知的財産:Vol.40 『コピー商品』と『便乗商品』のボーダーラインはあるのか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
先日、タレント田中義剛さんの会社「花畑牧場(北海道)」の「花畑牧場の生キャラメル」のコピー商品が販売され容疑者が逮捕されましたが、法規制強化や会社の社会的責任が強く叫ばれる昨今でも、一向に偽物商品の販売が後を絶ちません。課題や対策を説明したいと思います。

コピー商品の販売がなぜ問題なのか

 今回のコピー品の販売の嫌疑は、『不正競争防止法違反』です。他人の名声にただ乗りして、他人の商品などの表示を用いて、なりすまして商品の販売を行う行為は原則、不正競争行為として禁じられています。本来なら本家の商品が売れて、本家に正当な利益が入ってくるところ、コピー商品の業者が不当な利益を得るわけですから、問題があるのは明らかだと思います。

 一方で、単に販売当事者だけではなく、消費者にも不利益が及ぶケースが意外と多いことから、コピー商品の販売は厳に慎まなければなりません。最近も別の事件で、やはり『花畑牧場の生キャラメル』のコピー商品が販売され、そのコピー商品からメラミンが検出されることがありました。本家は品質をしっかり維持している中、偽物は品質的に信頼ができなかったり、この事件のように有害な商品であるケースもあるわけです。つまりコピー商品は、『百害あって一利無し』なのです。

 

便乗商品もすべて悪いの?

 では、コピー商品とは言えない便乗商品はどうなのでしょうか?便乗商品とは、特定の商品の話題に乗じて利益を得ようとする商品で、例えば、生キャラメルを独自のパッケージと商品名で販売することです。便乗商品とはいえ、特許権で保護された商品である場合など特別な場合を除いて、まったくのコピー商品ではない一般的な物を独自に販売することは許されると考えられています。単に、誰もが自由に売ることができる一般的な商品を販売するにしかすぎないからです。もちろん、他人の商品と混同させて利益を得ようとする意図のある便乗商品は、許されるものではありません。

 

同種の商品を販売した場合の留意点

 とはいえ、便乗商品がOKな場合であっても、留意が必要です。最初に説明した事件のように、故意に真似たようなケースはともかく、結果として他人の名声にただ乗りしたり、他人の名声を毀損したり希釈化させたりしていると見なされてしまうようではいけません。例えば、パッケージを色遣いを同じにしてしまうとか、『HB牧場の生キャラメル』というような紛らわしい表示にすることは、仮に不正競争の意図が無くてもやるべきではありません。

 つまり、最大の留意点は、消費者に自社の独自の商品であることを、明確に知らしめる商品名なりパッケージにする必要があるということです。“少しでも消費者が紛らわしいと思う形にしてはならない“と考えるのが良いでしょう。

 

意外な落とし穴

 他者のパッケージや商品名と紛らわしくない梱包にしたつもりが、意外な落とし穴にはまって、不正競争防止法で処罰されるケースがあります。実際、私自身帯広に出張した折りに、いくつかのお土産屋さんを回ってみて、不安を感じた点があります。というのは、生キャラメルの梱包が、平べったい円柱状の形をしているケースが多いのですが、同じ冷ケースで売られているお土産に、やはり平べったい円柱状の形をしているケースに入れられたチーズが売られていたのです。一見すると、生キャラメルなのかチーズなのか判別がつかないのです。つまり、生キャラメルだと思って買ったら、実はチーズだった、なんてことが起りかねないのです。これは、品質誤認を生じるケースで、食品偽装と同じ不正競争防止法で処罰の対象になりかねません。食の安全を含め、消費者が非常にナーバスになっている状況からすれば、いろいろな角度からの検討が必要になっています。

 コピー商品と便乗商品に関しての、ボーダーラインは明確ではありません。大切なのは、商品化をもくろむ際に競合商品を参考にする際に売れている『本質』を掴むことです。

 お客さんに示すべきは商品に対する自らの想いであり、他人の真似ではない独自のコンセプトを、オリジナルな表現で明確に示すということなのではないでしょうか。

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