経営を成功に導くIT Vol.14 甘い言葉にご用心!ERPで考える正しいシステム活用

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
最近中小企業向け にも“ERP”という言葉がクローズアップされるようになってきたようです。一体何のことなのでしょうか?ベンダさんのセールストークに負けないように、 予備知識をつけておいてください。

ERPとは?

 ERPとは、 Enterprise Resource Planningの略で、日本語の訳はあまり一定していませんが、「統合基幹業務管理」とか「企業資源管理」というように言われます。本来はシステムのこ とではなく概念のことなのですが、実質的には「統合基幹業務システム」と同じ意味合いで扱われています。

 そう言われても何のことやらよ くわからないですよね。大雑把に言ってしまうと、会計、人事、給与を始め、販売実績や在庫管理、生産管理など、企業の根幹に関わる情報を 一元管理できるシステムのことです。

 情報を一元管理すると何がよいのかというと、「経営判断が素早 くくだせる」の一言につきると思います。数人規模の小企業なら社長の目が全体に行き届くかもしれませんが、20人、30人になるとそう も行きません。ましてや事業拡大で別の分野へ手を広げようとなればなおさらです。そんな場合に販売管理・顧客管理・会計・給与などのシステムがバラバラに なっていると、情報の集計などのために必ず「手作業」をしなければならなくなり、これに大変な時間がかかるようになるのです。そこで、情報を横断的に管理 してリアルタイムかつ瞬時に集計と判断ができるようにするというのが、ERPの大きなメリットです。

 ERPの歴史は意外と長く、これま で大企業を中心に導入が進んできましたが、ここ最近中堅・中小企業向けのパッケージや、安価なASP型サービスが積極的に売り出されてきています。

食品販売会社のERP導入例

 ある食品販売会社では、こんな話がありました。こ の企業は売れ行き好調で売上高はどんどん上がっていたものの、利益がなかなか上がりませんでした。営業担当の業務をくわしく見直したところ、仕入れ管理がう まく行われていなかったためにコスト意識に乏しく、採算度外視の値引きを平気で繰り返していたことが分かったのです。

 そこで経営者は利 益管理を徹底しようと考えたのですが、そのためには単品ごとの仕入れ値、販促費などの費用、取引先ごとの値引き費用、物流費用など、さまざまな費用を考慮 に入れなければなりません。ほかにも、営業担当ごとに利益率の実績も見なければ業務改善に繋がりません。これを正確に実施しようとすれば、情報を管理して いる各システムからデータを吸い出して手作業で集計しなければならず、限られた人員で実施するのはとても難しい話でした。

 そこで導入し たのがERPシステムです。ERPには、企業活動の生データがそのまま蓄積されるので、あらゆる切り口で情報を抽出し集計することができます。上記のよう な利益管理はお手のもので、取引先別・単品別のみならず、日別や担当者別でも売り上げや利益実績が簡単に割り出せるようになりました。

  さらに、管理会計などの財務処理も得意技のひとつですので、会計処理もずいぶん効率化されました。

でも一番難しいのがERP

 このように、企業にとってはいい事ばかりのように見えるERPです が、その特徴を理解して導入しなければ、大やけどを負ってしまう側面も持ち合わせています。

 どういうことかというと、販売・会計・人事 給与・顧客管理などは企業の根幹をなす情報ですから、それを管理するERPシステムは、会社全体に影響をおよぼすので す。従って、導入に失敗すると相当に痛いのです。

 ERPソフトは製品であり、その中身を大幅に変更 することは原則として困難です。購入したパッケージないしはサービスに自社の業務を縛られることになります。つまり、これまでの業務のや り方をソフトに合わせて変更する必要が出てくるということです。

 このときもっとも厄介なのが、自社に独自の業務処理があ る場合です。ERPのソフトが対応していない場合はつくりこみが必要になりますので、せっかくソフトが安くても追加開発費用が発生します。独自処理がたく さんある場合は推して測るべし、ですね。

 従って、ERP導入に成功するには、自社の業務を末端まで正確に把握し、自社 業務を変えるべきところ、変えてはならないところをユーザー企業自身が見極めなければならないのです。これを怠るとほぼ確実に失敗しま す。実際、何も構想しないでベンダに薦められるがままシステムを入れてしまって失敗したユーザー企業の事例には、枚挙に暇がありません。

  ということで、「ERPで業務改善」という甘い言葉に惑わされず、自社の改善目的を明確にした上で、あくまで「選択肢の一つ」として検討を進めることが肝 要です。もし見合ったものがなければ「導入見送り」という選択も当然視野に入れて進めてください。
 

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