小規模ビジネスは特売に手を出してはいけない

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
「何を売るのか」 についての考え方を深めましょう。「自分が売り続けていけるものを売る」その上で小規模ビジネスが売るべきものについてお伝えします。

 

スーパーで売っている「白物4品」とはなにか?

  今回も、「何を売るのか」についての考え方を深めていきます。今回は身近な題材を使って話題を進めていきます。そのうえで『商品のライフサイクル』を思い 出してください。要点はシンプルでしたよね。「自分が売り続けていけるものを売れ!」でした。その前提に立っての今回です。

  さて、「白物」という言葉があります。一般的には、衣類関連商品をイメージする人が多いと思います。あるいは電気冷蔵庫や電気洗濯機など、いわゆる「白物 家電」を思い出す人もいるかもしれません。でもこれから紹介する白物は、スーパーマーケットの食品売り場に置いてある商品のことです。業界では「白物4 品」などと呼んでいるようです。

 

 さて、その4つの商品とは何でしょう?わかりましたか?白い食品ですよ。…では答え。パ ン、牛乳、豆腐、鶏卵です。もっとも最近の鶏卵は赤いものが増えていますが、まあ、それはいいとしましょう。

 

 この4品。 共通点は、そういうわけで「白い」ことですが、もちろんそれだけではありません。どれも特売の定番商品なのです。もっとも最近はパンにも牛乳にも豆腐にも 鶏卵にもブランドものが登場しているので、この4品なら、どこの商品でも無条件に特売の定番になるとは言えなくなりました。とはいえ、この4アイテムが 「生活必需品」であることには変わりなく、だからこそ現在も特売の切り札となっているのです。

 

特売品は集客のための宣伝材料

 例えば朝刊の中に、2つのスーパーのチラシが折り込まれていたと します。それぞれが特売品をアピールしています。A店では食パンが98円、鶏卵が90円。B店では食パンが80円、鶏卵が75円。食パンも鶏卵も同じブラ ンドの同じ商品だとします。あなたなら、どちらのスーパーに足を運びますか?店までの距離に差はないとして。普通B店ですよね。

 

  というわけで、その日はB店にたくさんのお客さんが訪れました。しかし、B店は特売品の価格を仕入れ値以下に設定しているでしょうから、全品を完売したと ころで1円の儲けにもなりません。だとすると特売品は何のためにあるのでしょう?

 

 言うまでもないことですが、特売品は利 益を得るための商品ではなく、集客を目的にした、いわば宣伝材料です。来店した人全員が、食パンと鶏卵だけを買って帰るということはさすがに考えにくいで すよね。ほかの生鮮品や加工品、あるいは雑貨なども同時に購入するのが常です。そちらでしっかり利益を取ろうという作戦です。

 

  もっと言えば、食パンや鶏卵のすぐ横に利益率の高い商品を並べておき、それらを衝動買いさせるという作戦も成り立ちます。成り立つというか、実際にどこの スーパーでもやっていることです。実際、私自身しょっちゅうその作戦に引っ掛かっています。作戦だと知っているなら自制しろよと、自分に突っ込みを入れた くなります(笑)。とくにパンを買ったついでの高級ジャム衝動買いは、いい加減にやめねばと思っているのですが…。おかげで自宅の冷蔵庫の中は、色とりど りのジャムが並び、それはそれは華やかです(笑)。

 

小規模ビジネスは特売に手を 出してはいけない!

 さて、誤解を招いてはいけないので、そろそろ伝えておきますが、私はみなさんに特売による販売促進を奨励しているわ けではありません。むしろ逆です。大手スーパーや大手ドラッグストアなどのように、大量仕入れによる低コスト仕入れが可能で、なおかつ、多品種の商品を取 り揃えて販売機会を増やし、それらで利益を確保できるという読みが立つならかまわないのですが、小規模の小売業がこの方法を取るのは危険極まりないことで す。

 

 小規模店舗の場合は、特売品だけをまとめ買いされておしまい、ということが起きるからです。利益が出る通常価格商品 は購入してもらえず、それどころか特売品に設定した商品は、それ以降、通常販売しようとしても売れなくなることも考えられます。

 

  では一体、私は何を勧めているのか?結論はちょっと後にして、私の「まったくもっていい消費者ぶり」を示す話題にもう少しお付き合いください。

 

インテリアショップの店先にあった素敵な小物

 私がまんまと店の作戦に引っ掛かるのは、スー パーでの買い物に限ったことではありません。こんなこともありました。インテリアショップの店先に置いてあったランチョンマットを気に入り、手頃な値段 だったのでそれをつかんでレジに向かった時のことです。

 

 今から思えば支払いをしようとして店内に入ったのがまずかった。 もっとも店内に入らないと代金が払えないから仕方ないのですが(笑)。しかし、やはりそれがまずかった。店内に展示してあったオシャレなベッドカバーに目 が留まってしまったのです。グラっときて、結局当初は1000円ちょっとで済むはずだった買い物が、気がつけばウン万円以上の買い物に化けていました。似 たような話は枚挙にいとまがありませんが、その他は割愛します。

 

同じ目玉商品で も異なる仕掛け

 さて、ここまで私の2つの「衝動買い」事例を紹介しました。パンを買ったついでのジャムと、ランチョンマットを買ったつ いでのベッドカバー。私にしてみればどちらも「引っ掛かった~」なのですが、売る側が仕掛けたワナの種類は、実はまったく別物です。

 

  パンもランチョンマットも客を引き寄せるための目玉商品という点では同じです。が、特売のパンは、すでに説明したようにそれ単体では販売利益を生みませ ん。一方のマットはどう見ても50%以上の粗利益を確保しているはずです。前者は徹底して価格の魅力で勝負。これはハッキリしています。しかし後者は、必 ずしも価格の魅力で勝負というわけではないのです。では、何で勝負しているのでしょう?

 

 そもそも私がそのマットにつか まってしまったのは、それが「必需品」であるはずもなく、また「異常に安かった」からでもありません。あってもなくてもいい品物なのですが、「値段の割に 素敵だった」からです。わかりましたか?勝負どころの違いが。

 

 小規模の店舗ビジネスにも目玉商品は必要です。とくに高額 商品を扱う店舗の場合、店内にお客さんを引き込むための仕掛けは不可欠です。ただ、その「目玉の意味」がスーパーとはまるで異なるのです。もちろんお客さ んが気軽に手を出せる価格帯の商品でなければ目玉にはなりません。しかし、価格面と同じくらいに、あるいはそれ以上に大事なことは、その目玉商品が「店の コンセプトやオーナーのセンスを十二分に体現したものである」ことです。この点が特売品との決定的な相違です。

 

目玉商品を軽視してはいけない!

 極端な例で説明します。私がランチョンマットを気に入った理由 は、その色柄でした。「よくぞここまで私好みの商品があったものだ」と感動しながら店内に入ります。すると(ここからは仮の話ですが)、それとまったく同 じ色柄のソファーが目の前に!!私は確実にグラグラになるでしょう(笑)。ここまで極端な「つながり」ではなくとも、その店のテイストが目玉商品にもしっ かり反映されていることが他の商品の購入をいざなうのです。

 

 繰り返しますが、小規模店舗ビジネスにとっては、特売品イ コール目玉商品ではありません。「手頃な価格で、なおかつその店らしいセンスにあふれた商品」これが目玉商品の条件です。もちろん狙う層によって取り扱う 商品の価格帯は大きく異なりますが、その価格帯の中でもしっかり(店舗コンセプトによってはさりげなく)目玉商品を用意しておくことが大切です。

 

  簡単な消費者心理です。初めに「高くて素敵なもの」を見せられると、消費者は「素敵だけど高い」あるいは「高いから素敵なのは当然」という思いを抱き、最 終的にはその店の印象から「素敵」が消えて「高い」ばかりが残ってしまうのです。ところが「手頃な価格で素敵なもの」を見せられると、その店に対する肯定 的な評価(自分がその店の顧客になり得るという自己肯定感)が形成されます。そうなれば、たとえ他の商品がそれなりに高かったとしても、「素敵な店」であ るという評価自体は揺るがなくなるのです。

  

何を売るのか? 答えは自分の中にある

 ここまでの話から、皆さんは商品を「どう組み合わせて売るのか」や「どのような価格 で売るのか」に関する視点を得たのではないかと思います。しかし、話題の根本は、あくまで「何を売るのか」にあります。

 

  お客さんを引き寄せる目玉商品も、しっかりと利益を出す商品も、その店のコンセプトを十分に体現した、言い換えれば、他店とは異なるセンスを存分に醸しだ したものを売る! これが小規模の店舗ビジネスにおける「何を売るのか」の答えです。

 

 冒頭で「思い出してほしい」と私が 言った『商品のライフサイクル』の結論と今回の結論を重ね合わせてみてください。何を売るのかの答えは、とことん起業家自身にかかっていることがわかると 思います。敵を知り、己を知れば百戦危うからず。つまり標的マーケットの特徴を徹底して理解することと、自分自身の適性や能力、センス、志向をよく認識し ておくことが、売るべきものを正しく選択するための必須条件だということです。

 

 今回は小売業を題材にして「何を売るの か」を考察しましたが、ここで提示した考え方は、言うまでもなく飲食店業やほかのサービス業、さらにはさまざまなB to Bビジネスにも応用できるものです。実際、次回のこのコーナーではB to Bビジネスにおける目玉商品と利益商品の関係をモチーフにして、さらに「何を売るのか」の視点を深めていく予定です。

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