Vol.23 「モバイル2.0」に見る次世代ケータイビジネス市場

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
3/11、赤坂プ リンスホテルで開催されたドリームゲート主催のイベント「TOKYO起業家サミット 大挑戦者祭2007」レポートの後編。 パネルディスカッション『未来のモバイルビジネスによって、人々のコミュニケーション方法を変えていく』。 のなかで語られた重要キーワードから、未来のケータイビジネスを考察したい。

「公式サイトモデルはもう終わった」 (カレシー氏:NAVIBLOG代表)

  この意見には、わたしも大いに賛成する。しかし、このカレシー氏の意見には、川上氏(ドワンゴ代表)・真田氏(KLab代表)の両氏から

「公 式サイトモデルはまだまだ終わっていない」

 と反論があった。その論を裏付けるかのように、岸原氏(MCF代表/モデレータ)からは

「伸 びなくなったと言われてますが、コンテンツ市場は現在も年2割の成長をしているんです」

 とデータ紹介もされた。多数決では「公式サイトモ デルは終わっていない」ということになってしまう。

「え? そうなんですか? 公式サイトビジネスはもう厳しいって、日経の記事でも 読んだけど?」

 と思う人も少なくないだろう。しかし、これは発言者の立ち位置による「見解の違い」なのだ。

 こ れから新規にケータイビジネスを始めようという企業が「公式サイトモデル」を軸にした事業計画書を作っていたら、誰もが即座に考え直すようにアドバイスす るだろう。公式サイトになったからといって集客が約束されるものではなくなったし、無料コンテンツが増えたことで課金コンテンツは厳しさを増している。自 由にリンクを張れないなどの制約が逆に足かせになるケースも増えてきた。一昔前のような「公式サイト化できれば収益が期待できる」という方程式は成り立た なくなっている。つまり、新規参入する事業モデルとしての公式サイトモデルは「もう終わった」と言える。
 一方、現在人気公式サイトを提供してい る企業の視点から見ると、まったく集客力がなくなったわけではない。

「ヘビーユーザーは、勝手サイトに行く。エントリーユーザーは公式サイ トに行く。そして、そのエントリーユーザーの数は多い」(真田氏)

 初心者ユーザーが利用するような、公式メニュー上位にランキングされて いるサイトは、集客を伸ばしているものもある。人気の公式サイトを運用する立場から言えば、公式サイトモデルは、「まだ終わってない」と言える。川上氏や 真田氏の立ち位置からは、まだまだ成長の余地も見えているのだろう。
 もっとも公式サイトの数が膨れ上がったために、下位にランキングされている サイトは集客できずに苦しんでいるのは事実である。

「コンテンツのリッチ化とマーケットの細分化によって、ビジネス環境は悪化してい る」(川上氏)
「公式サイトで付加価値を生んでいた企業のうち、下位の企業は淘汰されるでしょう」(真田氏)

 すべての公式サイト がハッピーなわけではない。

 カレシー氏は「今後、中小企業がどうケータイを使うかが大切なポイントだ」ともコメントしていた。
「公 式サイトモデルは終わった」発言は、これからケータイビジネス市場に参入する企業の立場からのものだろう。わたしの立ち位置も「ケータイWEBが(PCの WEBのように)広く一般の企業に活用されるためのお手伝い」と、新規参入企業サイドにある。ここに共感するベースがある。
 
 同じ 「ケータイビジネス市場」を見ていても、立場の違いでまったく違った絵が見えるというのは興味深い。しかし、この二面性が新規参入者にとっては「わかりに くい、閉鎖的な業界」と映るのかもしれない。

 

「ケータイだけで完結する 『モバイル2.0』はありえない。
ケータイでは受動的に待つ文化がPC以上に強い」(真田氏:KLab代表) 

 この コメント、言葉を補うと、

「ケータイ利用者にWeb2.0的な書き込みや投稿を期待するのは、利用者の性向から考えて難しい」

  ということ。ケータイは積極的に書き込んだり投稿したりするよりは受動的であり、メールが来るのを待って、『転送』するのを好むユーザーだという側面は確 かにある。前々回の本コラムでもケータイのCGMの話題を取り上げて「ケータイサイトにはエンターテインメント要素が必要だ」と書いたが、真田氏の主張は もう一歩踏み込んでおり、「ケータイCGMは端末からの入力や投稿に頼るとコンテンツのクオリティを期待できない。PCとの連動が必須だ」という指摘で あった。

 実際にケータイCGMサイトを運営している企業のトップのコメントだけに、ものすごい信憑性がある。ケータイでのCGMサイトを 企画・準備している人たちには貴重なアドバイスだ。

  たしかにケータイで撮影・編集した動画や画像は不鮮明&不明瞭。エンタメ以前の問題だと言われるのも仕方がない。
しかし「そんなことないので は?」と思う方は多いだろう。たとえばケータイ小説のブームがあるではないか! 
わたしもそう思ったのだが、さすが真田社長。即座に追加コメント を入れた。

「(流行っている)ケータイ小説も、ヒットしている作品は実はPCサイト経由で書かれているものが多い。ケータイでは読まれて いるだけ」(真田氏)

 そうなんですか? ショックを受けた。もっとも、「ケータイだけで執筆された」と話題になった小説もある。全部がPCで書かれているわけではない。わたし自身がこれまで関 わってきたサイトでの例を思い起こしても、ケータイからのテキスト書き込みだからという理由で文章のクオリティが低くなるとは思えなかった。
そん なところに川上氏からこんなコメントがあった。

「『しょこたんぶろぐ』 はケータイで見るとすごく見やすい。彼女はきっとケータイでブログを書いていると思う」

 『しょこたんぶろぐ』がケータイで書かれているら しいことは他からも耳にしたことがある。彼女のブログの人気のヒミツは個性的なコンテンツと更新頻度にあると思う。日に何度も更新される頻度そのものがコ ンテンツの魅力になりえるなら、ケータイCGMは圧倒的に有利だ。コンテンツのクオリティだけがCGMの優劣を決めるものではないと思うのだ。
  むしろターゲット設定やケータイの特性の活用、利用促進のモチベーションづくりまで含めた運営や演出方法の工夫にカギがあると思われる。どちらかというと ユーザビリティやシナリオライティング、心理学や舞台・映像の演出などの世界と近いのではないだろうか。
ケータイならではのサイト作りの方法論や 盛り上がり方の法則が確立すれば、PCなしでも十分に楽しめるCGMサイトは成立すると思う。

 少し話がそれるが…

「ケー タイがどういうものか、を知らない人たちが作っているのが現状 。ケータイでビジネスを始めようという人が、ユーザー視点から考えるならチャンス」(岸原氏)

 というコメントもあった。本当にそのとおりだ と思う。これまでケータイサイトづくりに携わってきた人たちのなかには、「自分はケータイメールを使ったことがない」と豪語する人もいた。ついつい、PC 的なコンテンツ作りをしてしまうから、PCの助けが必要になるのではないだろうか?ケータイならではのサイト作りに精通した人たちが登場するのが待たれ る。そして、パネリストたちはそういう人たちの登場をどこか恐れているようでもあった。

 出よ、ケータイ100%の起業家!
 

「ケータイEC市場が、PCのEC市場よりも大きくなるという確信を持っている」(真田氏)

  この言葉には、正直、励まされた気分になった。ケータイの通信環境が整った時点では、たしかにそうなるとわたしもそう思う。ただケータイで商品を見つけて ケータイ上で検討して決済する、という購入プロセスは少数派で、テレビや雑誌などさまざまなメディアを通じて商品を知り、さまざまなメディア上で検討し、 最後に信頼できる決済マシーンとして利用されるという購入プロセスが主流になるという補足付きで。
 
  真田氏によると3月18日に首都圏で導入される交通機関決済システム「パスモ」の普及に引きずられておサイフケータイを利用する人たちが増加する見込みと のこと。さらにリアル決済に使われていた決済がネットでも利用できるようになってくるという(ドコモのiDでの決済を勝手サイトが利用できるようになるそ うだ)。
 
 ケータイ通販が伸びると、それに追従して広告市場が伸びるという話もあった。それは自分自身も体験している話なのでよくわ かる話だった。お金を使う(買い物をする)人たちが集まるケータイサイトは、広告の効果もよい。

 モノが売れるサイトであるというこ とは、ターゲットがきちんとセグメントされていて、利用者との適切なコミュニケーションが行われており、また、利用者がサイト上の情報を見て財布を開く用 意がある、という前提条件が満たされているということなのだ。

「PVがちょっと少ない」
 などと疑ってはいけな い。実は広告のコンバージョンを稼げるのはそういうサイトだ。言い方を変えると、EC市場が伸びると業界全体が豊かになるということでもある。

  ケータイECを企画している皆さんにエールを送ろう!
 

「FROM JAPAN TO THE WORLD!」(カレシー氏)

 携帯端末販売、モバイルコンテンツ、モバイルマーケティング、ケータイ通販…いずれも日 本が世界に先駆けて市場を作ってきた。

「モバイルは『日本発』が通用するマーケット」(川上氏)
 とか、
「日本から世界に 発信してゆこう!」

 とかはよく言われるフレーズである。しかし、ご存じのとおり、携帯端末市場では日本の端末メーカーが世界市場に出遅れて いることが大きな問題になっている。最近の海外のモバイルマーケティングの盛り上がりは、WEBを覗いてみただけでも実感できる。日本のプレイヤーたちは 「俺たちこそが先頭ランナー」と思っているかもしれないが、実はマーケティングや同ソリューションの部分ではキャッチアップされかけているのではないか、 と心配で仕方ない最近なのだ。

 掛け声だけでなく、本当に海外市場に出て行くのが正解なのだろうと思う。実際、カレシー氏の NAVIBLOG社は、中国やフランスをはじめ世界8カ国に進出するなどと、ビジネスの芽が出てきているという("mobile marketing china"のキーワードでGoogleのトップを獲ったという話も…)。
 日本では、起業してから2年少々で「モバイル・グローバル・カンパ ニー」になってしまうこの波、乗るなら早いうちがいいに決まってる。

 わたしも今年は具体的なアクションを起こそうと思った。

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