従業員のやる気を引き出す技術

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

出題・解説:羽根 拓也(アクティブラーニングスクール代表)

http://www.als.co.jp/

従 業員のやる気を引き出すことは、起業家として重要な仕事である。給与額をあげる?競争で競わせる?我々アクティブラーニング社でもさまざまな方法を模索した結 果、もっと本質的な問題が社員のやる気にかかわっているという結論にたどり着いた。今回は従業員のやる気を引き出す技術について考えてみたい。

私 が経営する株式会社アクティブラーニング(以下、AL)では、多くのボランティアスタッフが働いている。大学生から社会人まで、総勢50名を超える人々 が、文字とおり、無償でAL社の業務をサポートしてくれている。通常の雇用関係にある社員、つまり給与を支払う社員は数名しかいないので、実際にはほとんど の業務をボランティアスタッフが回していると言える。

この話をすると多くの人が信じられないという顔をする。「どうして無償で働いてくれ るのか?」「ボランティアで仕事の質は落ちないのか?」こういった質問に対して、「給与を支払うスタッフ」と「給与を支払わないスタッフ」の両方を採用し てきたという立場から自信を持って言えることがある。それは、従業員の仕事の質は「給与の額」と正比例しないということだ。

従業員のパ フォーマンスをあげるためには、給与の額を上げなければと考える経営者は少なくない。しかし、給与の額が仕事の質と比例するのであれば、世界最高の給与を 支払う会社が、世界最高のパフォーマンスを従業員から引き出せるということになる。しかし、高い給与が必ずしも望ましい結果につながっていないという事例 は、プロスポーツチームの例を見るまでもなく、枚挙に暇が無い。

なぜか?それは人が仕事をする理由が、「お金」だけにあるわけではないか らだ。多くの人が、仕事に対していかに「価値」を感じられるかで仕事をしている。実はここにこそ、「人を動かす技術」が隠されている。そのことを実感する ある出来事がAL社の中で起こった。まだAL社が通常の会社のように、賃金を支払うスタッフが中心であった時期のことである。

自分の指導 力の無さを嘆くある新人講師が、指導力を向上させるための勉強会のようなものを開きたいと言ってきた。その講師は大変熱心であったために、勉強会は業務外 でもいいから開きたいと言ってきた。私はその心意気に賛同し、忙しい中、私自身も参加することを約束し、他の講師にも声をかけてみた。

こ のけなげな提案に対する結果は、一部の講師からの反発という予期せぬ結果をもたらした。ベテラン講師のほとんどが参加を断ってきた。それどころか、そう いった提案をされること事態が迷惑であるといった態度を示す者もいた。理由を聞いてみると、業務外の時間、つまり私的な時間を犠牲にしてまで仕事に関わり たくないということであった。参加するとしたら、業務外手当てをつけてもらうことが条件だと言う者もいた。

スタッフの意見を聞くうちに、 彼らの中に、仕事に対して、異なった二つのアプローチがあるということに気がついた。自分の時間を使ってでも「仕事」をしたいと言うアプローチと、金銭を 得られるのであれば「仕事」をしたいというアプローチである。前者は仕事そのものに「価値」を見出しており、後者は「金銭」に価値を見出しているのであ る。

金銭に価値を見出している人を満足させるためには、より多くの金銭を与えるしかない。しかし、仕事そのものに「価値」を見出している 人には、より多くの「価値」を与えることが重要なのだ。自分自身、思い当たる節があった。仕事の合間に、私的に所属していた NPO団体があった。お金を払ってもらうどころか、参加費用を取られていたが、行く度にその会に強い魅力を感じていた。だから、その会に働かされていると いう気持ちは全くなく、喜んでその会の発展のために尽力した。

この経験から、自分の会社そのものの対して、「価値」を作り出すことが重要 であると考えるようになった。「AL社で働くことが価値あることだ」と感じてもらえるように、さまざまな点から業務を見直していった。そして実際に新スタッフ を採用する時にも、ALの「価値」について強くアピールし、そのことに心底、共感してくれる人を採用していくようにしていった。結果は驚くべきものであっ た。AL社で働きたいという人が増え始め、最終的にはボランティアでも手伝いたいという人が列をなすようになっていった。

人を動かしたい と思ったとき、金銭を支払うという選択肢以外に、「価値」を生み出すという考えもあわせ持つようにしてほしい。人は「価値」があると思える時に動き出す。 この原則を理解していれば、あなたの事業に対して、金銭を超えた力を集めることも可能になる。そしてもう一つ忘れてはならないこと!それはあなた自身にも この原則があてはまるということだ。あなたが日々やっている仕事、あるいはこれから始めようとしている仕事に対して、あなた自身、金銭を超えた「価値」を 感じているだろうか?「価値」を作り出すことが、人を動かす秘訣である。

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 【羽根 拓也 プロフィール】

日 本で塾・予備校の講師を勤めた後、1991年渡米。ペンシルバ大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカでも高い評価を受 け、94年、ハーバード大学より優秀指導賞(Certificate of Distinction in Teaching)受賞。「知識を与える教育」から、「自己成長力を向上させる教育」こそが、世界に求められていると考え、97年に東京に「アクティブ ラーニングスクール」を開校。これまで日本にはなかった「自己成長力」を育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。独自の教育理論えおその指導 方法に、有名企業、政府関係機関、教育機関などより指導依頼が絶えない。

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