×
事例一覧 > ボンサイラボ株式会社 x THK株式会社

提携事例

「週刊 マイ3Dプリンター」の部品供給で提携

ボンサイラボ株式会社(以下、ボンサイラボ)はTHK株式会社(以下、THK)と提携し、ボンサイラボが組み立てキットを監修するデアゴスティーニ・ジャパン社の「週刊 マイ3Dプリンター」にTHKからシャフト(軸)、リニアブッシュ部品の供給を受けている。「週刊 マイ3Dプリンター」は2015年1月5日に創刊され、全55号で完結したが、好評のため20号分が延長され、第75号まで販売が予定されている。ボンサイラボは「週刊 マイ3Dプリンター」の企画段階から参加、設計図の提供、1~55号までの構成、マガジンによる組み立て指導、原稿チェック、全部品の仕様指示、品質確認、国内メーカー品のサプライヤーを担当している。

THKの背景と狙い

THKは1971年に創業された機械部品メーカーで、メカトロ関連製品、自動車部品、戸建住宅から高層ビルまで対応可能な免震システムなどを開発・製造・販売している。なかでも、1972年に世界で初めて製品化に成功した直線運動案内(Linear Motion Guide、略称LMガイド)と呼ばれる機械部品では、国内70%、世界で50%超と圧倒的なシェアを誇るトップメーカーであり、JAXAなどへも部品を納入している。

THKの事業規模は2015年3月期で2176億円だが、そのほとんどがB2B市場であり、設備投資需要に左右される事が課題であった。

近年はダイソンやiRobotなど、従来の家電とは異なる製品がヒットする傾向にあり、ユーザーのライフスタイルが変わるような製品、消費者が気づいていなかった潜在的な需要を喚起する斬新なプロダクトが求められている。「未来」的な生活がいよいよ実現しつつある現代において、THKとしても新たな事業領域としてコンシューマー向け市場への参入を検討していた。

ボンサイラボの背景と狙い

ボンサイラボは2013年12月に創業されたベンチャー企業。ジャパンメイドの超小型3Dプリンタ「BS01」を開発・販売し、3Dプリンターの世界では知られた存在だ。代表の大迫 幸一氏は自動車メーカでプランニングを担当した後、外資系のコンピューターベンダーを経て、3Dプリンティング事業で起業を果たした。

大迫氏が3Dプリンティング領域での起業を決意したのは、同分野の可能性の大きさにある。3Dプリンターや市場自体がまだ未成熟だが、これが普及すれば日常生活に広く根付くものになる。しかし、そのためには様々な課題が山積している。その一つは「標準化」がされていないという状況だ。「週刊 マイ3Dプリンター」の企画に参加、監修を請け負ったことも、3Dプリンター市場自体の拡大もさることながら、3Dプリンターの標準化を日本発で確立したいという志が根底にあった。

提携内容

THKの星出氏とボンサイラボ大迫氏がはじめて商談をもったのは、2014年9月の第2回ILS。実は以前からボンサイラボからTHKの営業支店に声をかけており、提携を模索していた。しかし、通常取引きの範疇ではTHK上層部までなかなか話が進まないという現実があった。

そこで第2回ILSに参加する事になったボンサイラボでは、たまたま参加する大手企業側にTHKがあった為、商談リクエストを行った。THK側もコンシューマー市場への参入という課題があったため、3Dプリンター事業を進めていたボンサイラボに興味を持ち、商談が成立。

商談に参加したTHK常務執行役員の星出 薫氏は、大迫氏から営業支店へすでにアプローチしている事や、「週刊 マイ3Dプリンター」の企画、そして大迫氏の持つ3Dプリンターの未来・ビジョンに多いに共感し、共同で製品開発を進める事になった。THKとしても新製品の準備を進めていたため、タイミングとしてもピッタリであった。

「週刊 マイ3Dプリンター」は毎号雑誌とパーツが届き、それをユーザーが組み立てることで3Dプリンターが完成する。大迫氏によれば、ユーザーの組み立てやすさ、パーツそのもの精度・強度などを考慮して設計をしなければならず、3Dプリンター製品を市販するよりも難しいプロジェクトであった。しかし、安かろう悪かろうではユーザーは購入しつづけてくれないため、部品の質は落とせない。特に基幹部品である直交軸の精度は、3Dプリンター自体の品質を左右する。そのため、世界でも圧倒的シェアと技術力を持つTHKの部品を使う事にこだわった。

デアゴスティーニ・ジャパンとしてはコスト面では安い海外製品を採用したいという意向もあったが、THKとボンサイラボはタッグを組み、デアゴスティーニ側との交渉にあたった。とくに大迫氏は3Dプリンターの規格自体が標準化されていない事に触れ、「週刊 マイ3Dプリンター」で採用した規格が、これからの3Dプリンターの標準になるという気持ちで臨むべきだと説得を続け、ついにTHKの部品を使う事が決定した。

THK×ボンサイラボの提携ストーリー

ILSパワーマッチング

商談リクエスト数※1

26

商談数※2

12

後日に再商談した社数
事業提携に至った社数

3

1

  • ※1) 上記数字は第2回ILSでのTHK社のリクエストから商談合意数
THK株式会社 常務執行役員 技術本部長 星出 薫氏

ボンサイラボの大迫さんとは第2回ILSではじめてお会いしました。実は当社の営業支店に声をかけていただいていたということで驚きました。ILSでの商談時間は7分(※2)と短かったのですが、大迫さんのビジョンは7分間のプレゼンでも、とても強く印象に残りました。当社としてもコンシューマー市場への参入を検討し、新製品を準備していたタイミングだったことと、デアゴスティーニの週刊シリーズは有名でしたので、当社としても是非手掛けたい案件という事で、ボンサイラボと提携することをすぐに決断しました。※2) 第3回ILSからは商談時間は15分間に変更された

デアゴスティーニ社との協議は一か月半くらいかかりました。先方としては低コストの部品にしたかったようで、当社の製品は品質には絶対の自信がありますがコスト的に割高感があったのは否めません。それでも、大迫さんと一緒にいろいろなデータも示しながら、粘り強く交渉した結果、「週刊 マイ3Dプリンター」に当社の部品を採用して頂けました。

おそらく、デアゴスティーニ社から当社に直接に声がかかる事はまずなかったでしょうから、ボンサイラボさんとの出会い自体がなければ、この企画自体に参加することも、検討の場にも立てなかったと思います。

ボンサイラボ株式会社 代表取締役 大迫 幸一氏

「週刊 マイ3Dプリンター」の監修として設計図の提供、1~55号までの構成、マガジンによる組み立て指導、原稿チェック、全部品の仕様指示、品質確認を担当しました。また、ボンサイラボが承認したパーツのみを採用することを条件としていたので、3Dプリンターの標準を作っていくという事を意識して、世界No.1であるTHKの部品の採用は譲れない点でした。製品の品質は信頼感につながります。この企画にあたっては、当社製品のBS01シリーズのユーザーコミュニティーにも協力を仰ぎ、実際に2カ月ほどかけてユーザーに試験機の組み立てなどを行ってもらいました。大変な開発でした。

そのおかげか、「週刊 マイ3Dプリンター」は同シリーズの中でも継続率が高いと聞いています。55号で終わる予定が、追加で20号分の延長も決まったという事で、それだけユーザーに支持されているのだと思います。

また、同誌はイギリス、ドイツ、米国、台湾でも販売されており、当社は日本製部品のサプライヤーをしております。

先日までラスベガスのCESに参加していました。CESは世界最大の家電見本市ですが、近年は様相がかわって、ハイテクベンチャーの発表会という雰囲気です。相対的に日本の大手家電メーカーは存在感が薄くなっています。

しかし、日本の持つブランドイメージはまだまだ強固です。それは、日本製品の品質によるものです。私としては、それを失うのはあまりにもったいないと考えています。当社も米国に製品を販売しています。当社製品は組み立て式なので教育向けに受けているのですが、価格だけでいえばアジアメーカーの2倍はするのですが、当社製品のほうが人気なのです。これは日本ブランドの力だと感じています。

当社はベンチャーなので身軽に動けます。新市場への切り込み隊長として、大手企業ではなかなか出来ないビジネスも当社と組むことでスピーディーに取り組めます。THKさんとの提携もそうした事例の1つですが、当社は良い意味でモルモットでありたいと願っています。ただし、私としては勝算があってビジネスをしていますから、いうなれば鋼鉄のモルモットです。簡単には死にません(笑)。