飲食未経験のサラリーマンがクラウドソーシングを活用して立ち上げた“たい焼き”ビジネス

スマビ総研

執筆者: ドリームゲート事務局

忍者の服を着た「たい焼き」!? 見た目と味にこだわったたい焼き屋さん 展開している事業内容・特徴

 taiyaki12012年1月、東京の下町・浅草にオリジナリティあふれるたい焼き屋さんがオープンした。その名も「忍者たい焼」。名前だけでも興味をひかれるそのたい焼き屋さんには、その名のとおり、忍者の服を着たたい焼きが売られている。そのユニークさから人気を集め、各メディアに取り上げられて、話題になっているのだ。

「忍者たい焼」は、忍者頭巾をかぶっており、また、表と裏で違うデザインになっている。片面には刀が描かれ、もう片面には「浅草」の文字が刻印されている。もう一つ、「ネクタイ焼き」というネクタイの形をしたたい焼きもあり、こちらには裏面に洗濯禁止のマークがついている。そんな遊び心が面白い。

中身の餡にもこだわりがある。スタンダードな「あずき餡」、味噌とバターとあんこを練り込んだ「味噌バター餡」、和歌山県産の高級梅干し南高梅とあんこを練り込んだ「梅干し餡」など、ほかにはない餡を用意している。

中でも「味噌バター餡」は、瀧口氏のオリジナルレシピに基づき神戸の製餡所で特殊な技術で作られている高級品。小豆餡と比較して原価が高いにもかかわらず、小豆餡と味噌バター餡のたい焼きはどちらも160円。「忍者たい焼」の経営者である瀧口温志氏は、「僕にとって小豆餡も味噌バター餡もどちらもメイン。お客さんにはどちらも同じように食べてほしいと思っている。しかし多くの人は“たい焼きといえば小豆餡”という固定観念がある。普段食べない味でも気軽に試していただけるよう、同じ値段にしている」と語ってくれた。

食感にもこだわりがあり、お客さんに焼き立てを提供したいため、注文を受けてから焼き始めるようにしている。生地の表面はサックリ、中身はしっとりした食感で、口コミでも「おいしい」という評判がどんどん広まっているようだ。

花火大会などのイベントがある日は、非日常の体験を求めてやって来る人たちの来店が多くなり、ノーマル(もしくはスタンダード)な小豆餡よりも珍しい味噌バター餡の方が売れる日もあるという。また、焼き立ての皮にソフトクリームを挟んだ「バニラソフトたい焼」というユニークなたい焼きもあり、特に夏に多く売れるそうだ。

ほかにも、クリスマスの時期にはモミの木に見たてた「X’masツリーたい焼」、お正月には羽子板に見立てた「羽子板い焼き(はごいたいやき)」など、季節の行事に応じた商品もラインナップ。今後も、ネクタイ焼きの新商品がお目見えする予定だ。

 

自分が生み出したキャラクターで勝負したいと思った ビジネスアイデア発想のきっかけ

taiyaki2瀧口氏は、8年間、大手アミューズメント会社が運営するテーマパークに勤務しており、テーマパークに出店している飲食店舗の運営をサポートする担当だった。それぞれの飲食店経営者と一緒に仕事をするうちに、自分も経営者になってみたいと思い始めたそうだ。

このフードテーマパークでは、アニメ制作会社やゲーム会社とタイアップした商品を開発して話題づくりをし、メディアに取材に来てもらい、お客さまを獲得していくという運営方針を取っていた。フードテーマパークの飲食店が、人気のアニメキャラクターやゲームキャラクタ-を各々の食材を使って再現する。そんなフードを開発すると、それぞれのキャラクターのファンが多く集まってきてくれるというわけだ。瀧口氏は各飲食店と供にキャラクターフードの企画・開発を担当してきた。

瀧口氏は、自分がかかわった企画にお客さまが集まってくれることに面白さを感じていた。これらの成功体験が自信となり、自分で事業を起こしたいという思いが大きくなっていく。そんななか、もとから有名なキャラクターではなく、自分でも新たなキャラクターをつくって成功したいと考えるようになった。

 フードテーマパークで8年間培ってきたノウハウを生かし、キャラクター商品を開発・販売する飲食ビジネスを始めることを決定。瀧口氏はこれまでの経験から、飲食の企画には詳しいが、実際に食べ物をつくる調理技術は持ち合わせていない。そんな自分が、忙しい時でも質を落とさずにすべての商品のクオリティを保つにはどうしたらいいか考えた時に思い浮かんだのが、金型を使った食品を扱うことだった。

瀧口氏は金型を使う食品の中で何がいいか考える際、「すでに馴染みがあるものをキャラクター化する方が受け入れられやすい」と考えた。その結果思い浮かんだのが、たい焼きと言う日本人に馴染み深いお菓子をキャラクター化した“忍者服を着たたい焼き”と“ネクタイの形をしたたい焼き”だったという。

これらのイメージをデザイン化するにあたって、瀧口氏には、自らのこだわりを細かいところまで表現してくれるデザイナーが必要だった。コストと時間のことを考え、複数のデザイナーに案を出してもらい、その中で自分の気に入ったデザインをしてくれた人に頼みたいと考え、クラウドソーシングサービスの「ランサーズ」を利用することに。

「ランサーズ」のコンペ形式を活用してデザインを依頼すると、希望金額をあらかじめ設定することができ、複数の案から自分の気に入ったものを選択することができる。また、平面デザインが決定後、平面デザインを3Dデータ化し、最後にたい焼きを焼く為の金型をつくる必要もある。しかし、「ランサーズ」には、立体デザインができるデザイナーも登録しており、希望通りの3Dデザインデータを作る事に成功。この3Dデータを利用して金型を製造する専門業者との連携もこのデザイナーは非常に協力的であったという。「ランサーズ」のおかげで、デザインと金型は、想像以上にスムーズに決まっていったそうだ。

準備期間に1年3カ月ほど要し、2012年1月に「忍者たい焼」を浅草にオープン。立地に関しては、「コンセプトが珍しいものなので、初期投資を大きくして、いきなり駅前に開店すると、非常にリスクが高い。駅から近いとはいえないが、“スタート地点”だということ、また、賃料とトラフィックを考慮すると、ちょうどいい場所に店を構えることができた」と瀧口氏は言う。隅田川の花火大会やお花見などのイベント時に、人通りが多い店舗があるため、イベント時は特に忙しくなるそうだ。

今後も話題づくりを続け、珍しいもの好きの人たちを浅草に集めたい 将来への展望

 瀧口氏に今後の目標を伺うと、今後も新たな試みに挑戦していきたいと語ってくれた。「“忍者たい焼”をオープンして1年半ほど経つが、メニューを固定せず自分が面白いと思う商品をたくさん導入してきた。まだまだ商品開発をする必要があるという思いでつくっている。 また、“浅草スイーツ”というカテゴリで、たい焼き以外の柱になる商品群を今後開発していきたい」。

浅草は日本で初めて映画専用の劇場ができた街。今は下町のイメージが強いが、もともとは進取気性に富んだ街。瀧口氏の思いとしては、「僕の考える“浅草スイーツ”とは、最低限の“和”というコンセプトを押さえたうえで創られる新しいお菓子の事。食べ物に限らず、今までにない新しい“和”を生み出していくクリエイティブな活動が当店の取り組みをひとつのきっかけとして浅草に広まっていくといい。日本に先駆けて新しい物を生み出すことが、浅草という街の伝統であると思っている。そして、“浅草スイーツ”という、変わったスタイルのスイーツを確立させ、珍しいもの好きな人々を集めたい」と笑う。

 店舗で販売する商品としてだけではなく、広い意味でキャラクターとしての需要を生み出すことも一つの目標だという。「何らかのかたちでメディアを使って当店のキャラクターの物語を発信したり、ネクタイ焼きを本物のネクタイにデザインしてくれる人を募集するなどして、“食べる”以外の形でも消費者にアプローチして愛着を持ってもらい、キャラクターのブランド化を実現したい」(瀧口氏)。

様々なアイディアで、浅草発の新ブランドを確立させるため奮闘を続ける瀧口氏。次はどのようなアイディアを実現してくれるのだろうか。今後の活躍に期待したい。

浅草忍者たい焼
代表者:瀧口 温志
設立:2012年1月
事業内容:
オリジナルたい焼きの製造・販売

当記事の内容は 2013/9/12 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。