DGトップ ファーストナビ 猫でもわかる資本政策 コラム Vol.5 設立後1年未満でも上場のチャンス !? 2009年4月に誕生する株式市場
Vol.5 設立後1年未満でも上場のチャンス !? 2009年4月に誕生する株式市場
猫でもわかる資本政策    ■ナビゲーター: 室賀 文治   
 東京証券取引所とロンドン証券取引所は、2009年4月にもロンドンAIM市場を参考にしたあたらしい新興企業向けの株式市場「TOKYO AIM」(トウキョウエイム)を開設する予定です。日本ではなじみの薄いAIM市場ですが、その本質を理解したうえで、今後のベンチャー企業における新しい資金調達の手法を考えて見ましょう。

AIMの特徴

 AIM(Alternative Investment Market)市場は、1995年6月にロンドンで開設された欧州初の新興企業向けの株式市場です。
 最大の特徴は、『過去の実績よりも、新興企業に期待される将来性に基準を置くマーケット』です。当時はその大胆な緩和策に対し、「露天のサンドイッチ屋も公開できる。」と揶揄されたものですが、現在までに3000社近くが上場し、上場社数では米国ナスダックを凌駕して世界最大規模の市場となっています。
 もうひとつの特徴は、『国際性』です。2006年度のデータですが、AIMに上場した企業462社のうち26%の124社はイギリス国外の企業です。海外の企業が本国の市場に上場するよりも、短期間の審査で、大きな資金調達を可能としているのです。この背景には、ロンドンが世界中の投資家を呼び込む努力を継続していることが大きな原因となっています。現在も世界の資産家がロンドンに集中しており、「City(ロンドン金融街)に居れば、世界中の魅力ある企業に投資が出来る。」という仕組みを作っているのです。

AIMの上場基準とは

 AIMの公開基準について、もうすこし詳しく触れておきます。
 一般的に株式上場をする際には、市場毎に定められた形式基準といわれるハードルをクリアすることが条件となります。たとえば東証マザーズの形式基準を見ると、「過去1年以上の事業継続年数」、「監査報告書への適正意見」といった文言が並んでいます。一見して、容易なイメージがありますが、実際に監査法人が監査をおこなったうえで監査報告書へ適正意見を表明するのには、2年程度の期間を要します。この結果、マザーズに上場する為には、上場の数年前から本格的な準備をしなければなりません。特に最近では、黒字経営以外に、内部管理体制の充実などを満たさない限り、監査意見を受けにくくなっています。

 しかしAIMにはこのような過去の実績を問うような基準は一切ありません。既に経営が安定している企業ではなく、これから大きく成長する企業を対象とした市場ですから、求められるものは『事業計画の確度と成長性がどれだけ高いかどうか』です。極端な例ですが、AIMには魅力的な事業計画を根拠として設立後半年程で上場する企業も数多くあります。5-1

 実際に上場するには「Nomad」(Nominated Adviser:ノマド)という主幹事証券会社のような機関が審査をおこないます。Nomadはその企業が実績を有していなくとも、事業計画の実現性について本格的な調査を行い、その事業の成功確度が高いと判断した場合は、AIMへの上場を承認します。Nomadが上場を承認してくれれば、2週間程度で取引所に上場され取引が開始されます。

 ちなみにAIMに上場した企業は、上場後もNomadから上場継続を承認してもらう必要があります。従来の日本の株式市場では、新規上場も上場継続も取引所が承認していたのに対し、AIMはすべてをNomadに任せている点もおおきな特徴です。

 具体的な例をあげてみましょう。「JAPAN LEISURE HOTELS」(シンボル:JPLH.L)は米国人によって2007年にガーンジー島(欧州の)で設立された企業ですが、わずか1年後の2008年1月にはAIMに上場しています。この企業は日本のレジャーホテルを運営する目的で設立され、AIM上場時に調達した6.5億円で、はじめて日本のホテルを購入しています。
 実は日本のレジャーホテルは高い収益を生むビジネスとして海外からも注目されているのです。この会社はレジャーホテルビジネスに興味を持ち、マーケット調査のうえで、既存のホテルグループの買収を計画しました。後は買収資金さえ手に入れば、直ちに収益をあげることが出来るという計画書を作って上場したのです。過去の運営実績に乏しい企業が短期間で上場を果たしたケースはAIMにたくさんあります。そのほかにも、地下資源を調査して上場で得た資金で発掘をおこなうような企業も上場を果たしています。

 実績は無くとも魅力的なビジネスを考える経営者と、将来性のあるビジネスに資金提供を考える投資家をつなぐことが新興市場の使命だとすれば、まさにAIMはお手本となる市場だといえます。

TOKYO AIMの狙い

 TOKYO AIMの発表以来、「低迷する日本の新興市場の二の舞」を危惧する声が強いようです。しかし、この市場の真の狙いは「アジア圏における中央市場を日本に。」という趣旨があると思われます。
 少子高齢化と、底の見えない不景気に怯える国内市場ですが、中国やインドを中心としたアジア圏経済の成長は今後も拡大すると思われます。この経済成長を日本に取り込む為にも、ロンドンのように市場を海外の魅力ある企業に開放し、世界中の資産家の資金を東京に集めることが必要なのでしょう。5-2

 TOKYO AIMのガイドラインによれば、本国AIMと同様にNomadが全てを仕切ることで同一なのですが、市場参加者をプロ投資家に限定し、個人投資家の参加を制限しています。これは、倒産リスクの高い企業が上場することになるという理由と、情報開示ルールが大きく緩和されることによるものです。
 TOKYO AIMに上場した企業は、日本の他の市場とは異なり、四半期開示や日本語での情報提供の義務がありません。この結果、おもに外国語の情報開示が基本となり、日本の個人投資家に対して十分な説明がなされない恐れがあります。

(プロ投資化に限定された事は個人的にはがっかりです。ロンドンAIM市場にはこのような制限がなく、個人投資家も世界中の企業に投資ができます。日本の金融文化を高める最良のチャンスになると期待していたのに残念です。)

ベンチャー企業にとっての「TOKYO AIM」活用術

 TOKYO AIMの上場第一号は、5月頃になる模様です。現在のところどんな企業が上場するのかまったくわかりませんが、おそらく環境技術系の企業や投資をおこなうファンドなどが候補になると推測しております。
 世界中が技術開発にしのぎを削っている太陽光発電技術等の環境ベンチャーや、一気に安価になった日本の不動産や株式を対象とした投資事業などは、実績よりも事業(技術、投資先)の内容と収益性が評価されるビジネスだからです。

 もしかしたら、東京電力に対抗するベンチャー企業として、「太陽電池パネルを広大な砂漠に設置する電力会社」のようなエコロジーベンチャーが一気に上場して資金を集めるかもしれません。
 世界に通用するような技術や、将来性にすぐれたビジネスを考えているのならば、手元資金がなくても上場できる可能性があります。一度TOKYO AIMの門を叩いてみてはいかがでしょうか。


last modified 2009-05-07 19:41
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