自動車の余剰エネルギー蓄電に成功!途上国の電力不足解消を目指すベンチャー「エクスチャージ」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

自動車の作り出す余剰電力に着目。サブバッテリーで電気を貯め、再利用するシステムを開発

20141222-1先進国から発展途上国まで、今も多くの自動車が世界中を走っている。その自動車は余剰電力を作りだすが、エンジンを止めた後には活用できない。

電力を蓄電しておいて、エンジンを止めた後でも実際にそれを可能とするシステムを考えたのが、今回紹介するベンチャー、エクスチャージ株式会社だ。

同社が取り組んでいる自動車の余剰電力の再活用の仕組みは、普通のガリソン車などに取り付けられるようになっている。「エクスチャージシステム」と同社では呼んでいるが、システム1つあたりのコストは、2万~3万円程度。エクスチャージシステムで使える電力量はバッテリーによるが、あくまで参考的な試算だが、携帯電話なら100時間程度、冷蔵庫なら12時間程度動かせる電力が得られる。また、バッテリーは500回程度まで繰り返し使えるそうだ。

エクスチャージシステムは、2014年9月にバングラデシュで実証実験を行っている。それも自動車ではなく農業用のトラクターに取り付けての実験だったが、結果は大成功。2015年5月以降に、本格的な販売開始を予定している。

市場としては、電力インフラが整っていない発展途上国の未電化地域がメインとなる予定。ソーラーパネルなどで同様のエネルギーを得る場合は、数十万円の投資が必要になるためコスト的にもメリットが大きい。また、天候に関係なく使えることも大きな利点だ。

一方、国内では停電が命を左右する医療機関などでもニーズがあるだろう。

同社では2020年までに年間1万台の販売を計画している。

東日本大震災がきっかけとなり、ソフトウェアエンジニアが電力ビジネスに挑戦
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20141222-2澤幡氏は、20年以上ソフトウェアの開発をしていた生粋のITエンジニア。1995年~1997年にはミネソタ大学の客員研究員も務めている。

澤幡氏が起業を意識したきっかけは、東日本大震災。当時、住んでいたマンションの管理組合の理事長をしていたが、マンション全体が停電して電気がない生活の不便さを身に染みて感じた。

そうして電力関連の新しい事業を考え始めた澤幡氏は、自動車の余剰電力を活用するアイデアを思いついた。2014年1月、アイ・シー・ネット株式会社が主催した「第1回 40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」で優秀賞を獲得したことが後押しとなり、2014年2月にエクスチャージ株式会社を立ち上げた。資本金は580万円。全額、澤幡氏個人が自分自身の貯蓄から捻出している。

ちなみに、同コンテストは、年3000ドル以下の所得で暮らしている40億人超の生活を改善するような、持続可能なビジネスモデルがテーマ。また、主催しているアイ・シー・ネット社は、外務省やJICAからODA関連の業務、途上国支援を手がけているコンサルティング会社だ。

そうした経緯から、エクスチャージ株式会社も国内ではなく海外、それも途上国からビジネスを展開していこうという流れになった。前述のバングラデシュでの実証実験も、アイ・シー・ネット社との関係を活用して決定した。

澤幡氏に製品開発の苦労を聞いたところ、ソフトウェア開発と違い、ハードの開発は勝手が違い過ぎて、とにかく苦労の連続だったという。特に大変だったのが大電力の取り扱い。電力を使用する際、バッテリーの電圧が低いために太いケーブルが必要となり、安全にサブバッテリーを利用するためには、さまざまな対策が必要となり、なかなか思うようにいかなかったという。

また海外とのやり取りでも幾多の苦労があった。例えば税関の問題。日本から送った荷物がバングラデシュの税関で3週間も足止めを食らった。また、ゾウが道路をふさいで、車が通れないといった笑い話のようなトラブルもあったという。

電力のクラウド化・ポータブル化で、直流家電の新しいマーケットを創出
将来への展望

澤幡氏に今後の展望を伺ったところ、「1つは電力のクラウド化」という答えが返ってきた。どこにどれだけの電気が充電されているかを共有し、それらをみんなで活用するというインフラをつくりたいという。それが実現できれば、発展途上国の未電化地域に送電線や変圧器などを張り巡らせなくても、十分に電力利用ができるようになる。電力をポータビリティー化するとも言い換えられるが、従来の発電所→送電線→電圧変換器→家庭といったインフラ投資が不要となる。

もう1つが、「直流家電」。現在、ソーラーパネルで発電される電力は直流電力であるが、家庭でそのまま使う場合や送電網へ流す場合は交流に変換している。この際に電力ロスが発生する。直流でそのまま使う家電があれば、このロスを回避できる。

家電の直流化に伴うメリットも、今後の大きなビジネストレンドとして澤幡氏は見ている。

東日本大震災以降、日本の電力事情は大きく変わった。原子力発電所は、2014年末時点で稼働ゼロのままである。一方で、再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、売電申請の急拡大に伴って新規受け入れの停止・制限から、買取価格の見直しなど、制度設計の見直しが進んでいる。さまざまな意見や批判もあるが、エネルギー関連のビジネスは大きく動いていることは事実であるため、日本からグローバルな電力サービスに取り組むベンチャーが出てきたのだ。同社の取り組みが、現代の人類が直面している、電力不足問題を解消してくれることを期待したい。

エクスチャージ株式会社
代表者:澤幡 知晴氏 設立:2014年2月
URL:
http://www.excharge.net/
事業内容:
自動車の余剰電力を使ってサブバッテリーを充電、切り離して使えるようにするエクスチャージシステムの提案、エクスチャージシステムで利用するエクスチャージコネクタの販売等

当記事の内容は 2015/1/8 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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