経営戦略 Vol.70 「Toka!!」や「プロボノ」という発想をビジネスに取り入れる

経営戦略

 今、人々の意識に変化が起こっています。端的に言えば、「お金のため」ではなく「自分の持てる能力を社会に役立てたい」と望む人が増えたということです。今回の震災は、そんな変化に拍車をかけたように思いますが、「Toka!!」や「プロボノ」といった新しいムーブメントが生まれているのをご存じでしょうか? こうした意識の変化を、経営者はよくわかっておく必要があるでしょう。

 

「Toka!!」という新しい等価交換のカタチ

田舎イメージ1 「私はマッサージができます!」「自分は会計の知識があるので、確定申告の時期には相談してください」とか、「球技が得意なので試合の人数が足りない場合は呼んでください」「私は不動産業界が長いので、いい物件の見方をアドバイスできます」とか・・・こんなふうに自分が人に提供できる「サービス」に便宜上1万円単位の値段をつけて、異業種交流会にてお互いに交換できる「Toka!!」という仕組みを考えた人がいます。『朝バナナダイエット』などの著書があるペンネーム「はまち。」こと渡辺仁氏が考案した「Toka!!」は、サービスに特化した等価交換システムのことで、昨年(2010年)の5月に会が発足し、現在ではほぼ毎日「Toka!!(等価)交換会」が全国のどこかで開催されるまでになっているといいます。
そもそも「貨幣」の歴史を紐解くと“価値交換”に行き当たるわけですが、その昔は魚と大根を交換するという「物々交換」の世の中でしたよね。しかし、魚や大根は簡単に腐ってしまう・・・その不便さを解消するために「貨幣」というものが誕生したわけです。ところが、貨幣経済が発達するにつれ「何に価値があるのか」が非常にわかりにくい世の中になってしまいました。お金そのものに価値があるわけではなく、お金は「モノやサービスの価値を写したもの」だったはずです。そのあたりの矛盾に、多くの人が気づき始めたのかもしれません(*^_^*)

 

「プロボノ」という新しいボランティアのカタチ

 そうした人々の意識の変化もあり、最近では「お金のためにだけ働くのはイヤだ」と考える人たちが増えています。ボランティアに向かう若者、社会起業家を志す人たちもその一例だと思いますが、一般企業に勤めている人たちの中からも「プロボノ」という活動が生まれています。「プロボノ」とは、自分がこれまで仕事上で経験してきたことやその知識・技能を活かして行うボランティア活動のこと。もともとは、アメリカやイギリスの弁護士たちが始めた無料相談からはじまったもので、ラテン語の「Pro Bono Publico(公益善のために)」を語源とした造語です。日本では、主に資金や人材不足に悩むNPOや社会起業家たちを、「自分の持っている能力で」支援しようという活動となっているようですが、たとえば、NECでは昨年の夏よりプロボノチームを若手社員15人で編成し、採血による健康診断事業を展開する「ケアプロ」と、農業の収益性向上を目指す「オリザ」を支援しています。ケアプロもオリザも、それぞれの業界内の構造改革を目指す社会起業家がつくったベンチャー企業ですが、NECチームは、ケアプロの顧客情報のデータベース化や、診断結果をグラフ化し、健康状態に応じて医療機関を紹介する携帯電話向けのプログラム開発などを行いました。
 一方、オリザに対しては、休日に栽培現場を訪れて農業専門家たちにも取材を行い、ホームページを刷新するなどの支援を行いました。NECの社員さんたちも、自分の仕事が目の前でかたちになることに手ごたえを感じているようです。同社の他にも、ゴールドマン・サックス証券が女性社員中心のチームをつくって、教育・子育て関連のNPOの財務面の見直しを支援したり、日本IBMが教育関連のNPOを支援したりという動きが広がってきています。

 

人々の意識変化はビジネスのキーである

田舎イメージ2 こうしたムーブメントからは、まさに人々の意識変化が見て取れますが、「変化」というよりもしろ、本質に立ち戻ったのかもしれません。私はかねてから『仕事は親切』と教えています。そもそも仕事の発生とは、たとえば村で鍬の刃を研ぐのが得意な人がいて、ついでに隣の家の鍬まで研いであげたところ、不器用だった隣のご主人にとっても喜ばれてお礼にお米をもらった・・・みたいなコトだったはずです。つまり、自分の得意なことを親切心から人に提供してあげて、感謝や喜びの対価としてお金がもらえる・・・というのが、とってもスタンダードな仕事のカタチなわけですね(*^^)v 今、大企業で働く人たちはとくに、エンドユーザーと接する機会が少ないですから、「自分のしたことで、目の前のお客さんが喜ぶ」という、仕事の喜びの本質に触れにくい部分もあるでしょう。そう考えると、この「Toka!!」や「プロボノ」の活動が、社員教育的な意味合いをも兼ね備えるかもしれませんが、決してキレイゴトではなく、人は人の喜びのためにがんばれる生き物なのです。お金が先ではなく価値の提供が先・・・自社の儲けのためだけに存在する商品やサービスは、次第にお客さんからそっぽを向かれ、陳腐化していくと思います。日本が大変な局面に立たされている今こそ、経営者は自社の存在意義を見つめ直し、自社とかかわるすべての人に喜びを与える、という視点からビジネスを発想すべきではないでしょうか(@^^)/~~~