【2020年専門家監修】資金繰りの重要性。黒字でも倒産する?

この記事は2020/01/31に専門家 李 顕史 佐々木 美佳 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

資金とは、一般的には元手となる費用のことをいいます。会社においては、日常の経営活動や設備投資に充てる目的で会社が保有する、貨幣または容易に貨幣にかえられる金融資産を指します。具体的には現金・普通預金・当座預金・郵便貯金・定期預金などです。

資金繰りが悪化するというのは、支払期日までに資金調達ができず、相手への支払いができなくなる状態、いわゆる「資金がショートした状態」になることです。こうなると会社は危機的です。信用もなくなりますし、支払いの催促に対応するだけでも大変な苦労になるでしょう。
このような状態が続くと最終的には会社が倒産します。

「勘定あって、銭足らず!?」という言葉があります。つまり、帳簿上は黒字なのに、「資金がショートした状態」になってる場合がある、ということです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

なぜ黒字倒産が起きるのか?

原則として、会社の収益や費用は現金の出入りに関係なく、会計上の事実の発生によって認識します。これを発生主義といいます。これに対し、現金の出入りで収益や費用を認識する場合は現金主義といいます。

発生主義による場合、現金の出入りがなくても収益や費用を認識する場合があるため、収益から費用を引いた「利益」が、実際に手元にある「資金」と一致しないことがあります。そこで、黒字だが「資金がショートした状態」が生じるのです。

たとえば、商品を現金200万円で仕入れて300万円で売ったとします。売却先には商品を先に渡し、現金は後で月末に回収する約束があったとしましょう。この場合、仕入れた時点の200万円を費用として認識し、商品を渡した時点(会計上の事実の発生時)に売上300万円を収益として認識します。

すると商品を渡した時点で利益は100万円ですが、手元にある資金は0円(仕入れ分△200万円の状態)となります。

この事例で、「利益」と「資金」の動きについてみてみましょう。

①現金で商品を仕入れた時点:「利益」△200万円・「資金」△200万円
②商品を渡した時点    :「利益」 100万円・「資金」△200万円
③現金を回収した時点   :「利益」 100万円・「資金」 100万円

となります。

②の状態では、利益は出ているのに資金がない。まさに「利益(儲け)あって、資金(お金)足らず」です。このような状態が積み重なると、現金の調達が間に合わず、倒産に追い込まれる事態にもなります。これが黒字倒産の起こる仕組みです。

こうならないように、資金繰り表というものが重要になります。

資金繰り表とは?

資金繰り表とは、現金の出入りや、取引内容を記録したものです。将来発生する入金や出金等も入れることで、どの時点でどれだけの現金が必要になるのか、あるいは足りなくなるのかを予測できます。足りなくなると予測されれば、支払いで後回しに出来るものを先送りにしたり、一時的に銀行から借入を行うなどして現金が不足しないように調整します。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い

資金の動きについて把握するという意味では、資金繰り表はキャッシュフロー計算書と同じ意味を有します。ただし、両者には次の面で大きな違いがあります。

キャッシュフロー計算書の目的が『「過去」の資金の流れを理解して資金の増減の原因を把握すること』であるのに対し、資金繰り表の目的は『「将来」の資金が不足しないかを検証・予測すること』にある、という違いです。

専門家からのヒトコト
キャッシュフロー計算書で「過去」の資金の流れを把握しつつ、資金繰り表で「将来」の資金の検証・予測を行うと、より正確な分析が可能となります。
ドリームゲートアドバイザー 李 顕史

資金繰り表については、くわしくはこちらの記事に具体的な表の例がありますのでご参考にしてください。
https://www.dreamgate.gr.jp/contents/manual/m-legal/36800

この記事の監修者
李 顕史(り けんじ)
税理士/公認会計士/FP(ファイナンシャルプランナー)
李総合会計事務所 代表
「金融に強い税理士」として年間延べ500回の経営アドバイスを提供している。大企業の監査経験を基にした知識の豊富さと、実行支援まで行う実行力の高さで相談者からの信頼も厚い。また、大手ネットメディアなどで豊富な執筆経験を持つ。一橋大学非常勤講師
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佐々木 美佳(ささき みか)
税理士/FP(ファイナンシャルプランナー)
佐々木税理士事務所 代表
東京商工会議所ビジネスサポートデスク 派遣専門家税理士。税理士業界に30年以上携わった経験により関わった企業は1,000社以上。
一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクール認定講師も務め、強みを活かしたビジネスモデル策定に関わった経験が豊富。
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