知的財産:Vol.53 自分のビジネスプランを守る方法はあるのか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
「今までに無い画期的なビジネスプラン(ビジネス方法)を考えついたので、特許で保護できませんか?」こんな質問を多く受けます。しかし、その大半が、現状の特許制度では保護されないケースです。では、新しいビジネスプランを独占的に守る事ができる制度は存在しないのでしょうか? ビジネスプランの保護の実情と、対策を説明していきます。

ビジネスモデル特許があるのでは?

53-1 かつてビジネスプランの保護手段として、ビジネスモデル特許が騒がれた時期がありました。では、そもそもビジネスモデル特許とは、どういうものなのでしょうか? 一般的に「ビジネスモデル特許」は、「商売の方法などのビジネスプランに関する発明」と広く捉えられています。しかしながら、独占権としての特許権を考えた場合、「コンピュータやネットワーク等の技術資源を用いた ビジネスプランにかかわる発明」と狭く捉えられているのです。
簡単に言うと、ビジネスモデル全体をビジネスモデル特許で守ろうとしても、多くの場合は「法的な権利として独占権を得ることはできず、コンピュータやネットワークなどの技術を用い、その技術の用い方や技術自体が新しい発明にしか独占権は認められない」ということです。
 たとえ今までにない画期的なビジネスプランであっても、単なる商売の方法だけで技術的な内容の含まれないものは、独占権が得られないどころか、『誰もが自由に真似してもよい』というのが原則です。

 

では、特許権で独占できるビジネスモデルってどんなもの?

 基本的には、「ビジネスプラン」+「技術的な特徴」で、技術的な特徴に新しさがあれば、特許権で保護される可能性があります。
  ほんの一例ですが、例えば、「オフィスに設置されるお菓子販売ケース」(利用者は食べた分だけ1個あたり100円を料金回収箱に入れ、菓子ケースから売れた分の代金を回収するシステム)で考えてみましょう。
このビジネスモデルには、特許権が付与されています。「賞味期限や在庫状況を把握して、利用者にいつも違う商品が入っていると思わせる商品入れ替えを、メンテナンス担当者にわかりやすく指示するシステム」。この複数の場所に置かれたお菓子販売ケースを管理するデータ構造に、従来とは違う技術的な特徴を有していると判断されたと思われます。
 

一方で、特許により保護が認められないビジネスモデルって例えば?

 今まで実店舗で行っていたビジネスを、コンピュータやネットで行えるようにした単なるネットショップのようなビジネスプランはどうでしょうか? 答えはもちろんNo。独占権は与えられません。
 また、単なる商売上の取り決めで、技術的な内容を伴っていないビジネスプランにも、独占権は与えられません。例えば、下記のような「処方箋データに基づいて薬剤調合を行う医療システム」には特許権は与えられていません。
このシステムの仕組みは、
(1)    患者の医療検査に基づいて検査結果データを作成
(2)    検査結果データと診察の結果に基づいて処方箋データを作成
(3)    処方箋データに基づいて薬剤調合を行う
という、ひとつひとつの段階を経て薬剤調合を行うシステムです。
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では、どうすれば、特許権で独占できるようになるの?

 前述した医療システムで考えてみましょう。
(1)  患者の検査結果データを、コンピュータのメモリに記憶させる
(2)  診察の結果と検査結果データを結びつけさせる
(3)  さらに薬の情報とリンクさせて処方箋データを作成する
(4)  処方箋データを薬剤調合の担当者に正しい薬の提供ができるように表示させる

といった仕組みのそれぞれのデータの結び付け方に特色があり、技術的な内容と、その技術的な内容に基づくメリットが明らかにできれば、特許権を得られる可能性があります。(下記の図では、各データを患者IDでリンクさせ、処方箋データで、どの薬を処方するか薬の名前を明確にして取り扱っています。)53-3

 とはいえ、特許として認められた「ビジネスモデル特許」であったとしても、基本的には技術的な部分が保護されているにすぎず、ビジネスモデルというビジネス全体の仕組みを守ってくれるものではないということを理解しておくべきです。
 そもそも、特許で権利を守る以前に、ビジネススキーム、そして、それを成り立たせる個々の仕組みが消費者に受け入れられなければ話になりません。まずはそこに注力すべきということ。「木を見て森を見ず」にならぬよう注意してください。

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