ビックデータ解析を軸に様々なサービスを展開するベンチャー「株式会社モーション」。目指すは超効率的社会システムの構築

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

ビックデータ解析を軸にさまざまなサービスを展開。目指すは超効率的社会システムの構築
展開している事業内容・特徴

20141009-19月24日に、虎ノ門ヒルズで開催された「TOKYOイノベーションリーダーズサミット(以下ILS)に参加したベンチャー455社のなかで、商談件数(13社の大手企業と商談)で商談件数第2位だった株式会社モーション。ビックデータ解析を軸に、さまざまなサービスを展開するベンチャーだ。

同社の創業は1999年。カタログ通販大手のECサイトで稼働しているレコメンドエンジン開発など、データマイニングやシステム開発の受託からスタートした。創業から15年目という企業である。

2002年には企業が業務で使用する携帯電話の回線管理および通信費を、管理・分計按分するASP型総合管理ツールサービスである「KCS Motion」をリリース。同ASPの販売・運営は兼松ミコュニケーションズが担当し、同社は開発と保守を担っている。2014年10月時点で20万回線を超え、同社のメイン事業へと成長。また、2011年11月18日には「電話管理サーバ、電話管理サーバの制御方法および制御プログラム」という特許も取得した。これは「KCS Motion」ので使われている主要な技術の1つだ。

同社では今後の事業の柱として、環境および交通に特化したIT開発も取り組んでいる。電気自動車(EV)関連の市場が拡大を見据えて、2012年に「VOLTA」をリリース。これはEV・電動バイク用充電器の運用・利用管理システムだが、EVの充電は30分単位とどうしても時間がかかるため、あらかじめ利用者から予約を受け付けてスケジューリングを行わないと効率が上がらない。そこで同社が得意とするビックデータ解析を用い、予約・スケジューリングを効率的に回すシステムを構築するというわけだ。

さらに、同社ではタクシー配車の最適化システムも開発している。これは環境省の実証実験プロジェクトとして、京都府・大阪府・和歌山県・東京都・神奈川県のタクシー会社39社と連携し、EVタクシーを効率的にマッチングするシステム。充電ステーションがどこにでもあるわけではないので、EVは常に電池残量を気にしなければいけない。同システムは、曜日・時間帯・天気・天候等のデータから需要予測を行い、乗客希望客とEVタクシーを効率的にマッチングさせることで無駄な走行を減らすというものだ。この技術も2014年9月5日に「充電配車管理サーバおよび充電配車管理システム」という特許も取得した。

実証実験の終了後、同システムを「タクシーネット」としてサービス化。今では京都で約800台のタクシーが稼働している。

金融系システムの開発からゲーム会社に転職。そこで知り合った仲間と起業。環境省の国プロ採択をきっかけに、パブリックなサービス開発を目指すように
ビジネスアイデア発想のきっかけ

20141009-2モーションの上杉顕一郎代表は、もともとは金融系システムを開発していた。しかし、1995年頃、プレイステーションやセガサターン等のコンシューマゲーム機がブームになり、上杉氏も新しい分野に挑戦したいと考え、ゲーム会社に転職。ただし、栄枯盛衰の激しい業界。転職したゲーム会社は業績が悪化し、1998年頃に再度、転身を考えるように。当時、商用プロバイダーなどが登場し、普及し始めたのがインターネット。上杉氏はそこに大きなチャンスを感じて、現取締役の中西達夫氏らとともに起業を決意した。

創業メンバーは4名。上杉氏自身がもともとシステム開発者で、また一緒に起業した中西氏も半導体メーカーからゲーム業界に転職したエンジニア。創業したばかりのベンチャーだったが、当時はまだ珍しかったWebベースのシステム開発などを受託しながら、立ち上げは順調だった。

その後、2002年には兼松コミュニケーションズと組んで、先ほど紹介したASPサービス「KCS Motion」をリリース。経営は安定軌道に入った。

しかし、創業10年を迎え今後10年後、20年後について考え、EV関連の事業や、環境省との実証実験の仕事を通じて、広く社会全般に貢献できる事業をつくらなければならないと強く感じ、公器としての会社という姿勢を鮮明に打ち出し始めた。

上杉氏は未来を見据えて、ヒト・モノ・クルマをテーマにした「アクティブトラック解析」という構想を進めている。これはGPSと屋内測位情報をもとに、人と物と車を最適に配置する仕組みで、「いつ・どこで・誰に」といった行動情報とも紐づけ、人・物・車の動きをパターン化し、これまで見えなかったビジネスルールをつくり出そうというものだ。例えば、工場内でベテラン行員の動きを解析し、そこから有益なルールを抽出して新人教育などに生かすことで生産性を高める。あるいは、店舗内でいつもと違う動きをしている人物を自動的に抽出・特定し、万引き犯であるかどうかの予測を行うなど、実にさまざまな応用が考えられる。

O2O、オムニチャンネルといったキーワードはトレンドだが、まさにそうしたトレンドに沿った計画だ。こちらも、インフラはすでにそろいつつある。JAXAが進めている準天頂衛星「みちびき」が実用化されれば、GPSでこれまでとは桁違いの精度の位置情報が使えるようになる。また、屋内測位技術もApple社がiOSに標準搭載したことで話題となったiBeaconなど、手軽に使えるインフラも出始めている。

国や世界的な大手企業が進める新しいインフラをうまく活用して、まったく新しいサービスをベンチャーが生み出す。今、ベンチャーが待ち望んでいたオープンイノベーションを加速してくれる舞台が整いつつある。

目標は2020年の東京オリンピックまでに効率的なデマンド交通サービスを実用化すること
将来への展望

20141009-3上杉氏に今後の展望を伺ったところ、「2020年の東京オリンピックまでに効率的な新しい交通サービスを実用化する」という答えが返ってきた。

同社が展開しているサービス「タクシーネット」。そこで培ったノウハウや、アクティブトラック解析をはじめとするデータ解析技術をもって、公共交通システムを効率化したいというのが上杉氏の目標だ。

これは人口減、高齢化社会問題の解決にもつながる。公共交通が縮小・廃止されると、社会活力が下がり経済ははますます疲弊してしまう。

自動車メーカーや道路網等のハード面でなく、IT技術を利用したソフト面からも安く利便性の高い交通機関を実現できるのではないか。そうすれば、高齢者も元気に外に出歩けるようになり、ひいては経済の活性化にもつながる。そんな世界を構想している。

そうした公共的なサービス・インフラを実現するベンチャーとして、システム開発会社という枠から脱却しようという志だ。

現在はIPOも念頭に、事業計画の見直し、資本政策の策定にもとりかかっている。実際、今回のILSに参加した後、上杉氏と話をしたいという大手企業やベンチャーキャピタルからの問い合わせが多数あり、それらのアポイントで2週間先までスケジュールがいっぱいになってしまったそうだ。単にビックデータを用いて新しいビジネスの可能性がありますといった次元ではなく、広く「公」の概念で世界をよくしていこうという、同社の理念が響いている証左ではないだろうか。

株式会社モーション
代表者:上杉 顕一郎氏 設立:1999年4月
URL:
http://www.motion.co.jp/
スタッフ数:16名
事業内容:
ビックデータ解析を中心とした各種サービスの開発・運営。

当記事の内容は 2014/10/14 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める