起業アイデア 第7回 学習テーマ【開業資金の調達】

第2クール

利用可能な調達先を徹底的に調べ上げること

解説

【身内や銀行は調達先の一部にすぎない】

生協活動を通じて安全な食に関する学習を重ねてきたシ ングルマザーの餡藤優子さんは、自動車を使って、自らがつくる餡パンを販売することにした。だが開業資金が不足。そこで生命保険の解約を申し出たところ、 担当者から「あなたならいろいろと融資が受けられる」と教えられ、最終的には 3ヵ所から合計 300万円を借り入れた。彼女は一体どんな機関から融資を受けたのか?

ひとつひとつの説明は後に回して、先に餡藤さんが活用した借り入れ 先とその制度名を紹介しよう。まず、民間生命保険会社の契約者貸付制度、これで50万円。次に自治体が設けている母子福祉資金の事業開始資金、これで 100万円。さらに中央労働金庫のカーライフローン、これで 150万円。合計で 300万円を借り入れたわけだ。

餡藤さんは、当初こうし た借り入れ先があることをまるで知らなかった。起業を志しながらも、開業資金の調達方法について研究ができていない人は、実際のところ多い。たいがいの人 は、「身内に融通してもらうか、銀行から借りるか。でも、銀行は無理かなあ」といった認識にとどまっているようだ。確かに身内も銀行もありだ。しかし、そ れらは数多くある調達先のほんの一部に過ぎない。

では開業資金の調達先、あるいは調達方法というのはどれくらいあるのだろうか。これは資金 調達を図る人の属性や条件、あるいは予定している事業の種類などによっても異なってくるが、それでもおおむね10種類以上の方法はどんな人にも当てはまる はずだ。

【借りる以外にも調達方法はたくさんある】

そもそも資金調達方法は、 『借りる』だけではない。会社などの法人を設立して、『出資を受ける』こともできる。出資というと大げさに聞こえるかもしれないが、ベンチャーキャピタル などから大口の出資を受ける方法だけでなく、事業への賛同者を数多く集めて、小口の出資をたくさん受ける方法もあるのだ。

また、寄付をして もらう。補助金や助成金を交付してもらう。起業コンテストの賞金を獲得するなど、『もらう』ことも可能。さらに自動車や各種の会員権、貴金属などを持って いれば、それらを『売る』という手段もある。

あるいは、すぐに開業しようとせずに、『貯める』方法もある。期間を決め、大変でも高額の給与 が得られる仕事に就く、または本業に加えて副業やアルバイトをするなどの選択もある。一方、『資金をかけない』という考え方もいい。当初は自己資金内で始 められる業態や規模に抑え、成長とともに業容を拡大していけばいいのだ。

【借りるなら公的資金 が断然有利】

餡藤さんは数ある調達方法の中から『借りる』を選んだ。確かにこの方法は一般的だ。だが借りるにしても、借り方や借り入れ先 は多彩。大事なことは、その中から調達コストが低く済む、つまり、金利や返済条件が厳しくない相手を選び出すことである。

家族や知人などは 別として、調達コストが低いのは公的資金だ。具体的には国民生活金融公庫や沖縄振興開発金融公庫などの政府系金融機関の融資制度、または都道府県や市区町 村など自治体の融資制度が代表的だ。これらは年利だけを見ても 1~ 2%台で、実質年利が30%近くになる消費者金融ローンなどと比べれば、いかに有利な借り入れ先かがわかるだろう。

【使える融資制度はまだまだある】

前記したような公的融資制度はポピュラーなほうで、さらに調べ れば、まだまだ使いやすい融資制度はある。餡藤さんが活用したのは、そうした「知らなければ知らないまま」になってしまいがちな制度ばかりだ。

解 約返戻金のある保険や共済には、ほとんど契約者貸付制度が設けられている。払い込んだ保険金が担保に相当するので、原則的には無担保・無保証人で借り入れ ができる。餡藤さんは、めいっぱい借りるつもりなら、この制度で80万円は借りることもできた。だが、そうしなかったのは、「無利子」という、驚くような 融資制度が別にあったからだ。

自治体が設けている母子福祉資金の事業開始資金だ。これは母子家庭の母、または以前、母子家庭の母で現在も配 偶者のいない女性を対象にした融資制度。ただし、融資額の半額以上の自己資金を有していることが融資条件となる。そこで餡藤さんは、先に生保会社から50 万円を借り入れ、その50万円を自己資金として、ちょうどその倍に当たる 100万円を借り入れたわけだ。

さらに餡藤さんは生協組合員であ ることも活かした。生協や労組の組合員を対象にした中央労働金庫という金融機関もあるのだ。ただしこの機関には開業資金の融資制度は用意されていない。で は餡藤さんはどうしたのか? マイカー購入者のために設けられたカーライフローンを使って 150万円を借り入れたのだ。移動販売という業態がうまくはまったわけである。このように、事業用資金以外の融資制度を活用できるケースもあるのだ。

 

今週のキーワード<公的融資>

公的融資制度は「民業を圧迫しない」という建前から、ほとんど宣伝を行っていない。だが、少しでも調べたり学んだりすれば、必ずこれらに
関する情報には出合うはず。要は、きちんと勉強せよ、ということだ。