ロボット格闘競技大会のシミュレーション部門で2度優勝したエンジニアが起こした、ソフトからハードまでワンストップで「ロボット開発」を提供するベンチャー「株式会社テクノロード」。

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執筆者: ドリームゲート事務局

ソフトからハードまでワンストップで「ロボット開発」を提供するベンチャー
展開している事業内容・特徴

20141125-01つくば科学万博の1985年、アイボ、アシモが登場した1999年から2000年、そして2005年の愛・地球博などのロボットブームに続いて、2014年、4度目ともいえるブームが到来している。きっかけは2013年。東日本大震災を受けて、アメリカの軍事技術の研究・開発を行う、DARPA(国防高等研究局)が主催した「DARPAロボティクスチャレンジ」で優勝した日本のチーム。がれき等の障害物除去などの競技で優劣を競う、災害救助用ロボット競技大会で栄えある1位に輝いたのは、東大発ロボットベンチャー「シャフト」。googleに買収されたロボット企業としても知られており、日本のロボット技術を世界に知らしめた。

ロボットは複合技術であり、制御、電気、ソフトウェア、機械等の技術が必要となる。だが、それぞれのメーカとシームレスな連携を築き、一気通貫してロボット開発を行える会社は数少ない。

今回紹介するのは、そうした複合技術を強みとして、ロボットから宇宙機器の設計・開発も手がけるロボットベンチャー「株式会社テクノロード」だ。

同社代表の杉浦 登氏はロボット業界では知られた名前だ。ロボットの格闘競技大会として知られる「ROBO-ONE」のシミュレーション部門で2004年、2005年大会で2度優勝している。

同社は制御機器設計やアルゴリズム設計を得意とする会社として知られており、「マイコンボード」や「モータドライバ」の受託開発、「各種モータ制御」、「Matlab/Simulinkによる設計」から「Androidアプリ」、「PC用のロボットの制御ソフト」等の引き合いが高く多くの実績を持つ。高い技術力はもちろんのこと、ロボット開発のスタートからエンドまでを俯瞰したものづくりが最大の強みだ。

受託開発がメインとなるが、自社でも複数のロボットパーツやロボットを提供しており、一般のロボットファンからも注目度は高い。そのサービス一例として、マイコンボード「Coron」と、Andoroid端末制御ロボット「Coroid」がある。

マイコンボードとは、小型コンピュータ基盤のことで、モータ制御や音声再生、データ取得等々…のプログラムを行うロボットの核となるパーツである。しかし、これまでマイコンボードはそれぞれのプログラムを組み込む必要があり、またそのプログラミングも非常に複雑。それこそ膨大な手間と時間が必要だった。一方で、Coronは必要な機能をあらかじめ備えており、初心者でもロボットづくりに取り組めるマイコンボードなのである。現在、テクノロードHPや秋葉原等のロボットパーツショップで販売されており、会社、個人問わずユーザーは多岐にわたる。

そして、スマホ等のAndoroid端末から操作できるロボットキットが「Coroid」である。2本のアームと3車輪型のロボットで、何とも親しみが湧くデザイン。先述のCoronを搭載しており、Andoroid端末をリモコン代わりにして走行やアーム操作、搭載カメラでの動画撮影ができ、撮影映像はAndoroid端末上で表示することが可能だ。大学や研究機関、企業からニーズが多いという。リリースは約4年前で現在は生産中止となっているが、IoTがトレンドとなっている今、注目度は高い。

20141125-01また、テクノロードは「Go Simulation!」という、WindowsPCでロボットのシミュレーションを行える三次元の物理演算を利用したソフトも提供している。ロボットの形状や動きをPC上で最適化できるので、よりパフォーマンスの高いロボット開発を実現させる。ただ、ロボットのシミュレーションソフトというと、あまり日本では馴染みがなく、欧米に歩があるという。しかし今後、ロボットの形状や動きに対してより高度なクオリティが求められていくのは明確である。それを鑑みれば、日本でも重要な役割を担うといえよう。また、シミュレーションというと、少々とっつきにくい印象もあるが、ロボットづくりを知らない人や初心者でも遊べるゲーム機能もついている。6,690円とリーズナブルな価格なので、誰でもゲーム感覚でロボット設計を身につけていけるのも魅力だ。

続々登場する二足歩行ロボットの感動から、起業を決意!
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20141125-2(株)テクノロード代表である杉浦登代表の前職は、東芝での宇宙機器の設計・開発。人工衛星に搭載する観測カメラなどの制御システムに従事していた。起業のきっかけは、ロボットブームである。

東芝に入社した1998年は、誰も個人がロボットをつくれるとは夢にも思わない時代。しかし、数年でロボット市場に革新的な変化が訪れた。ロボット製作が、ぐっと身近になったのだ。例えば、先述した「マイコンボード」のプラグラミングには専用ツールが必要で、ツール購入には従来、数十〜数百万円のコストがかかる。だが、2000年代初頭に入ると、プログラミング可能なフリーソフトが登場。個人でもロボット開発が容易になっていった。

このような背景から、世間にはブームが到来した。巷のロボットファンによってさまざまなロボットが世に発表され、杉浦氏の関心を引いた。

時は2002年。二足歩行ロボットに限定した格闘競技や、デモンストレーションで優劣を競う大会「ROBO-ONE」が開催。杉浦氏のロボットへの興味はさらに加速していく。氏はいわゆる、“ガンダム世代”。大会に集う二足歩行ロボットを見て、個人でも歩くロボットがつくれることに衝撃を受けたそうだ。また同時に、同大会と平行してスタートした、コンピュータ上でのロボットシミュレーションを競う大会「ROBO-ON on PC」から、シミュレーション分野にも魅了されていった。

いつしか、ロボット、シミュレーションについての知識を深める日々を送る杉浦氏。調べれば調べるほど当時の仕事とも親和性が高く、のめり込んでいった。

その後は、導かれるように「ROBO-ON on PC」に参加。2004年開催「ROBO-ON on PC Mission2」、翌年の「ROBO-ON on PC Mission3」では、みごと優勝を収めた。この快挙や、ロボット市場の熱気が起業への追い風となり、2006年に株式会社テクノロード設立に至ったのである。東芝での経験値もあり、設立当初からコンスタントに宇宙機器の設計・開発の受託案件を獲得できたそうで、多忙ではあるものの安定を維持することができたという。

次世代社会への貢献と未知なるロボットの開発に向け、開発・受託に突き進む。
将来への展望

2010年に経産省とNEDOが公表した「ロボット産業の将来市場予測」では、製造分野からサービス分野までのロボット産業を含め、2015年は1.6兆円と予測。そして、2025年までに5年単位で約倍に増加し、2035年には9.7兆円までに成長するとしている。特に注目すべきはサービス分野で、2015年では3,000億円規模だが、2020年には1兆円、2025年、2.6兆円、そして2035年には5兆円と急速な伸びを見せるそうだ。かのソフトバンクが今年6月、世界に先駆け感情認識パーソナルロボット「Pepper」を発表するなど、今、日本のロボットサービス分野は次世代に向けた勃興期に突入したといえよう。

テクノロードは昨今、ロボットでのノウハウを活かしたIoTシステムの開発にも力を入れている。2012年には「smart console」なるシステムもリリースした。

同システムは、Webブラウザから、遠隔地にある消費電力、温度、照度等のモニタリングや、照明やファン等を操作できるもので、スマートハウス普及に寄与するもの。昨今、住宅業界や介護業界等からの引き合いが増えている。今後も市場は増加傾向にあり、次世代構造物の基幹システムとして、当システムの広い導入も期待される。

社としての当座の目標は開発・受託体制の強化。近年のロボットブームに乗り、増々高まる市場に呼応し得る体制を整えていく構えだ。だが、一方で、課題もあると、杉浦氏は語る。

「この業界はどうしてもシーズが先行する世界。しかし、ロボット製作をビジネスとして見ると現状、ニーズの面で限りがあります。なので、ロボットがソリューションやイノベーションとして機能する市場を如何に把握、または創出していくかがキーだと感じています。絶えず、さまざまな業界の動向にアンテナを張りながら、先見の明を持って事業に取り組んでいきたい」

ロボット業界では今、東京オリンピックを見据え、訪日外国人を“おもてなし”するロボットや、聖火ランナーを担うロボットの開発といったアイデアもあるのだとか。“ガンダム、ドラえもん”のような、今は2次元にとどまる空想のロボットたちが実現する日も、そう遠いことではないのかもしれない。業界はもとより、今後のテクノロードの動向から目が離せない。

株式会社テクノロード
代表者:杉浦 登氏 設立:2006年10月
URL:
http://techno-road.com/
スタッフ数:4名
事業内容:
ロボット設計開発事業
宇宙機器設計開発事業

当記事の内容は 2014/12/4 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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