を設立した~

  • 日本をInnovation Nationにするという志を掲げ、日本の大企業100社をInnovation oriented styleに転換できれば、その目的を実現することができるのではないかという仮説を基に、イノベーション100委員会を設立した。
  • 2015年度はイノベーションに関して先駆的な活動を続けている日本の大企業経営者17名に経営委員会に参画いただき、さらに、2016年度は現時点で10名の経営者に参画を表明いただいて活動を進めている。
  • 委員会では、少人数の経営者座談会を開催し、経営者に自社のイノベーション活動のビジョンや理念、具体施策を、自らの思いを込めて語ってもらう機会を設け、そこで語られた経営者の生きた知見をもとに、「イノベーションを阻む5つの課題」と「イノベーションを興すための経営陣の5つの行動指針」を作成した。
  • 座談会の中で経営者委員全員が語った、変革期にはトップの強烈なリーダーシップが不可欠という発言をもとに、イノベーション100委員会レポートのタイトル『企業にイノベーションを興すのは誰の仕事か?』という問いと、その答え『それは、経営者の仕事である。』につながった。

イノベーションを興す上での日本企業の強み、経営者とイノベーション100委員会の役割
~日本企業の底力は経営者が社会的価値を考えて行動していることであり、社会的価値創出に熱い思いを持つ経営者コミュニティをつくりイノベーションで世界を変えていくことが委員会の意義である~

  • 経営者委員が共通して語ったことの1つが、イノベーションを興し続けることは企業の事業活動そのものであり、既存事業を含めてイノベーションを興し続ける、事業を変革していくことが本来の企業の役割であり、それを推進することが経営者の役割であるということである。
  • もう1つが、経営者委員のイノベーション活動の原点にあるのは社会的価値の創出であるということ。野中郁次郎先生が『日本企業の底力は、経営者が社会的価値を考えて行動していることだ』と指摘しておられるように、これこそがシリコンバレーやほかの国のイノベーション活動とは全く異なる、日本独自の価値観である。つまり、経営者も社員も含めて、社会に価値を提供したいという価値観を共有しているということが日本企業の特徴であり、強みでもあると考えている。
  • イノベーションにより新しい価値を生み出し、それをグローバルレベルでの社会問題の解決に結びつけることが企業の役割である、と世界で認識されるようになってきている。そのような中で、日本企業の考え方こそが、日本が世界の中で再び存在感を高めていく、大きなファクターになるのではないか。
  • 2015年9月の国連持続可能な開発サミットで採択された、2030年までに達成すべき17の持続可能な開発目標がある。この実現には、政府の役割以上に、社会的価値の創出に対して熱い思いを持つグローバル企業がグローバルレベルで解決していくことが重要であり、そのためには、国や組織が連携し、コミュニティづくりを進めることが必要になる。ここにこそ、イノベーション100委員会を結成した意義がある。
  • イノベーション100委員会というイノベーションで世界を変える経営者コミュニティの活動により、『日本をInnovation Nationにする』という高い志が着実に実現に近づくものと信じている。

パネルディスカッション/企業からイノベーションを興す上で経営者の役割とは

パネルディスカッション/企業からイノベーションを興す上で経営者の役割とは

【概要】
「企業からイノベーションを興す上で経営者の役割とは」では、4名の経営者委員をお招きして、経営者として大切にしている思いやこだわっている行動、推進している取組み、経営者にしかできない役割について伺った。

スピーカー

【スピーカー】*写真左から
日本電気株式会社代表取締役会長 遠藤信博氏
日本取引所グループ取締役兼代表執行役グループCEO 清田瞭氏
第一三共株式会社代表取締役社長兼CEO 中山讓治氏
コニカミノルタ株式会社代表執行役社長 山名昌衛氏
【モデレーター】
JIN専務理事 西口尚宏氏

自己紹介

山名氏
コニカミノルタ
(株)山名氏
(以下、山名氏)

失われた20年に対する悔しい思いを持ちながら、世の中に貢献する課題解決にグループを挙げて取り組んでいる。イノベーション100委員会の趣旨に賛同し、経営者として日本の産業界の次の時代の発展のために活動したい。

中山氏
第一三共(株)
中山氏
(以下、中山氏)

製薬業界は患者さんを治す喜びを共有できる恵まれた産業だが、同時にイノベーションに100%依存している業界。健康は国のインフラであり、国民の皆様の理解なしではこの産業が伸びることはない。医療の問題、抱えている現状をお伝えしたい。

清田氏
日本取引所グループ
清田氏
(以下、清田氏)

日経平均株価は1989年の最高値から大きく落ちている一方で、時価総額は昨年に最高値を記録した。日本企業も新しい企業がイノベーションを起こしているのだ。イノベーションを生み出す素地について話をしたい。

遠藤氏
日本電気(株)
遠藤氏
(以下、遠藤氏)

人間社会に対して価値を創造してご提供するのが企業の役目であり、経営の観点から一番重要なことは、価値創造とその場の継続であると考えている。企業が継続的に価値を創造するということは、イノベーションそのものである。

社会にどんな価値を生み出すことが持続可能な経営に繋がるのか
~人間のクオリティや豊かさにおける根源的な課題を発見し、解決すること(山名氏)~

山名氏
山名氏

何のためにイノベーションをやるのか、が大切である。根源的には遠藤さんのおっしゃった人間社会。人間のクオリティや豊かさにおける根源的な課題を発見することが重要ではないか。

中山氏
中山氏

製薬会社の場合、価値は明確で、今病気にかかっている人を治せるかが原点である。一方、持続的な経営において問題となってくるのが価格の問題である。国民が、どういう医療を自分たちで持ちたいのか選択していかなければならない段階にある。

遠藤氏
遠藤氏

安全・安心・効率・公平を軸とした「社会ソリューション」を、ICTで作り上げることによって大きな貢献をしたいというのが弊社の共通認識である。この方向感でICTを磨くとともに、その技術でどれだけ人間社会を豊かにできるかを常に考えている。

山名氏
山名氏

コアコンピタンスとなる技術や顧客基盤を組み合わせて、足りないものはオープンにして課題解決をしている。顧客起点で、顧客も気づいていない課題を洞察し、顧客やスタートアップ、大学、政府とエコシステムを作り一緒に解決していくことが重要である。

清田氏
清田氏

投資の世界での持続的な企業価値の向上と、ビジネスとして社会に与える価値という2つのものが一体化してきていると感じている。長期に投資してリターンを求める投資家は多数いる。取引所としても、将来の企業価値向上のために長期の資本をリスクマネーとして供給するファンクションが重要と思っており、サステナブル投資に興味を持つ投資家を呼び込むための市場運営をしたい。

持続的成長をどう実現するか、自社に足りないものは何か
~人間の本質的欲求を理解し、将来を推定する能力が重要(遠藤氏)~

遠藤氏
遠藤氏

イノベーションを継続的に起こす努力、仕組み、文化が企業の中にあることが重要である。またいかに優れた技術であっても、人間社会にとって価値がなければイノベーションとは言えず、人間の本質的欲求を理解することが重要である。更に欲求の動向から、今後求められる領域を推定する能力が重要である。

山名氏
山名氏

世界の5極でビジネスイノベーションセンターを立ち上げた。トップから現場まで全員、当社のカルチャーに縛られない外部人材に任せた結果、世の中の技術をうまく組み合わせるなど、これまでできなかったことができるようになった。このように、最初から世界に出て世界の人材を登用するプロセスを作ってきている。

中山氏
中山氏

創薬で成功する条件は最先端のサイエンスをどう見出して信じるか、それを支える人をいかに社内で持つかだ。一方で社内だけに拘らない。サイエンスと知恵が結びついたときに画期的なものができるが、知恵者は世界中にいる。サイエンス、人材、リスクマネジメント、アライアンスを駆使し、繰り返しながら千に一つ、万に一つの成功を継続して実現するというのが我々のアプローチである。

清田氏
清田氏

取引所では、人手で行われていた売買を全てコンピューターに置き換えた。既にあるものをどう使うかもイノベーションであり、イノベーションは見えないところに沢山ある。フィンテックの波も大きな時代の変化をもたらすと考えており、取引所でも資本市場のインフラ競争力を高めるために必要なミッションと捉え、例えば他社と協働でブロックチェーンの実証実験を行っている。

外部との連携でパートナー企業に期待すること、留意してもらいたいことは何か
~目的と価値の共有、相手の立場を考えたコミュニケーション(中山氏、山名氏、遠藤氏)~

中山氏
中山氏

創薬の世界では、いかにイノベーティブなベンチャーを見つけて、そこと連携できるかが重要だ。ベンチャーは持っている化合物を絶対的に信じており、子供のように思っている。それを大企業側が一方的に切り捨ててはならず、上から目線ではなく、相手の立場や気持ちをわかった上でコミュニケーションを行っていくことが大事である。

山名氏
山名氏

連携の前に、成し遂げたいこと、目的を共有することが重要。そこに到達するまでのやり方には違いがある。お互いの違いを認め、相手の立場になって、なぜこだわるのかを聞いた上で、しっかりコミュニケーションをする必要がある。最初はできるだけ目的を俯瞰して、その後はトライしてみないとわからない部分も多い。日本のパートナーでも海外のパートナーでも同じであり、共通のやり方が必要である。

中山氏
中山氏

もう一つ大事なのは、気質が合うかが大事である。データに対して真摯に向き合っているか、安全性を十分尊重しているか、何より患者さんをどこまで意識して仕事しているかが一番大事なベースの価値観であり、そこが外れていると上手くいかない。

遠藤氏
遠藤氏

協力関係を結ぶこと自体に意味があるわけでなく、新たな価値を創り出すことに意味がある。価値の共有が大事である。何のために、どのような価値を一緒に創り出すのか、というところを両社がしっかり腹落ちして共有していなければ、紆余曲折を乗り越えることはできない。AI分野における弊社と東京大学の連携も、ビジョンの共有に非常に大きな主眼が置かれており、人間の倫理観とAIの関係も含めて、相互にビジョンを共有して進めようという話になっている。人間社会はどうあるべきかから外れては、継続的な企業の発展は期待できない。

グローバルに事業展開する上で、留意していることは何か
~人材の活用、顧客と市場の仕組みの理解(山名氏、遠藤氏、中山氏)~

山名氏
山名氏

グローバルな事業といっても、結局は人材がサービスを作る。日本人であろうとなかろうと人材の力をいかに引き出すかが経営である。日本人以外の人材が強いものとして、構想力とデータ解析やディープラーニングなどのサイバー技術があり、これらは日本人の課題と考えている。ただし、人間社会の課題を解決するにはサイバー世界ではなく、最後は現実のフィジカルな世界を良くしていかなければならない。そのために、日本の製造業はIoT時代にふさわしい進化したデバイスを作る力を持つ必要がある。現場でリアルタイムかつ高速に課題を解決する、そのための製造業の将来のあり方を考える必要があり、その際には日本人のいいところや伸ばしたいところを組み合わせて考えることが重要になる。

遠藤氏
遠藤氏

ICTソリューションの世界では、特にAIの活用は倫理観が重要なファクターになる。倫理観は宗教に根ざすものでもあり、グローバルに倫理観を理解することが重要である。また、新興国と先進国では要求されるものが違う。基本的なところは人間の本質であるため同じだが、必要とされるもののレベル感が違う。グローバルな顧客をどう意識的に分類してソリューションを提供するかが重要である。

中山氏
中山氏

市場の仕組みを理解することである。日本では同じお金で名医に診断してもらえるし、いい薬も使えるが、世界的にはこれは特殊である。国ごとに市場の仕組みを意識しながら市場導入をしていかなければビジネスとして成り立たなくなる。

イノベーションを興すための経営陣の5つの行動指針で、特に大切にしているものは何か
【イノベーションを興すための経営陣の5つの行動指針】
指針1「変革ビジョンの発信と断行」 変化を見定め、変革のビジョンを発信し、断行する。
指針2「経営の増築」 効率性と創造性、2階建ての経営を実現する。
指針3「価値起点の仕組み整備」 価値起点で事業を創る仕組みを構築する。
指針4「挑戦の奨励」 社員が存分に試行錯誤できる環境を整備する。
指針5「越境の奨励」 組織内外の壁を越えた協働を推進する。

遠藤氏
遠藤氏

指針3「価値起点の仕組み整備」である。価値起点で事業を作ることが企業にとって重要であり、これが原点である。その意味では、指針1,4,5は仕組み、指針2「経営の増築」はマネジメントのあるべき姿と捉えており、原点の指針3、次に指針2を大切にしている。指針1,4,5はマネジメントの下でどういう仕組みを作るかという観点で見ている。

清田氏
清田氏

指針1「変革ビジョンの発信と断行」が経営者にとって重要である。新しいイノベーションを興すための変革のビジョンを経営者が発信し、それに対して社員がどう反応するか、その仕組みまで作らなければ価値が無い。その意味で指針4「挑戦の奨励」と指針5「越境の奨励」が非常に重要である。社員の思考を広げてイノベーションを推進させるため、新規事業を経営陣に直接提案する取組みを現在行っている。

中山氏
中山氏

指針2「経営の増築」と指針4「挑戦の奨励」である。イノベーションの核になる人を他のチームとうまく共存させることが大事だ。そのために指針4はかなり意識しており、尖がった人を残しながら、かつ全体がうまく回るように気をつけている。

山名氏
山名氏

どれも大事である。変革はマインドセットである。社内が変わることがゴールではなく、お客様さまの変革まで実現しないといけない。そういう会社のカルチャーを作りあげることが重要である。同時に、ビジネスは結果を出さなければならない。それぞれの領域でオーナーシップ、俺がやらないと誰がやるという気持ちを持たせることが重要である。

会場へのメッセージ

山名氏
山名氏

失われた20年と話したが、日本人のポテンシャルは衰えていない。皆さんが自分で立ち上がって、あきらめず高みを目指してやりきってほしい。また、何もかも一人でやろうとせず、オープンにやることも重要。オープンにやれるための胆力を持った人間力を磨いていけば、すごいポテンシャルがあると思う。頑張ってほしい。

中山氏
中山氏

基本は価値観であり、自分が何を成し遂げたいかを常に確認しなければいけない。なぜかというと、ベンチャーやイノベーションは必ず失敗する。しかし、失敗するまでとことん信じてやらなければ、本当の成功は見つからない。そのとき、自分は何の為にやっているのかが支えになる。是非あなたの夢を信じて頑張ってほしい。

清田氏
清田氏

イノベーションは難しそうに見えるが、世の中に存在しない新しいものを生み出すのがイノベーションだと考えるから難しいのである。今すでに存在しているもの、技術、知識、議論をどう使うか、使い方が新しいということも十分イノベーションである。誰でもイノベーションは身近にある。ふとしたときに何でもないアイデアをつないで、思いつくこともあるだろう。それを拾い上げて積み上げていくことが経営者として大事だと思っている。

遠藤氏
遠藤氏

いつもプレゼンテーションの最後にStrong Will and Flexible Mindという言葉を伝えている。例えばセンシティビティを持てと言われるが、生まれながらにセンシティビティを持っている人はいない。何かに注力し、なんとしても価値を創りあげたいという強い意志を持っていれば、自然とセンシティビティが磨かれる。価値創造に対する強い意志を持ち続けること、そして考え続けることが重要である。また、心の柔らかさは、色々な人の意見を聞く能力を高め、かつ様々なところにコンタクトする能力を高める。そういう意味で、いつも皆様にはStrong Will and Flexible Mindと申し上げている。是非この2つを意識して、価値創造を成し遂げていただきたい。