起業の志:「情報革命」による権力の移行

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

いま、起きているのは「情報主権」の革命

 

 

 これから世の中に起きる第一の変革は「市場の変革」です。

 では、「市場の変革」とは何か。それを理解するためには、いま、急激に進展しつつある「情報革命」の本質を理解する必要があります。この「情報革命」とは、最近は「IT革命」という言葉が使われていますが、その前は「ブロードバンド革命」、その前は「ネット革命」、さらに前は「マルチメディア革命」などという言葉が使われていました。最近では「ユビキタス革命」、さらには「ウェブ2.0」などの言葉も使われるようになっています。

 

 このように「情報革命」という言葉の表現は、時代とともに進化しているのですが、起きていることは、ただ一つのことです。

 まさに、「革命」が起きている。

 では、「革命」とは何か。昔から「革命」という言葉の意味は、ただ一つです。

 本来、ただ「新しいことが起こる」ことをもって「革命」とは呼ばない。

 「革命」とは、「権力の移行」のことです。

 そして、「情報革命」とは、その意味において、文字とおり「革命」なのです。しかし、残念ながら、いまも多くの経営者は、「情報革命」とは「情報通信」の革命だと思っている。情報通信が、合理化され、効率化され、コストが安くなる。そのことをもって「革命」だと思っている。

 しかし実は、「情報革命」の本質は、「情報通信」の革命ではなく、「情報主権」の革命なのです。企業や市場や社会において、「情報主権」、言葉を換えれば「情報の主導権」が移っていく。これまで「情報主権」を持たなかった人々、「情報弱者」だった人々が、情報の主導権を握るようになっていく。

 その「革命」が、いま、急激に起こっているのです。しかし、残念ながら、まだ大企業の経営者の多くは、その「革命」が起こっていることに気がついていない。そして、だから、ベンチャー企業の経営者は、そのことにいち早く気がつくことによって、この「革命」を「追い風」として生かすことができるのです。

 

 

 

 

消費者は、消費者の声を聞く

 

 そして、この「情報主権の革命」が「市場」において起こるとき、「市場の変革」が始まります。これから「情報革命」によって、市場の姿が根本から変わっていくのです。それは「市場の進化」と呼ぶべき根本的な変化です。これから10年、20年かけて、市場というものの性質が全く違ったものに変わってゆく。この変化と進化の姿をしっかりと理解する必要があります。

 では、その「市場の変革」「市場の進化」の結果、何が起こるのか。

 「顧客中心市場」が到来します。

 しかし、ここで述べる「顧客中心」という言葉は、日本企業でしばしば使われる「お客様に笑顔で」や「お客さまに親切に」といった「精神論」ではありません。この言葉は、明確な「戦略論」なのです。

 例えば、インターネット革命が始まった1995年頃から、シリコンバレーなどを中心とする米国で使われ始めたのが、「Buyer Centric Market」(購買者中心市場)という言葉ですが、これは、市場において、すべてのビジネスモデルが、これまでの「販売者中心」から「購買者中心」に組み替えられていくということを意味した言葉です。同様に、この「顧客中心」という言葉も、すべてのビジネスモデルが、これまでの「企業中心」から「顧客中心」に組み替わっていくことを意味しています。

では、これは具体的にどういう意味か。

 例えば、10年前、我々が商品を買いにいくとき、どのような情報を使っていたでしょうか。実は、ほとんどが企業が提供する情報でした。新聞広告、雑誌広告、テレビのコマーシャル、店頭の商品パンフレットなど、いずれも企業が顧客に提供する情報でした。

 すなわち、ショッピングにおいて、すべて企業から与えられた情報で商品を買わされていたのが、これまでの消費者の姿だったのです。昔から「知らしむべからず、寄らしむべし」という言葉がありますが、実は、これまでの市場は、消費者や顧客にとっては、あまり多くを知ることなく、商品を買わされていた、まさに「企業中心市場」だったのです。

 しかし、そうした時代は、もう終わりつつあります。なぜなら、最近では、ショッピングをするとき、我々は、他の多くの消費者の声を聞きながら商品を選び、購入の判断をできるようになってきたからです。

 商品名で検索をすれば、商品の機能についての詳しい情報はもとより、どの店でいくらで売っているかという価格比較情報さえすぐに得られます。さらには、さまざまなブログやコミュニティで他の消費者の生の声を聞くこともできます。新たに発売された商品について、使い勝手の良し悪しや、他の商品との優劣など、率直な声や意見を聞くことができるのです。

 すなわち、ネット革命で生まれてきた「顧客中心市場」においては、消費者は他の消費者の声に耳を傾けながら、よく考えて商品を買うことができるようになったのです。

 そして、これがまさに「情報革命」の「革命」たるゆえんです。「知らしむべからず、寄らしむべし」という企業中心のこれまでの市場。その市場における「情報主権」が、企業の側から顧客の側に移ったのです。そして、顧客や消費者は、互いに情報を交換し、意見を交わしながら購買やショッピングをする「賢い顧客」「賢い消費者」になったのです。

 

 従って、皆さんが、これから起業を成功させたいならば、これまでの「企業中心」のビジネスモデルを、徹底的に「顧客中心」のビジネスモデルに組み替えるという戦略を取るべきでしょう。そのとき、皆さんは、市場において多くの顧客や消費者の支持を得ることが出来るのです。そして、皆さんのビジネスへの大きな「追い風」を生み出すことができるのです。

 これに対して、いまだに多くの大企業は、こうした「顧客中心市場」がやってきたことに気がつかず、これまでの「企業中心」のビジネスモデルに安住しています。だから、この「市場の変革」「市場の進化」は、ベンチャー企業にとって大きなチャンスになるのです。

 一昔前ならば、小さなベンチャー企業は、どう戦っても大企業に勝つことはできませんでした。しかし、これからの時代は違います。一人の起業家が、一つのベンチャー企業が、堂々と大企業に伍して新しいビジネスモデルを市場に持ち込むことができる時代が始まったのです。

 16年前、未来学者のアルビン・トフラーが『パワーシフト』という著書で、21世紀には、これまで世界を支えてきた権力構造が、すべて崩れていくということを予見しました。その「パワーシフト」が、まさにこれから市場や社会の隅々で起こっていく。

 そのことに気がついているかどうか。それが、これからのビジネス戦略において大きな分かれ道となるのです。市場における主導権が企業から顧客の側に移行している。その変化を、どれほど「追い風」にすることができるか。その変化を最大限に生かしてビジネスを展開できるか。それが正念場です。

 では、その具体的な戦略は、何か。

 そのことについて、これから述べていきましょう。

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