起業アイデア 第10回 学習テーマ【収益計画の大切さ】

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

人気店なのに月商が低いおにぎり屋。なぜ?

解説

【学生街特有のリスクに注意!】

大学卒業と同時に、出身校の近くにおにぎり屋を開業したオニギ リジョーさん。母校の後輩たちを中心に、平日は平均70人の来店者がある。客単価は300円。月25日稼働で50万円以上の月商になるはずだ。だが1年 後、計算してみると平均月商は30万円。これでは苦しい。一体なぜそんな数字なのか? また、どうすれば売り上げをアップできるのか?

多 くの大学は前期が4月から7月、後期が10月から1月。冬休みもあるから、学生がキャンパスにやってくるのは、1年のうち7カ月半程度になる。つまり、オ ニギリさんのメインターゲットは、年間3分の1以上、店の前すら通らなくなってしまうのだ。通常の月で50万円を稼げても、大学が休みの月は、その半分に も達しないだろう。その結果が平均月商30万円という数字である。学生街での店舗ビジネスには、こうしたリスクがある。

しかし、そんな単純 なことに、なぜオニギリさんは気づかなかったのか。恐らくは、「おにぎり屋を始めたい」一心で、早く、安く開業することに目を奪われ、「おにぎり屋を続け る」ための課題に目が向かなかったのだろう。そして実際、古い乾物店の一角を借りられたことで、「おにぎり屋を始められる」ことに舞い上がってしまったの だろう。

【粘り強く、緻密に収支を予測する】

別の観点でも、オニギリさんの失 敗を指摘することができる。収支計画を立てていないと思われることだ。これをやっていれば、大学の休み月がピンチになることは簡単にわかったはず。

収 支計画とは、その名のとおり、収入と支出とを予測して、経営を成り立たせる数値目標を割り出していくことである。収入は同業者の相場やエリアの特性を考慮 し、設定した商品単価×予測販売個数で算出できる。もちろん、厳しく見積もった数字を出しておくことが大切だ。おにぎり屋のような「デイリービジネス」な ら、収入は1日単位で予測可能。そして、曜日による変動を見込めば1カ月単位の予測ができる。さらに月ごとの変動も見込めば1年間の予測数字が出る。

支 出の算出は多少、複雑だ。家賃や水道光熱費、仕入れ費、出勤交通費、通信費、保険費、消耗品費、宣伝費、修繕費など、さまざまな項目の、さまざまな金額が、さまざまな タイミングで出ていくことになるからだ。なのでとにかく全項目を列記して、月ごとに、さらには1年間で合計して、いくらになるのかを粘り強く算出すること だ。

まずは、そうやって開業1年目の収入と支出を予測する。さらにこの数字を、2年目、3年目……と算出していく。その結果、何年やっても 黒字にならないとしたら、そのビジネスは失敗するので、収入と支出のバランスを考え直す。そうやって事業を継続・発展できるように計画していくのだ。

【コストは低い。あとは売り上げアップだ】

もし仮に、オニギリさんが収支計画を立てていたとし て、「通常月の売り上げで、休み期間のマイナスを埋めるつもりだった」と言うのなら、それは、通常月の収入を過大に見込みすぎていたことになる。いずれに しても計画と呼べるようなものではない。

さいわい店舗維持にかかるコストは安い。売り上げを改善できれば、十分、この店で商売を続けていく ことはできる。そのためには、学生以外に客層を広げて「休み枯れ」を克服すること、現在の300円という平均単価を引き上げること、通常月の来客数(販売 個数)を引き上げること、これらを目指す必要がある。

【商品ラインナップの見直しが必須】

実 は、客層拡大も、単価アップも、来客数アップも、全部可能である。というより、これらは一体的に改善できる。惣菜類を提供することだ。おにぎりだけで勝負 をしようとしたところに、オニギリさんの大きなミスがある。惣菜類をそろえ、ランチ時にはセットメニューにして500~600円で販売すれば、言わずもが なだが、学生以外の客層にも訴求できる。もちろん学生にも売れる。結果、すべての数字が改善されていくはずだ。

オニギリさんが、きちっと マーケティングができる人であれば、この程度の方法はとっくに実践できていただろう。だが、彼にはそのこ力はなかった。それでも、収支計画を真面目に立て ていれば、おにぎりと味噌汁だけでは収入が厳しいことに気づいたはずで、それがきっかけとなって、商品ラインナップの見直しを図れた可能性は大きい。

 

 今週のキーワード<逆算>

「収支を予測する必要はわかるが、何年も先まで考えても意味がないのでは」と思う人がいるかもしれない。確かに計画を立てたところで、計
画どおりにいくものでもない。だが、3年後、あるいは5年後といった先の目標を持つことで、そこから逆算して、2年目、1年目に、どれくらいの
業績を達成すればいいのかが見えてくるのだ。大きな目標にもとづいて、小さな目標を設定するのが事業運営の基本である。

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