Vol.3 ベンチャーにとってのクラウドソーシング的な商品企画の実行のしかた

成功する商品企画

 前回はマークスタイラーとタビオの例を解説しましたが、今回はこうしたクラウドソーシングとQRをベンチャー企業が取り入れる際のポイントを解説したいと思います。一番大切なのは、クラウドソーシングとQRというのは別々のものではなく、セットで導入しなければ効果が薄いということです。
 QRのいいところは、何度も述べたように、多品種少量の品揃えを可能にすることです。そして、店頭をある意味実験場のように使って、顧客がお金を払ってくれた商品に投資を集中させる仕組みです。それに加えて、「多品種」の部分に顧客の知恵を使って、確度の高いアイディアを沢山揃えられることが非常に大切です。

ファンを多く作ってクラウドソーシングの効率性アップ

ただし、多品種の部分が、全部トンチンカンであれば、いくらQRが可能であっても、なかなか効率は上がりません。まずはクラウドソーシングで、商品やサービスを企画するために協力してくれる顧客のストックをもつことが必要です。その事例として、マイ・スターバックス・アイディア(http://mystarbucksidea.force.com/)という有名なサイトがあります。コーヒーチェーンのスターバックスが運営しているサイトですが、ユーザーからスターバックス商品やサービスに対する改善点・アイディアを募集しているのが特徴で、集まっているアイディアの数はなんと11万件を超えています(2011年9月現在)。利用者がいかに熱心にスターバックスに意見をしているかがよくわかります。 このように主体的に関わってくれるファンが多ければ多いほど、クラウドソーシングの効率性は上がっていきます。サービスだけでなく、商品であっても、試作品をつくって店頭に並べることで、リアルな顧客からのフィードバックを獲得することができます。このサービスでも商品であっても、「試作品」をローコストで作り、実際に提供しながら顧客の声を基にして改善していき、そのスピードで勝負するというのがベンチャー企業にとっての基本的な商品企画の戦略になります。

とにかくスピード感と顧客の声の収集を

人材・モノ・カネと全てが満足に揃っていないベンチャー企業が競合の大企業に勝つためには、初期においてはとにかくスピードと顧客の声を聞き続ける姿勢が全てと言ってもいいでしょう。また、クラウドソーシングというと、とかく「顧客の声」という点に気を取られすぎて、従業員の意見を見落としがちです。ところが、マークスタイラーの「おしゃP」の例を見るまでもなく、従業員が顧客の代表というような企業は結構あります。アパレルも当然そうですが、趣味・嗜好性の強い業界では従業員にしっかりと意見をいわせることがとても大切です。

イメージ2例えば、本と雑貨の販売で成長を続けているヴィレッジ・ヴァンガードでは、社員を希望するアルバイトには、棚作りを任せて、人材の適正を見ることがあるようです。書籍販売の世界というのは、再販価格制度があり、定価販売が原則で、返品が可能になっています。これを逆手にとって、新人に棚作りを任せて、ヴィレッジ・ヴァンガードにとっての新しい売れ筋を発見することを、ノーリスクでやってしまっています。ヴィレッジ・ヴァンガードにはベストセラーではないけれども、ヴィレッジ・ヴァンガードの顧客にはよく売れているヴィレッジ・ヴァンガードらしい本が沢山おいてあります。こうしたヴィレッジ・ヴァンガードならではの定番商品は、数多くの試行錯誤がどこかの店舗で行われていることによって生み出されており、一時期の90ヶ月連続既存店売上前年対比がプラスを続けることにつながっています。(現在のヴィレッジ・ヴァンガードは出店が増加した時期に、店舗が画一化したため、既存店の売上前年対比が一時的に悪化したことの反省から、再び店舗での独自性の強化に舵を切っており、直近期では既存店売上はプラスに転じています。)

もっとも効率的な商品企画とプロモーション

   こうした事例から、自社の商品やサービスが好きな人材を組織内に取り込んで、その人材のセンスや人脈を活用した商品企画やそのプロモーションがベンチャー企業には非常に有効ということがわかると思います。逆説的になりますが、自社で働きたいと思うくらいの商品やサービスを提供することで、自社のファンの人材を採用できれば、そこにぶら下がった人脈を活用したマーケティング、商品企画が可能になります。その結果、ターゲット顧客のもとに、顧客の求めていた商品が届くことになります。この好循環をつくることが、ベンチャーにとってはもっとも効率的な商品企画とプロモーションになるでしょう。

ここまで解説してきたとおり、これからはQRとクラウドソーシングは立ち上がったばかりのベンチャー企業がサバイバルするために不可欠の要素になるでしょう。成熟した日本市場でスタートアップすることを選ぶのであれば、プロダクトアウトでいきなり大ヒットを飛ばす可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。数多くの試行錯誤を、できるだけ低いコストで素早く行い、そこから顧客のことを深く理解したベンチャー企業だけが生き残っていきます。そのためにはQRと広い意味でのクラウドソーシングを仕組みとして、スタートした瞬間からDNAとして持っていることが不可欠になります。ぜひ、これからスタートアップする皆さんはここに上がった企業だけでなく、様々な企業を研究することをおすすめします。