リアルなデバイスにも革命を! 大手電機メーカーを飛び出して世界に挑む一人メーカー「ピグマル」

スマビ総研

執筆者: ドリームゲート事務局

スマートフォンがリアルなファミコンにもなる!? クラウドファンディングで開発資金を集めて成長中の「ものづくり」ベンチャー 展開している事業内容・特徴

pigmal11980年代に入って以降、ITビジネスの成長・拡大が止まらない。1990年代にはパソコンが一般人にも手が届く価格帯になり、2000年代にはインターネット環境が一気に整備された。そして2010年代になるとスマートフォンが「電話機」という括りを超えて、人々の生活そのものを変えるデバイスとして普及してきた。

パソコンやスマートフォンを構成するCPUやメモリは劇的に高性能化、低価格化が進み、それに合わせてソフトウェアも格段に進化してきた。しかし、IT機器の入力デバイスなどは、あまり進歩が見られない。キーボードやマウスは未だに最もよく使われるデバイスだが、広く使われ始めたのは90年代だ。また、スマートフォンではタッチパネルでの操作が一般的になったが、それも銀行のATMなどで古くから使われてきたものだ。逆をいえば、それらのリアルなデバイスはまだまだ未開拓の分野といえる。

今回紹介するベンチャー「ピグマル」は、そうしたリアルデバイス開発を手がける企業。創業したのは伊藤元氏。大手家電メーカーを退職し、2011年9月に「1人メーカー」として立ち上げた。

同社の主力製品は「FourBeat(フォービート)」というデバイスだ。青・赤赤・青・黄色・緑の4つボタンがあり、USBケーブルでスマートフォンにつないで使う。別途、対応アプリやゲームをスマートフォンにインストールすると、4つのボタンを使うだけでスマートフォンを操作したり、ゲームで遊ぶことがる。

取材時、実際にいくつかのゲームで遊ばせてもらった。例えば、「100m Dash」は、ボタンを連打して100メートル競争をするゲームだ。一言でいえば、ファミコンのハイパーオリンピック。ということを、実際に筆者が遊んだ最初の感想だったのだが、伊藤氏から「同年代の方はみんなそう言いますね(笑)」との突っ込みが入った。

ファミコンに慣れ親しんだ世代なら、単にボタンを連打するだけなのに「なぜか楽しい」という感覚に共感してもらえるだろう。ただ、伊藤氏によればファミコンを知らないもっと若い世代にとっては、逆に新鮮な驚きがあるそうで、やはり体験してみると「楽しい」のだそうだ。

同社がユニークなのは、製品の開発資金をクラウドファイディングで調達している点。1回目の資金調達は2012年6月。「Cerevo DASH(セレボダッシュ)」で募集し、総勢133名の支援者から821,523円を集めた。ちなみに、8000円で製品を1つもらえるという内容で、100個ほどの製品が予約注文されたことになる。

「せいぜい10万円も集まればいいほうだろう」という周囲の反応を大きく超える結果となったわけだ。現在(2014年1月時点)は、第2回目の資金調達を「Gadget Bank(ガジェットバンク))で募集中。目標金額は300万円だ。
http://www.gadgeban.com/project/no001.php

 さらに2014年前半にはアメリカで数千万の資金調達を計画している。これは製品の製造設備一式をそろえるのに必要な金額ということで、この資金調達が成功すれば、年内に「FourBeat」の一般販売を開始できる予定だ。

大手メーカーには入ったけれど、「ものづくり」ができないとわかり起業の道へ ビジネスアイデア発想のきっかけ

pigmal2伊藤氏が起業の道へ踏み出したのは2008年。北海道大学大学院工学部を卒業し、大手家電メーカーに就職するものの、大企業の中でなかなか思うような「ものづくり」ができないと感じ、退職。いきなり起業しようと思っていたわけではなかったそうで、会社を辞めてから、海外旅行などをしてノンビリ自由に過ごしていた。しかし、その当時はリーマンショックの影響で、再就職も難しく、仕方なしにフリーランスとしてソフトウェアの開発を始めた。

ソフト開発の仕事を受けつつ、空いた時間に自分の製品づくりを進めた伊藤氏だが、急速に「ものづくり」のためのインフラが整いつつあることに気づいた。

例えば、Linuxが動作するような開発ボードは、ほんの数年前は30万~40万円はしていたが、現在では「Raspberry Pi」というボードが3000円(25ドル~)ほどで手に入るようになった。廉価な3Dプリンターも登場し、設計データが組めれば個人で簡易な製品をつくれるようになった。電子基板なども、最近では10枚程度から注文でき、廉価なネットサービスがいくつも登場している。

そうした流れを見て、個人でもメーカーが立ち上げられる時代がきていると感じていた2011年、Googleが)Android Open Accessoryを発表。Android端末にUSBでつないだデバイスが個人で作れるようになった。そのSDKを使った開発者向けコンテストに伊藤氏は入賞し、注目され始めたことを機に法人化を考えるようになり、2011年9月 に合同会社ピグマルを設立した。

最初の製品である「FourBeat」は、インターフェースを極限までシンプルにすることにこだわった。CPUやディスプレイなどは急速に高機能化し、その性能を生かした機能やサービスが次々登場してきている。しかし、人が手に触れて使うデバイス・ハードについては、さほど進化していない。そこで、誰でも簡単に使えて、極力シンプルなUIをつくりたいと考えた。

シンプルなUIに必要なのは、まずはボタン。ボタンの数をどこまで少なくできるかを徹底的に考えた。1個、2個3個……、4個のボタンがあれば選択・決定・戻るなどの操作がワンアクションでできる。さらに1個ずつボタンを使えば4人対戦を行うことも可能だ。そうして4つのボタンでスマートフォンを動かし、ゲームなども楽しめる「FourBeat」の思想にたどりついた。

「FourBeat」の開発資金の集め方もスマートだ。同社の資本金は300万円。伊藤氏の預貯金から捻出して、まだ外部からの投資は受けていない。伊藤氏自身の生活費などはスマートフォン用アプリ開発の受託などで賄っている。いわゆる「ラーメン代」だ。

開発資金は前述のとおり、クラウドファンディングで行っている。そのきっかけも、たまたま声をかけられた「Cerevo DASH」に出してみたところ、予想以上の反響があり、クラウドファンディングでの資金調達で製品製造設備まで行おうと考えた。

また、サンフランシスコに拠点を置くベンチャーキャピタルが主催しているスタートアップのコンテスト「SF Japan Nihgt」で準優勝し、サンフランシスコの本選にも進んでいる。そこでシリコンバレーとのつながりができたことで、米国での資金調達も視野に入った。

なお、同社は「品質」を重視しており、同社のサイト上では実際に行った「FourBeat」の落下試験の様子などを公開している。こうした「品質」への取り組みはベンチャーとしてはなかなか気が回らない点だが、そこには信頼されるメーカーを立ち上げようという伊藤氏のこだわりがある。

実際、モックアップ段階までは伊藤氏が一人でつくり上げるそうだが、製造用の金型などの設計や最終的な製品デザインはプロに依頼。伊藤氏自身はハードウェアの中で機能するソフト開発、製品としての品質を担保、販売に注力するため、そうした分業体制をとっている。

2014年内には一般販売し、まずは年商8億を目指す 将来への展望

pigmal3ハードを製造するためのインフラは整った。販売経路もAmazonや楽天、あるいはBASEやstoresのようなインスタントECが隆盛で、それらの活用を考えている。

しかし、まだ問題はある。たとえば製品を製造してECサイトで売り始めても、宣伝やマーケティングが弱ければ誰にも知られず買ってもらえない。あるいは販売するための流通プロセス構築なども個人で取り組むにはまだまだ手間がかかる。そうした分野もこれから整備されていくだろうが、まだまだこれからだ。

また、在庫の問題も大きい。「ものづくり」自体は得意だが、その先の流通の部分はまだまだ経験不足。金型から始まり、製造設備や在庫を置くためのスペース、製品の発送や注文処理などではそれなりに人手が必要となる。もろもろを勘案していくと、一般販売するまでには数千万円の投資が最低ラインだが、それらすべてをクラウドファンディングで調達することができれば、「ものづくり」ベンチャーの素晴らしい成功事例となるだろう。

「FourBeat」の販売予価は8000円。仮に年間10万台売れたとして年商8億円というのが、当面の目標だ。もちろん、「FourBeat」に続く新製品も企画中だ。

ちなみに伊藤氏は小中高とサッカー部で、尊敬する選手はキング・カズこと三浦知良選手。チャレンジャーとして前人未到の分野を切り開いてきた姿に感銘を覚えるそうだ。

日本を代表する大メーカーの創業者が持っていた開拓者精神が、時代を超えて新しい世代にも芽吹き始めている。ピグマルは、2014年、ぜひ注目しておきたい「ものづくり」ベンチャーだ。

合同会社ピグマル
代表者:伊藤 元氏 設立:2011年9月
URL:http://pigmal.com/ 著書:Android×Arduinoでつくるクラウド連携デバイス―Android ADKで電子工作をはじめよう!
http://www.amazon.co.jp/dp/4844332759/
事業内容:
1. コンピュータシステム及びアプリケーションの開発並びに販売
2. コンピュータ周辺機器の製造及び販売
3. IT活用に関する教育、研修、セミナー及び講演の企画並びに運営
4. ブログ、雑誌及び書籍への寄稿並びに公演などIT普及のための活動
5. 前各号に付帯関連するいっさいの業務

当記事の内容は 2014/1/22 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。