全国809自治体の行政情報をDB化。ユニバーサルメニューで行政Webサイトをわかりやすくしたベンチャー「アスコエ」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

「わかりにくい」から「使いやすい」へ! 行政サービスと市民の間を「ユニバーサルメニュー」がつなぐ
展開している事業内容・特徴

20150203-1行政関連のWebサイトが分かりづらいという声が多い。税金のことから、子育て支援や福祉サービス、あるいは災害対策制度など、いざ困った時になかなか欲しい情報や支援策にたどりつけないという経験がある方も多いだろう。

たとえ情報を見つけたとしても内容が具体性に欠ける、あるいは情報そのものがサイト上にない場合もある。このように、いくら良い制度を国や自治体がつくったとしても、市民が「見つけられる・わかる」ようになっていなければ意味がない。そうしたミスマッチを解消しようと活動しているのが、今回紹介するベンチャー「アスコエ」だ。

アスコエのユニークな取り組みの1つが「ユニバーサルメニュー」である。これは、全国の自治体や行政関連のWebサイトを調べ上げて、そこに掲載されているコンテンツを整理・統合したもの。図書館の目録をイメージしてもらえればわかりやすい。行政サービスの目録を作成、標準化、そしてDB化をしたのだ。アスコエ代表の安井 秀行氏によれば、このメニュー化する作業には実に8年間、整理したメニュー数は実に4000から5000になるという。

こうして標準化したメニューがあれば、どの自治体・行政機関のWebサイトでも同じように情報が探せる。あるいはサイトによってメニューがないといった事も防げる。

上記のように行政サービスというのは、実に膨大な項目から成り立っている。一方、自治体職員の仕事は担当課ごとの縦割りで定期的に異動もあるため、例えば子育て課の職員だからといって、子育て制度の要項詳細や該当するサイト項目がどうなっているかを熟知しているとは限らない。そのため、自治体のWebサイトに施策情報の掲載が漏れる、あるいは情報の不備や内容が古いままになっているといった弊害が発生してしまう。

そこで登場したアスコエのユニバーサルメニューが、そうした課題を解決した。メニューだけでなく、各メニューの基本的な説明などのコンテンツも合わせて提供している。もちろん自治体によっての違いなどは調整されるが、メニューとコンテンツがセットになっている事によって、Webサイト構築と運営管理コストが格段に下がるというアプローチだ。

アスコエ代表の安井氏は、ユニバーサルメニュー普及のため、まずNPO団体 アスコエを立ち上げた。さらに事業を推進するために、2010年2月に株式会社アスコエパートナーズを設立。

現在はユニバーサルメニューを活用して、全国809もの自治体の行政サービスについてデータ化したDBをアスコエパートナーズ社としてすでに独自に構築している。これは1742ある市区町村のうち町村を除いた市区のほぼ全数にあたる。

また、同社では子育て情報に特化したサービス「子育てタウン:ママフレ」も展開している。これは育児支援行政サービスガイドで、アスコエパートナーズ社が自社で提供する、PC、スマホ、タブレット対応のプラットフォームだ。届出、検査、手当、助成制度等々の妊娠・出産・育児に必要なメニューとコンテンツが設けられている。

同サービスの特徴は、導入する自治体のコスト負担を非常に小さくして提供していること。そのために、アスコエ社がさまざまな企業とパートナーを組み、コストの一部を広告費で運営していく官民連携モデル(e—PPPモデル)となっている。この子育てタウン:ママフレは2015年1月末時点で神戸、大阪、千葉などの大都市を含む全国89自治体が導入しており、人口カバー率は18.71%という巨大メディアになっているため、企業側にとっても広告媒体として魅力的だ。

他にも東日本大震災の復旧復興に関する、行政支援制度を探せる「復旧復興支援ナビ」というサービスも展開している。これも500~600あるという復興復旧に関する行政支援策・支援情報などのメニューを統合したポータルサイトで、マイクロソフトや三菱総合研究所、ぎょうせいといった企業からの支援によって運営されている。

声が自分を変え、組織を変えた実感を事業へ! 市民にフィットする行政サービスを追究
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150203-2アスコエの代表を務める安井秀行氏は、慶應義塾大学理工学研究科修士課程、米国ノースウェスタン大学修士過程修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンに入社。株式会社DBMG取締役を経て、NPO団体アスコエと株式会社アスコエパートナーズを設立した。

起業を目指すきっかけは、高校生時代の経験に遡る。安井氏の地元は横須賀市だが、たまたま高校生の頃にクラスの福祉委員に抜擢され、ボランティア活動を担当することになった。夏休みを利用して横須賀の老人ホームに3泊4日のボランティアを行ったが、当初は特別な思いはなかったそうだが、人生の先輩たる「シニア」の方々との交流に感銘を受け、いつしか自主的に学校の休みを利用して、各老人ホームで自主的にボランティアを行うようになった。

そうして「公」の活動に興味をもっていった安井氏だが、行政機関には就職せず、コンサルティング会社に進んだ。マーケティングでは「顧客の声」が重要である。その声がマーケティングの枠を越え、組織を変えていくことをコンサルタント時代に実感した。(ちなみに、アスコエのコエは、「声」から来ている)

ユニバーサルメニュー作りに取り組むきっかけとなったのは、安井氏自身が自治体のWebサイトを使っていて、その使いづらさに疑問を感じた事からはじまる。

「調べてみると、子育てや介護等、各自治体が提供するサービスは共通している点が多く、サイトの構造は似通っている。しかし、各自治体の制度やその情報を見つけられるまでのルートには、自治体で差がある。それを解決できないかと考えたのが、ユニバーサルメニューでした。つまり、デザインはもとより、市民が戸惑わないように共通する制度をメニュー化(共有化)していくことです。しかし、各自治体サイトを検証しながら、誰もがわかるメニューを作成することは、大変地道な作業で非常に根気が必要です。これまで作成したメニュー数は5000近くになりますが、まだまだ発展途上(笑)。今現在も絶えずブラッシュアップを続けています」

「高齢者の声」と「顧客の声」。一人ひとりの声は小さな声だが、それを束ねれば世の中を変える大きな潮流を生む。安井氏は、「私の声で明日を変える」をテーマに、 “声”が伝わりにくいモノ・コトのマーケティングにフォーカスして、起業の道を進んだ。

「公」をテーマにさまざまなソリューションを展開。世界の行政サービスも視野にプラットフォーム化を進めていく
将来への展望

「公」を柱に、さまざまな事業を展開する同社だが、妊娠・出産・育児のママフレ、災害の復旧復興支援ナビのように、育児や防災減災等のプラットフォームづくりに取り組みながら、今後はスマホ等のデバイスからの電子申請実現も推進させていくというのが同社の展望だ。

また、同社では新たなB2B事業として、行政サービスに密接な関わりを持つ不動産業や通信会社などがプロモーションツールとして活用できる「タウンレポート」というサービスも提供している。例えば、不動産の「駅近〜分、間取り○○」といったスペック情報だけではなく、不動産がある各自治体の助成制度などの情報をセットで提供することで、顧客への訴求力を高めるという企業向け情報提供サービスだ。

そしてもうひとつ大きなテーマとして「電子行政」がある。同社は電子行政を実現するITインフラの構築も目指している。これは単なる行政サービスコンテンツの構築にとどまらず、DBスキーマや共通プロトコルなど電子政府実現の重要な基盤として、同社の大きな柱に育ちつつある。

例えば、2013年、イギリスで開催されたG8のプレセッション「Open for Growth: trade, tax and transparency event」において、世界のオープンデータ事例として、日本の災害復旧における情報支援の仕組みとして同社の「復旧復興支援ナビ」が、政府や自治体による支援情報をデータベースからAPIで引用しマッシュアップするサービスとして紹介された。

また、同社はインド、東南アジア、アフリカなど海外展開にも意欲を覗かせており、資金調達等、事業基盤の拡大を図るべく着々と準備を進めている。安井氏によれば、行政サービスと市民の間に壁があるのは、日本だけではない。「ユニバーサルメニュー」という概念は、世界中に通用するものだと考えている。

このように政府や自治体の持つデータを活用して、行政サービスを国・自治体からだけではなく、ベンチャー企業から使いやすくしていくということが、新しい公共(アスコエは、これを“スマートパブリック”と呼んでいる)の姿かもしれない。

株式会社アスコエパートナーズ
代表者:安井 秀行氏 設立:2010年2月
URL:
http://www.asukoepartners.co.jp/
スタッフ数:16人(契約社員・アルバイト含)
事業内容:
ユニバーサルメニューによる行政サービス情報提供事業
ユニバーサルメニューに関するシステム、サイト構築事業
自治体コンサルティング事業
行政関連ネット広告事業

当記事の内容は 2015/2/5 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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