農業ビジネス Vol.01 素人から農業で起業する2つのパターン

農業ビジネス
近年、農産物や食品に関する事件事故が相次ぎました。そのような中、消費者の安心・安全志向が急激に高まり、国内農業に大きなビジネスチャンスが生まれています。

現在の農産物市場

 日本総研の実施したアンケート調査では、2005年と2008年を比較して、三分の二の消費者が国産の農産物を購入する頻度が増えたと結果がでました。このような追い風を受け、農業で起業しようという方が増えており、農林水産省の統計によると新規就農者の7 割が30代以下の若い世代となっています。しかし、農業はそんなに甘い産業ではありません。農家の平均的な農業粗収入は約400万円ですが、そこから各種費用を減じると、所得は約125万円に過ぎません。実際には農業以外の収入や年金収入に頼らざるを得ない状況なのです。

 その一方で、先行者の中には、平均的な会社員の数倍の収入を得る成功者も多く、魅力的なフィールドであることは間違いありません。

 

起業パターン1:生産者として起業する

 実際に農業分野で起業するには、大きく分けて2つのパターンがあります。1つ目が、農産物の生産者として起業するもの。まさに田畑を耕し、ビジネスを行うパターンです。私の見解としては、まず既存の農業法人に就職するのが成功の近道と考えます。前述の通り、農業は簡単ではありません。自動車製造やシステム構築と同じく、農業にも分野特有のノウハウが必要です。そこで、働きながら学ぶ場として、農業法人で修行するのが選択肢となります。

 どうしても始めから独立したい場合には、コメのように年1回収穫する作物ではなく、複数回収穫できる野菜を選ぶとよいでしょう。その理由は2点あります。生産回数を増やすことで、不足しているノウハウを早く習得でき、失敗時のリスクも分散可能です。

 

PR:成功のヒントが満載!ホームページ・ネットショップ成功事例集プレゼント

起業パターン2:農業周辺ビジネスで起業する

 そして起業の2つ目のパターンが、農業周辺ビジネスでの起業です。農業ビジネスは農産物の生産に限ったものではありません。最近はマーケティング、商品企画、ブランド化戦略、インターネットによる宣伝など、農業周辺ビジネスの重要度が増しています。ここは従来農家が苦手としていた分野です。商業、工業分野の企業が外部のコンサルタントを雇うように、外部のスペシャリストに対するニーズが存在します。これらの業務には個人の能力やノウハウがあればよく、設備設置やシステム構築といった大きな初期投資が不要なことが利点です。もし筆者自身が起業するとすれば、これまでの経験が活かせるこのような周辺ビジネスを迷わず狙います。しかし、農家経営の実態を踏まえない事業は当然のことながら苦戦します。例えば、ある会社は一般企業に劣らない立派なウェブサイトを構築するというサービスを展開していましたが、業績は芳しくありません。肥料や農薬のような農業資材も「つけ払い」で農協から購入できる農家が、効果がはっきりしない販促アイテムに高額な初期投資を払うわけがないからです。機器以外の投資リスクを避けたがる農家の方々の特性を踏まえると、薄利多売で小規模な農業経営に即した商品や販売形態(成功報酬型の支払い形態等)が大きな可能性を秘めているでしょう。

 では、成功している例はどのようなものでしょうか。美味しい豚肉が評判の株式会社みやじ豚・宮治社長は、生産の素人が農業で成功した典型的な例として挙げられます。宮治社長は、慶応義塾大学を卒業し、大手人材派遣会社へ就職、その後退職して実家の養豚農家を株式会社化した宮治社長ですが、彼は養豚自体には深く関与せず、ブランド化、イベント開催、販売チャネルの開拓等のプロデュース活動に注力しています。売り上げ規模はさほど大きくないものの、一般的な畜産農家よりもはるかに高い利益率となっています。その背景には、料理店や消費者への直販が5割程度を占めていることで、販売単価が高く且つ中間マージンが低いビジネスモデルを構築していることが挙げられます。彼が主催するバーベキューはいつも満員、マスコミでもしばしば取り上げられるなど、起業家として大きな成功を収めているといえるでしょう。彼の場合にはたまたま実家の養豚農家をベースに起業という形態したが、もし実家以外の農家に対してマーケティングサービスを提供するという会社を作っていたとしても同じように成功したでしょう。

 

 

自分の得意分野で農業に参入しよう。

 国内外の農産物が溢れるこの時代、生産ノウハウだけでは、儲かるビジネスを構築することは困難です。良いものを作れば自然と儲かる、というのは幻想です。マーケティングや契約スキーム構築等のビジネススキルが不可欠なのです。生産に偏重しない経営感覚という面では、かえって生産の素人の方が広い視点を持てるというメリットもあると考えます。生産ノウハウがないことで起業をあきらめるのではなく、自らの強みに立脚したビジネスモデルを構築することが成功への道筋です。

 生産を行うのか、周辺ビジネスに入るのか。自らのノウハウや経験を踏まえた起業のビジョンを持つことが重要となります。