設立1年で数十社のオフィスをプロデュース。有名ベンチャーの成長を支える「ヒトカラメディア」

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執筆者: ドリームゲート事務局

快適なオフィスはベンチャーの戦略的投資。1年あまりで数十社のオフィス移転プロデュースを手がける
展開している事業内容・特徴

20150109-1ベンチャー、スタートアップ時の悩みといえば人材の確保だ。立ち上げ期であれば、創業メンバーの自宅やレンタルオフィスなどシェアスペースでも事足りるが、スタッフが何十人、あるいは何百人という規模になってくると、オフィスの確保や移転、人材獲得に苦労し始める。優秀な人材は大企業との取り合いとなり、特にIT人材などは激しい採用競争が繰り広げられている。急成長しているのに、人材不足のため事業拡大にブレーキがかかるような状況は、ベンチャーにとっては死活問題だ。

そうした課題を解決するため、新しい人材採用サービスがたくさん登場しているが、オフィス環境も人材獲得の大きなポイントだ。特にここ最近は、メガ・ベンチャーのオフィス投資意欲は旺盛となっている。いかにユニークで、エンジニアなどが快適に仕事をできるか、各社各様に凝ったアイデアと資金を投じて、そうしたオフィスを紹介する記事も目立って増えてきている。

そうしたユニークで快適なオフィス構築に関連したビジネスも今後の成長分野の1つになるだろう。今回紹介する株式会社ヒトカラメディアもそうしたベンチャーで、不動産ビジネスで急成長している。

2013年5月に設立されてまだ1年半という若いベンチャーだが、すでにオフィスプロデュースの実績は数十社。例えば、ダイエット家庭教師ビジネスを手がけるFiNCや、教育系ベンチャーのアオイゼミなどのオフィス移転プロデュースも同社の仕事である。

また、クライアント企業の社長や役員の個人宅を仲介することも。ベンチャーの経営者は四六時中ビジネスに集中して、何かあればすぐ会社に飛んでいけるよう、オフィスの近くに部屋を借りることが多い。オフィス移転と併せて個人宅の仲介も依頼されるというわけだ。また、なかには社員の住居物件探しを手伝い、社員数名が共同で住むシェアハウスを紹介したケースもあったという。

年商は、前年比で700%と急成長。取材をした2015年1月時点で社員はまだ5名だが、すでに5名の中途採用も決定しており、早々に10名体制となる予定。現在、依頼や引き合いが多すぎて手が回らないため、さらなる人員増強を計画しているという。

名古屋で学生ベンチャーを立ち上げた後、東京で不動産ビジネスにかかわり起業
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20150109-2株式会社ヒトカラメディアの代表である高井淳一郎氏。昔から「人と違うことがしたい」という反骨心が強く、「子供の頃、出身の名古屋から岐阜に引越したのですが、あえて名古屋弁を使い続けたり(笑)。逆に大学進学で名古屋に戻った後は、岐阜弁を使っていました。マイノリティー気質というか、天邪鬼な性格なのかもしれません」というコメントだ。

名古屋工業大学で建築・デザイン工学科を学んでいたが、単に建築家を目指すのではなく、何か面白いことを仕かけたいと考え、経営者を目指すことを決意。学生時代に名古屋でさまざまなビジネスをしていた。

しかし、このままでは自分自身の成長の伸びしろが少ないと考え、修行のために東京に出てビジネスを一から学ぼうと決意。リンクアンドモチベーションの創業者である小笹氏の経営理念に共感し、同社に入社する。そして、グループ会社のリンクプレイスで、オフィス仲介・構築、ビルオーナー向け新規事業開発に携わった。その後、上場準備中のベンチャーのスタートアップメンバーとして参画したが、そこで不動産業界の古い体質に疑問を感じ、課題解決のため自分自身で起業することを決意した。

起業にあたっては、「いろいろな生き方を選択できる社会にしたい」という思いをコンセプトとし、そこから『「都市」と「地方」の「働く」と「暮らす」をもっとオモシロくする』をミッションとして定めた。

「みんな、朝晩と満員電車に揺られてオフィスに通う必要があるのだろうか……」
「地方にサテライトオフィスがあれば、通勤時間を気にせず快適に仕事ができるのに……」

ますはそんな課題を解決するビジスネを目指していたが、なかなかサービスがかたちにできず、苦労した時期もあった。そうした苦悩の末、成長のきっかけとなったのが、現在手がけているオフィス設計・コンサルティングのビジネスだ。

前述のとおり、ベンチャーにとってのオフィスは、人材獲得のための投資という側面もある。しかし、潤沢に資金があるわけでもない。急成長すると、すぐに大きなオフィスに移転せざるを得ないことも多いため、そのたびに大きなコストを支出するのはもったいない。

そこで同社では、DIYの発想を取り入れて、ベンチャー企業が自分たちでオフィスをつくり上げるという提案を行った。同社の考えるDIY手法なら、オフィスの内装コストを業者に依頼した場合と比べて、3分の1程度に引き下げられる。週末にスタッフ総出で、机や棚をつくったり、壁を塗ったりして、オフィスを手づくりするのだ。もちろん、電気設備など、専門資格が必要なところだけは業者に委託する。もちろん自分たちでつくったオフィスには強い愛着を持てる。

この提案がヒットして、同社にはベンチャーからオフィスに関する依頼がひっきりなしに届くようになった。また、同社自身でも自社オフィスを手づくりしており、その様子をWebで公開している。また、オフィスの相談に併せて、役員や社員の住宅についての相談や依頼も入るようになり、そうした不動産仲介の手数料も売り上げに寄与するようになっていった。

また、同社では2014年末にTowner(タウナー)というメディアサイトを立ち上げた。立ち上げを指揮したのは、取締役でもある田久保博樹氏。田久保氏は、オールアバウトで編集・制作・メディア立ち上げ・マネタイズに従事した経験を持つ。その後、Facebook navi編集長やメディア事業部、新規事業部のマネージャなどを経て、2014年にヒトカラメディアに参画した。

Townerは、立ち上げ2週間で50万PVを超える勢いとなり、例えば東京都内のハイレベルな銭湯10選という記事は、いいね数が5万5000を超える人気ぶりだ。Townerは、同社のミッションである『「都市」と「地方」の「働く」と「暮らす」をもっとオモシロくする』というミッションを具現化するメディアという位置づけだ。

田久保氏は、「単にページビューを追うだけのコンテンツはもう通用せず、いかにユーザーのモチベーションを高めて、実際の生活にかかわれるかどうか、行動想起のきっかけとなるコンテンツをつくれるかが、インターネットメディアとしての重要なポイントとなる」と言う。転じて、そうしたメディアパワーを持つプレイヤーが、ビジネス的に非常に有利になると見ている。

不動産×人材×マーケティングが今後のキーワード
将来への展望

高井氏に今後の事業展望を伺ったところ、サテライトオフィスのプロデュース事業を進めたいという回答だった。現在同社は、地方自治体と連携して町おこし事業や地方のビル再生事業などのプロジェクトも進めている。例えば、別荘地や温泉地に住宅やサテライトオフィスを整備することで、高い給与や報酬よりも生活のクオリティーを重視するハイキャリア人材の獲得や引き留め、子育てのため長い通勤ができなくなった人材を引き留めておくための地方拠点設置などを、大企業に提案していく計画だ。実際、中途採用で大企業が支出している人材獲得コストより、そうした地方拠点の整備コストが安ければ成立するビジネスモデルだろう。

今後の具体的な売り上げ目標などは秘密とのこと。経営的にはキャッシュフローがプラスで回っているので、直近での資金調達予定はないそうだが、事業会社との連携などは積極的に進めたいという。「例えば、人材ビジネスや不動産ビジネスの大手と組んで、大きなプロジェクトを立ち上げたい」と語ってくれた。

クラウドソーシングをはじめ、働き方の変革が進んでいる。また、住宅についてもシェアハウスなど新しいライフスタイルが広がり始めている。画一的だった生活様式が一変し始めると、そこには巨大なマーケットが出現するだろう。同社は、まさにそうした変革を自ら仕かけているベンチャーだ。「オフレコ」ということで、記事には書けない面白いプロジェクトをいくつも進めている同社。今後の動向に、ぜひ注目してほしい。

株式会社ヒトカラメディア HITOKARA MEDIA INC.
代表者:高井 淳一郎氏 設立:2013年5月
URL:
http://hitokara.co.jp/
スタッフ数:5名
事業内容:
不動産仲介業/オフィス設計・コンサルティング業/メディア運営/Web制作業

当記事の内容は 2015/1/27 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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