サイトM&Aでネット業界に新規参入

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

サイトを買収する前

マネーエージェントを立ち上げる前は、ネット業界とはまったく関係のない仕事をしていたのですが、2006年の4月から起業に向けて新規事業をいろいろと検討していました。この会社を立ち上げるにあたって、協力していただいている企業のノウハウや、自分のこれまで得た経験を活用できるように、ネットカフェやフランチャイズビジネスなど、幅広く検討していました。漠然とですが、だんだん新規事業を始めるならネット業界に参入したいと考えるようになっていきました。

 新規事業の検討と言っても、mixiやGREEなどのSNSをやってみたり、ポイントサイトの会員になって実際に体験してみたりと、遊んでいるような行動が中心でした。
 インターネットは、基本的に無料サービスが主体なので、「どこからどこにお金が流れているのか?」「膨大なサービスの開発費はどのように回収しているのか?」という収益面でのイメージが掴めていなかったので、まずは自分なりに体験し、いろいろ調べたりしました。

 ある程度ネット業界のビジネスモデルを自分なりに掴めてきたのが、7月ぐらいです。
ポイントサイトに入会して実際に試して気付いたのですが、特に金融関係は、ものすごく「お金が動いているな」と、感じました。ポイントサイトには、小売りなどほかのジャンルと比較すると、もの凄く高い報酬で出ています。

 そう考えて回りを見渡せばTVや電車、ビルの上など、どこをみても金融関係の広告がたくさん出ています。

 ネット企業の収益構造を見ると、金融業は収益性が高く、Yahooとか、ライブドアにしても、ネット企業大手は、ほぼすべて証券会社やカード会社、銀行など金融関連の事業を持っているんですよね。そして、それらが収益に大きく貢献しています。

 起業に向けた、私生活の変化も事業検討に大きく影響を与えました。

 前職の関係で3月まで広島にいたのですが、関東に戻ってきてSuica機能付とかEdy機能付とか、大きく変わった生活環境に合わせたクレジットカードに作り変えようと思いました。ネットでいろいろ調べ始めたのですが、クレジットカードの細かい情報、例えばポイントがどのぐらいつくとか、そういう情報が公式サイトにはあまり分かり易く載ってなくて、どのカードが良いのか、よく分からなかったのです。

 その時、「クレジットカードの情報サイトはニーズがあるな」と感じました。最近では、コンビニや電車、ネット決済にしても、どこでもクレジットカードで決済するという流れになってきていています。おそらく多くの人が、もっと便利に、もっと有効にクレジットカードを使いたい・切り替えたいという潜在的なニーズがあるのに、そのニーズを満たすくわしくて分かり易い情報源が少ないと感じました。クレジットカード比較サイトはすでに、とんでもなくたくさんの数が存在します。しかし、一つひとつ調べてみると、情報の質を「松」「竹」「梅」で言ったら、「竹」が非常に多いんですね。もちろん「梅」もたくさんあるんですけど、「松」がないと思いました。クレジットカードの情報サイトで、「松」のレベルに持っていくのは、「たくさんのスタッフを抱えないと出来ない事業ではない。この領域に絞れば参入できるかも…」と思いました。このような流れで「なんとなくネット業界で起業したい…」という気持ちから、ネット上で金融関連の情報を提供するビジネスに焦点を絞りました。

 

自身でのサイト立ち上げ

 実験として初めて自分でローン系比較サイトを立ち上げてみたのが2006年の8月ぐらいでした。ホームページビルダーを使って、人のサイトを見よう見真似でサイトをつくってみました。SEO対策とかも自分なりにやってみたんですけど、まったく儲からない。これは自分でやっていたら相当時間がかかり、「事業」と呼ぶには時間が掛かりすぎると思いました。
 

サイト売買、サイトM&Aを知ったきっかけ

 もともと新規事業の初速を稼ぐために「M&A」にという手法に関心があって、いろいろ探しているうちに、「サイトのM&A」という、サイトの売買市場がある事を知りました。最初、他のサイト仲介業者さんで、3,000万円とか5,000万円とか、かなり高額なサイトの商談をしたのですが、「これっていつまで利益が出るのだろう?」と、回収のリスクを強く感じました。譲渡価格は年間利益の2~3年分位でしたが、「果たして3年もつのだろうか?」という事は疑問でした。

 GoogleにしてもYahooにしても、検索結果のトップページに表示されていても、3年後にまだトップページに表示されているのか?という疑問を感じました。事業として考えたら、ちょっとリスクが高いと思いました。
その時、バトラァーズさんの「SiteM&A.jp」を見たときに、いろいろなサイトの中で収益的にもリスク的にも事業スタートにちょうど良い高収益案件があったので、買収を検討しました。最初に買収したのは、900万円のもので、収益的にも安定していました。

 

サイトを買収しようと思ったきっかけ

 クレジットカードの情報サイトを自分でゼロから構築した場合、「竹」のサイトはすぐに作れても、「松」のサイトまで内容を充実させ、それに収益が伴うまでの収益計画をシミュレーションしたところ、立ち上げから2年程度は、まともな収益が上がらないであろうと予測しました。

 会社として事業を早期安定化させるには、早い段階でしっかりとキャッシュフローを安定化させる必要があります。それを補うべくサイト買収との組み合わせを考えました。 すでに収益があるサイトを買収することで、ゆるやかにゼロから立ち上がる自社事業と、最初から収益を計上できる買収事業を組み合わせれば、高い確率で会社を軌道に乗せられると考えました。

 

サイトを買収する価値観

 自分でサイトを作れる人達にとっては、売り案件と同じものを自分でタダに近いコストで作れるのに、なんで何百万とか、数千万も出してサイトを買うのか、理解に苦しむと思います。

 しかし逆に自分はチャンスだと思いました。自分のようにネット業界に外から入ってくる人間にとっては、サイトを買収することは新規参入の大きな手掛かりになるからです。ネットの世界は、いろいろネットの経験がある人達の集まりで、すでに多くの経験を持ち、なかなか新規参入しづらく思えました。なので「ネット業界外の人間から見た切り口」を最大限に活かさないと入っていけないなと感じました。 サイトの買収はお金を出せば誰でも可能ですが、買収した後、
「1(自社事業)+1(サイト買収)を2以上にできるのか」
「サイトを買収後、リニューアルなどで価値を上げられるか」
に、ある程度の目処が立っていないと、高い買い物で終わってしまうかもしれません。

 

サイト買収において不安だったこと

 もっとも大きい不安は「どの程度、収益を回収することができるか?」ということです。
収益が発生する期間、金額ともに保証されている訳ではなく、回収に至らないケースも多数知っているので、サイト購入後しっかりと回収できるかが、最大の課題でした。

 

サイト売買が決まったときの気持ち

 まずは会社として事業開始のスタートラインに立つことができたので、「一歩前進したな」という高ぶる気持ちでした。売り手さんもサイトの売却代金を足掛かりに起業したばかりで、同じ時期にまったく逆のスタンスで起業するというのも、面白い縁を感じました。

 

サイト買収後のサイト運営

 売りに出されるサイトは、最新のデザインや、ソースではない事が多いので、そのまま運営可能なきれいなサイトは少ないと思います。それを作り替えると手間や時間がかかってしまうので、「売ろうかな?」という気持ちになるのだと思います。買収後はある程度、情報の更新やメニュー構成などユーザビリティの見直しもしなくてはいけないと思います。

 また、SEOで上位表示されているサイトを買うと、売主の保有サイトなどから買収サイトにリンクが貼ってあることで上位表示され、高いアクセス数・収益がある可能性があります。譲渡によりSEO効果(上位表示・収益)は多かれ少なかれ弱まることが多いと思います。それを買収後、どの様に補うかが重要だと思います。月に100万円の売り上げがあったサイトでも、1年もそのサイトを放置しておいたら、売り上げは限りなく0円になると思います。

 そこをいかに補っていくか、自分なりのノウハウを構築していくことが大事ですね。
 比較サイトの運営は手間が掛からないと言われていますが、譲渡による移行作業はかなり大変です。2007年の8月に、14サイトまとめて買収したのですが、広告タグが全部で4000箇所ぐらいあって、譲渡日の直後に広告を全部張り替えなければならなくて、これがけっこう大変でしたね。

 また、金融業界もいろいろあった時期だったので、広告の修正依頼が多くて、広告の張替えと修正だけを毎日やり続けても落ち着くまで1ヵ月半ぐらい掛かりました。大変な作業でした。

 

今後の展望

 これまで購入したサイトを育成(自社でのSEO対策による利用者増、サイトリニューアルによる効率化など)が当面の課題です。その次は、新たなジャンルへの挑戦ですね。

 

 

竹内の「サイトM&A ミニ講座」

 記事のなかに「買収後のストーリーを描いてサイトを買収する」ということを触れましたが、過去にSEO対策も万全で売り上げが数百万円あったサイトがありました。それをある企業様が買収し、買収前には、そのサイトをどうリノベーションをして価値を上げ、さらに売り上げを伸ばしていくか、というようなストーリーをきちんと描いた上で買収した事例がありました。

 しかし、買収後2ヵ月目に売り上げは激減し約10分の1にまで下がってしまい、描いていたストーリーとは正反対の展開になってしまいました。

 この事例の大きなポイントは「SEO」。

 このサイトは、SEOで上位表示されていたため、毎月コンスタントに大きなキャッシュを得られており、もっと掘り下げると「運営者が持っていたSEOノウハウのおかげ」で保っていたサイトだったということです。

 上記のようなことから、自社で買収する際には買収後のマネジメントのことも十分に考える必要があります。売買契約書上、SEOのノウハウが引き継げない場合ももちろんあります。自社で持っていないノウハウが必要なサイトを買収し運営していく場合や、マネジメント能力に自信がない場合は、引き継ぎの際に、しっかりと売り手さんから運営ノウハウを教授していただくか、それが(契約書上で)不可能な場合は、サイトの運営を他社に委託するなどして、いかに売り上げやPVを維持できるか、もしくは向上させていけるかを考え、一番よい方法を選択していくようにしましょう。
 

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