リピート率8割。創業100年の干物の老舗「山市湯川商店」が仕かけるネット戦略

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

老舗干物屋が仕かける新たな販路戦略
展開している事業内容・特徴

himonoya1小田原で創業して100年。三代続く老舗の干物屋「山市湯川商店」が運営するネットショップは、「干物」でキーワード検索するとTOP 10ランクインする人気サイトである。

海の幸が豊富や小田原近辺の港・市場で仕入れた鮮魚を、干物に加工して販売している山市湯川商店だが、2年前までは卸が事業の中心であり、築地市場や地元の土産物店などとの取引だけで、十分に売り上げが立っていた。

100年も続く老舗だけに、その味は抜群。商品への信頼性も高く、これまではとにかくつく分だけ売れていた。しかし、三代目の湯川仁氏は、時代の変化を読み、昔ながらの商売のやり方がいつか通用しなくなるのではないか……。そんな不安を感じ、新たな販路開拓の方法を模索していた湯川氏が、その取り組みの一つとして2009年1月にオープンさせたのが、ネットショップ「山市湯川商店」だ。

オープン後、約2年で検索サイトの上位にランクされるほどの人気サイトに成長。現在、同社の売り上げ拡大に大きく貢献する販売チャネルとなっている。

ネットショップでの客単価は3000~4000円が中心。8~10枚ぐらいの干物がセットになったものがよく売れるそうだ。またリピート率が高いのも特徴で、実に70~80%のユーザーが繰り返し同ショップで買い物を続けている。

干物の生産量は平均で1日3000~4000枚。繁忙期は7月と12月のお中元とお歳暮シーズンで、1月でなんと10万枚もの干物を生産している。そもそも干物は、生産後、冷凍すれば1カ月は持つため廃棄ロスも少ない。また、生産過程で出た規格外などの商品は、ワケアリ商品として工場に併設された店舗で販売している。これもいつも売り切れるほどの人気だという。

三代目が手探りで開始したネットショップが大成功!

ビジネスアイデア発想のきっかけ

山市湯川商店の三代目である湯川氏は、家業である干物店を継ぐつもりはなく、大学は文学部に進学。しかし、子供の頃から親しんだ干物の味を守り続けたいと思い立ち、31才の時に家業を継いで三代目となった。

入社してまず気づいた課題は、少ない販路への依存度。大型のスーパーなどは大量に干物を購入してくれていたが、仮にその契約の一つが切れただけでいっきに会社が傾いてしまう。

そこでネットショップを立ち上げることにしたのだが、湯川氏はまったくのド素人。「わからないことがなにかもわからない状態」からのスタートだったという。

本を読んだり、ネットで調べたり、友人に聞いてもよくわからない。それでもとにかく手探りで、試行錯誤を続けながら、3カ月ほどかけて何とかサイトを完成させた。そうやってネットショップをオープンさせたはいいが、当然ながらさっぱり売れない。最初のオーダーが届いたのは、オープンから1カ月後。東京在住のお客さまから、5000円のセット商品の注文だった。

「やれることは何でもやりました」と、その後も、独学を続けながら、サイトの改善を続けていった湯川氏。最近までSEOという言葉の意味すら知らなかったそうだが、2年をかけて、同ショップは人気サイトに成長していった。

取材時に人気サイトに成長した秘訣を聞いたが「何も特別なことはしていないよ」という湯川氏。しかし、サイトをじっくり見てみると、実際に購入された顧客からの評価などもきちんと公開されていて、干物を作る人達や子供と一緒に写っている写真、干物への思いがつづられたメッセージがあちこちにあり、サイト全体から湯川氏の干物への真摯な姿勢が伝わってくる。SEO的な基本的な対策はすべて施されており、こうした実直な取り組みが結実して人気サイトへと成長した。今では北海道から九州まで、日本全国からオーダーが舞い込むようになっているという。

リピート率8割。しかも注文の大半が実は電話!?

himonoya2山市湯川商店のネットショップの特徴は、注文の9割以上が電話かFAXで届くことだ。実際、取材中も数件、電話で注文が入ってきていた。不思議に思って電話に出させてもらいお客さまに聞いてると、「家ではネットをしないし、会社ではセキュリティーの関係でネット注文ができない」という答えが返ってきた。どんな要望であれ、注文が届くことが一番大事。湯川氏はユーザーオリエンテッドを貫きながら、その対応に日々追われている。

顧客層は30代から70代まで幅広く、とくに子供を持つ家庭が多いそうだ。これまでに生産した干物の種類は50~60種類。現在でも、常時30種類ほどを販売している。珍しいところでは、クロムツ、メバル、クロシビ、カマス、スミヤキ、太刀魚などの干物を生産。意外なのがイワシの干物。ありそうでなかったのでつくってみたところ、驚くほどうまかったそうだ。

さらに、カレー味の干物も販売している。これは、個人的に湯川氏の家庭で食べていたもの。干物に飽きないようにと工夫していろいろつくった中の一つで、試しに販売してみたところ大人気。魚嫌いの子供たちにも大好評だという。

一番の顧客は自分の子供たち。うちの干物が世界一おいしいと思ってほしい
将来への展望

湯川氏は言う。「ネットショップとして、競合は特に意識していません。とにかく味にこだわって、干物づくりを続けていくだけだけです」と。一番の顧客は湯川氏の3人の子供たち。「うちの干物が一番おいしいと思って食べてほしいんです」。

「エクセレント・スモールカンパニー」と呼ばれることを目指している。小さくても優良な会社であり続けること。大手にはできない仕事にこだわり、良いものをつくれる最適な規模で経営を続けていきたいからだ。本物の味がわかる、1000人に1人、1万人に1人のファンのために、とにかくどこよりもおいしい干物をつくり続ける。それが、湯川氏がこれからも守り続ける、お客さまとの約束だ。

有限会社山市湯川商店
代表者:湯川 仁  
設立:2009年1月 / 干物屋としては創業100年 URL:http://himonoya.biz/
事業内容:干物の生産・加工・販売。

当記事の内容は 2011/12/20 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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